異年齢のグループで学び合い、子ども自身が対話しながら探究を進めていく。そんな学校が2025年4月8日、新潟市西蒲区に誕生する。「光の森学園」と名づけられた学校は、従来の公立でも私立でもない“市民がつくるオルタナティブスクール”でもある。
設立者の3人に学校設立を決意した思いを聞いた。
「新潟にもこんな学校が必要」
ひろきさん(小林弘樹さん)、さとっち(寺嶋聡美さん)、ちーちゃん(赤川千穂さん)。
一般社団法人光の森学園の理事を務める設立者の3人は、お互いにニックネームで呼び合う。学校では、グループリーダーと呼ばれる先生の役割を果たす。
「さとっちから『夢見る小学校』などオルタナティブ教育を描いた映画を教えてもらったのですが、その中で先生が教科を一方的に教えるのではなく、子どもたちが主体的に学んでいる姿に衝撃を受けました。公立だけで不登校の子どもたちに対応するのは難しいと感じていたところだったので、新潟にもこんな学校が必要だと強く感じました」

ひろきさんは学校設立に向けて、心を動かされたときのことをこう話した。新潟市議でもあり、不登校の増加に課題意識を感じていた。さとっちは、子どもとの対話活動に力を入れており、不登校になった子どもの母親でもある。
「子どもたちの中には、偏差値が自分の存在価値になってしまって悩んでいる子もいました。どの子も素晴らしい個性や可能性を持っているのに、自分に自信が持てない。どうすれば子どもたちが自分に自信が持てるようになるか考えていました」と話す。
もう一人の理事、ちーちゃんは専門学校での勤務経験がある。
「子どもたちのワクワクの原動力は何だろうといつも考えていました。好きなことを見つけるとキラッと目の奥が輝く。好きなことを遠慮なく出せる場所を作ることが、大人の役割だと思いました」
古民家を中心とした校舎
3人は県外の学校見学やお互いの気持ちを語り合っていくうちに、新潟で初めてのオルタナティブスクール設立に向けて気持ちが固まっていった。

ひろきさんは新潟市内の田園地帯に山小屋を2棟持っており、そこを拠点に学びを進めていきたいと構想。2024年5月には山小屋の近くに校舎に使えそうな古民家を見つけた。古民家を急いで取得後、500万円の校舎改装費用をクラウドファウンディングで募った。目標額には届かなかったものの、256人の協力を得ることができた。
「私たちが『学校を作る』という腹を決めたら、思いがけず協力してくれる人や提案が舞い込んでくるようになりました。金融機関の旧支店の建物を譲渡してもらい、そこは『みんなのランチルーム』『みんなの図書館』などとして地域や観光客の方々にもオープンな場所として整備することになりました」とひろきさん。校舎の前の畑も使えることになった。
これで、古民家を中心校舎として周囲のフィールド全域が学びの場になるという舞台が整った。近くには、田んぼや山や海があり、本物の自然から学ぶ探究の時間も豊富に予定されている。

探究や対話を大切にした学び
教育のベースとなるコンセプトは、異年齢のグループで対話しながら主体的に探究や個別学習に取り組むイエナプラン教育を選んだ。朝はサークル対話という対話の時間でスタート。1週間の学習計画を子どもがグループリーダーと話し合いながら作成する。ただ受け身に過ごすのではなく、子どもが主体的に学んでいけるように設計されている。
初年度の定員は、小学校にあたる初等部と中学校にあたる中等部で合計15人。グループリーダーは周囲から6人のなり手を探すことができ、先生を集めるための苦労はなかった。
「校舎の近くには養蜂家やカモの漁師がいるのですが、そうした達人たちと探究で共に学んでいくことも楽しみにしています。昨年12月のキャンプ会では近くの田んぼからマガモを獲ってきてもらいました。その後、解体まで目の前で行って、カモ鍋を作っていただきました。本物に触れることから子どもたちにたくさんの問いが生まれているようでしたが、こうした問いから学びを立ち上げていけたらなと思います」と、学びの中心となる探究について、ひろきさんが説明した。
異年齢教育の考え方「違っていて当たり前」
子どもたちは異年齢のグループで学んでいく。狙いは「一人ひとり違っているのが当たり前。その違いが学びの豊かさを生む」ことを、学年の枠を取り払うことで伝えるためだ。
3人は学校設立前に、異年齢でのキャンプなどイベントを開催したが、そこでは自然と学び合いや助け合いの関係性が生まれていたという。

「山小屋の近くにある滝に遊びに行ったときのことですが、サワガニとりが得意な子が滝の岩陰にいるサワガニを捕って、他の子にも教えてあげたりする姿が見られました。他にも滝までの道なき道を行く中で、助け合ってイキイキしている姿が印象的で、異年齢だからこそ生まれる力だと感じました。これから異年齢の持つ力がどのようにグループで発揮されていくか楽しみです」
さとっちは異年齢の魅力を笑顔で話した。最後に、ちーちゃんが学校設立に向けた思いをまとめた。
「今の世の中は不安が優先されています。将来の不安から、今の選択肢を狭めてしまうことがあります。でも、安心がベースにある環境ができたら将来への期待も大きくなっていきます。大人も子どももワクワクして、そのワクワクが広がり、それが未来を形作る輪となる。そんな学園になればと思います」
4月8日、新入生が新しい学校の扉を叩く。