文化も習慣も異なる国での生活。期待とともに、少しの不安を抱えて来日する人も少なくありません。
今回は、数年前にアメリカから日本へやってきたエミリーさん(仮名・20代・会社員)に、日本で驚き、感動した体験について伺いました。彼女が特に印象に残っているのは、日本の「駅」での出来事だったそうです。
想像を超えた「駅の秩序」と「静けさ」
エミリーさんが日本に来て最初に驚いたのは、東京の駅で目にした光景でした。
「初めて東京の駅に降り立った時、改札からホームへの人の流れが、まるで計算されたかのようにスムーズで。巨大な機械が正確に動いているような、そんな印象を受けました」
特に衝撃を受けたのは、電車を待つ人々の様子。
「他の乗客の方々と一緒に、私も自然と列に並んでいたんですが、ふと周りを見渡すと、誰もが当たり前のように順番を守って、静かに待っているんです。母国ではあまり見られない光景だったので、『日本ではこれが普通なんだ!』と、その秩序正しさに、ただただ驚きました」
さらに、ホームに入ってきた電車の静かさや、乗客がスマートフォンを見ながら静かに過ごす車内の雰囲気も、エミリーさんにとっては新鮮な驚きだったと言います。
「この静けさと秩序は、まさに異文化体験でした。最初は少し窮屈に感じるかなとも思ったのですが、すぐに、これが周りの人への配慮から生まれるものだと気づきました」
「効率」だけじゃない、根底にある「思いやり」に気づく
この駅での体験は、エミリーさんの日本に対するイメージを大きく変えるきっかけとなりました。
「来日前は、日本に対して『先進的で効率的な国』というイメージを持っていました。もちろんそれは間違いではなかったのですが、駅での光景を通して、単なる効率性だけではない、『他人を思いやる心』や『社会全体の調和を大切にする文化』が深く根付いていることを実感したんです」
道に迷って不安な時に差し伸べられた、温かい手
そんなエミリーさんが、日本の「人の温かさ」を強く感じたエピソードがあります。
「ある日、駅で完全に道に迷ってしまって…。地図を見ても現在地すらよく分からず、本当に困っていました。日本語もまだ得意ではなかったので、どうしようかと焦っていたんです」
その時、偶然通りかかった駅員さんが、困っているエミリーさんの様子に気づき、声をかけてくれたそうです。
「私が外国人だと分かると、ゆっくりとした優しい英語で『どうしましたか?』と尋ねてくれて。事情を話すと、なんと目的地の方向まで一緒に歩いて案内してくれたんです!彼の親切が本当に心に沁みて、『ああ、日本に来てよかったな』とその時強く感じました」
日本の魅力は「秩序」と「人の親切心」
一連の体験を通じて、エミリーさんは日本の魅力について次のように語ります。
「他の外国人の方にもぜひ伝えたいのは、日本の『社会の秩序』と、そこに生きる人々の『親切心』です。困っている人がいたら、ごく自然に助けの手が差し伸べられる。それは、周りの人を大切にする文化が根付いているからだと思います。最初はクールに見えるかもしれませんが、その根底には温かい思いやりがある。それが日本の素晴らしいところだと感じています」
エミリーさんの体験談は、私たち日本人にとっても、日常の中にある「当たり前」の価値を再認識させてくれるかもしれません。