車いす生活をする女性。ある日、のどに違和感が…その後の闘病生活について迫る 

車いす生活をする女性。ある日、のどに違和感が…その後の闘病生活について迫る 
【漫画】コロナで緊急入院②(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

生まれつき難病である「先天性ミオパチー」を患い、車いすでの生活をしている車イスにゃにゃさん。幼いころから絵を描くことが好きで、現在車いすイラストレーターとして活動し、SNSでは実話をもとにした漫画を発信しています。

そんな車イスにゃにゃさんは、実家を離れて福祉ホームに引っ越してすぐにコロナウイルスにかかりました。難病を抱えながらも、その闘病の様子を赤裸々に発信している理由について話を聞きました。

進行性の難病を抱える車いすでの生活

先天性ミオパチーとは、緩やかではありますが徐々に筋力が低下していく進行性の難病です。

車イスにゃにゃさんは、小学校高学年のころから車いすでの生活をしており、現在は電動車いすを使用しています。自力で立ち上がったり、着替えたり、トイレやお風呂に入ったりすることも一人では難しいため、日常のさまざまなことはヘルパーさんや周りの方々にサポートしてもらいながら生活しているといいます。

車イスにゃにゃさんが入居している福祉ホームは、自立生活を目指す障がいのある方たちが暮らす施設で、自身も将来地域で一人暮らしすることを目標に入居しています。施設は入居者ごとに居室が設けられており、外部からヘルパーさんに居室に来てもらって日常生活のサポートを受けながら、一人暮らしに必要な知識や経験を積んでいると話していました。

コロナウイルスで入院

実家を離れてある街の福祉ホームに引っ越し、慣れない生活を始めて1ヶ月が経とうとしていた頃のこと。車イスにゃにゃさんはのどに違和感があることに気づき、さらに熱っぽさを感じます。

【漫画】コロナで緊急入院③(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

そこで病院でコロナウイルスの検査をしてもらいますが、抗原検査の結果は陰性でした。しかし、その夜から咳が出始め、2回目の検査をしたところ陽性となったのです。

「検査キットの陽性を示す赤色の二本線を見た瞬間、ショックで涙が止まりませんでした」と車イスにゃにゃさん。
ヘルパーさんや周りの人にうつしていないだろうかという心配や、住み慣れていない土地でコロナウイルスになって、この先自分がどうなってしまうのかという不安でいっぱいになったと語ります。

陽性ということがわかり、ホームでは職員さんが居室に透明のビニールシートやサーキュレーターを設置し、ヘルパーさんが防護服やフェイスシールドを着用して介護してくださることに。車イスにゃにゃさんは、体温計やパルスオキシメーターで状態をこまめに確認しながら、病院で処方された治療薬を服用して安静に過ごしていました。

【漫画】コロナで緊急入院⑨(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

しかし、車イスにゃにゃさんは咳や頭痛もひどくなり、酸素濃度は酸素吸入が必要と言われる93%まで下がりました。
また、先天性ミオパチーであるため肺機能が弱く、車イスにゃにゃさんの場合はもともと肺年齢が90代。そのため、咳によって呼吸も苦しくなっていきました。
当時は夏でしたが、暑いのか寒いのかもわからず、意識ももうろうとしていて、自分で電動車いすを操作することも難しい状態になったと話します。

【漫画】コロナで緊急入院⑬(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

さらに、医師から「自発呼吸ができなくなったら、気管挿管が必要になるかもしれない」と言われます。それによって、喉に入れた管が一生抜けなくなるかもしれない、声が出せなくなるかもしれないということを車イスにゃにゃさんは知りました。

「この先の人生はどうなるのだろう…?」という、生きることへの恐怖を感じたといいます。

【漫画】コロナで緊急入院⑰(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

また、大切な人の顔が浮かび「管の入った私の姿を見たら悲しませちゃうのでは…?」と心配になります。咳が止まらず呼吸が苦しい中、一人残された診察室で、声を出してわんわん泣きました。

【漫画】コロナで緊急入院⑲(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

その後、車イスにゃにゃさんは個室で入院することになりました。そのときに支えとなったのは、人手不足で大変な中、看護師さんや先生が優しく対応してくださったこと。そして隔離病棟で面会ができなくても、車イスにゃにゃさんのパートナーが仕事終わりに好物のポテトを差し入れするために走って持ってきてくれたのです。

「そのパートナーの優しさに救われました」と車イスにゃにゃさんは語ってくれました。

そして入院から11日後、車イスにゃにゃさんは退院し、一週間実家で療養して元気になりました。

「できないこと」よりも「できること」に目を向けていたい

幼いころから絵を描くことが好きだった車イスにゃにゃさんですが、病気の進行と共にできないことが少しずつ増えていきました。そこで「できないこと」よりも「できること」に目を向けていたい、クヨクヨするよりワクワクしていたいという思いを持つようになります。

これから何ができるだろうと考えたときに、絵を描くという自分の好きなことでたくさんの人に笑顔になってもらいたいと思ったことが、漫画を描き始めるきっかけとなりました。

【漫画】コロナで緊急入院⑪(@kurumaisu_nyanyaさんより提供)

車イスにゃにゃさんは、こうした体験を漫画にしてSNSで発信しています。今後は「一人暮らしに向けて奮闘中のエピソードを楽しくお届けできたらと思っています」と。

「車いすの生活を送る私は、不便なことが人より多いかもしれませんが、不幸だと思ったことはありません。そう思えるのはきっとたくさんの出会いに恵まれているからです。素敵な出会いや実体験をこれからも漫画で発信して、多くの人に思いっきり笑ってもらったり、ほっこりしてもらったりできたら嬉しいです」

投稿には「車イスにゃにゃさんの漫画によって、少しでも感染予防に努める方が増え、公衆衛生への理解を深めるいいきっかけになると思う」「いろいろな感情を漫画にできるのが素晴らしい」「こんな辛い実体験を面白マンガにできるの天才すぎます」など、たくさんのコメントが寄せられていました。

介護士さん、看護師さん、実際に気管切開をされた方、また、コロナウイルスに罹患した方などさまざまな人からのコメントがあり、車イスにゃにゃさんがたくさんの人から愛されていることがわかります。それは車イスにゃにゃさんが、人との出会いを大切にし、常に周りの人の優しさや元気に過ごせる日常に感謝をしているからなのでしょう。

これからも、クスッと笑うだけでなく、思わず声を上げて大笑いしてしまうような、車イスにゃにゃさんの素敵な漫画の発信を心から楽しみにしています。

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