プラダー・ウィリー症候群という難病を知っていますか?妊婦健診では何の問題もなく無事に息子さんを出産したMEIさん。しかし、息子さんは筋緊張低下により、ぐたーっとした状態で生まれてきました。産声はあげたものの、そこからは大きな声で泣きませんでした。
プラダー・ウィリー症候群の赤ちゃんは、筋肉の張りが低下する筋緊張低下のため哺乳も弱く、数ヶ月の間経管栄養が必要になることが多いといいます。しかし2~3歳ごろになると食欲が増し、過食が止まらないなどの症状が見られるという、1万5000人に1人の確率の病気なのです。
そこで母親のMEIさんに、息子さんの病気を知ったときの気持ちやSNSで発信する理由などを聞きました。
1万5000人に1人の確率
MEIさんは2021年に娘さんを出産しており、今回の出産は2度目でした。妊娠中のことを振り返ると、娘さんのときよりも胎動は少なかった気がする…といいます。しかし、気になるほどではなく「おっとりな赤ちゃんなのかなぁ」という程度。動かないわけではなく、健診でも何の問題もないといわれていたため、そこまで気にしていなかったといいます。
「息子の体重も順調に増えていましたし、元気に生まれてくるものだと思っていました」とMEIさん。
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MEIさんは無事に出産を終えたものの、産後すぐに息子さんは別の病院に運ばれます。そのとき「なんでうちの子は病気なんだ…」と思うことはなかったですが、一緒にいられないことの寂しさと悔しさで涙が出たと話します。
「出産した病院では、当たり前に赤ちゃんの泣き声がして、他のママさんはおっぱいをあげたり赤ちゃんと同じ部屋で過ごしたりしているので…。そのときが唯一しんどかったです」
別の病院に運ばれる前に息子さんには、筋緊張低下、呼吸障害、停留精巣などの症状があると言われていました。そこで、入院中にMEIさんはSNSなどで調べてみることに。
「プラダー・ウィリー症候群なのでは?」と思ったのは、出産してから2日後、検査結果が出たのは出産1ヶ月後でした。
病名を聞いたMEIさんは「『死んでしまう病気ではないか』というのをすぐに調べました。そうではないと分かって安心しました」と語ってくれました。
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プラダー・ウィリー症候群という病気は、年齢と共に出てくる症状も違うといいます。
筋緊張低下、色素低下、外性器低形成がよくある特徴で、筋力が弱いため首座り、歩行、すべての成長がゆっくりです。また、哺乳力が弱いため哺乳瓶でミルクを飲むことが、他の赤ちゃんのようにはうまくいかないのです。
MEIさんの息子さんは、全量の100ml飲めるときもありますが、10ml、20mlほどしか飲めないときもあるといいます。そこで、飲めなかった分は経管栄養で流すようにしています。
1日のほとんどは眠っていて、お腹が空いたから泣くということもないといいます。生後3ヶ月になって「少しずつ小さな声で泣けるようになってきたかなぁという程度です」とMEIさん。
泣いて訴えることがないため、MEIさんは息子さんの体温をはかったり、体調に変わりはないのか顔色などを見たりと1日中気にしているといいます。
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また、毎週訪問してくれる看護師さんには経管栄養の管交換のお手伝いや、体を動かすリハビリをしてもらいます。MEIさん自身は、経管栄養の物品をもらいにいくため1ヶ月に1度、息子さんが入院していた病院にも行っています。
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息子さんは、もう少し大きくなったらホルモン注射が始まるため、プラダー・ウィリー症候群の専門の先生のところで毎月診察し、体重増加の仕方を見てもらっています。12月からは、体のリハビリと飲むリハビリが始まることもMEIさんは話してくれました。
プラダーウィリー症候群をたくさんの人に知ってほしい
MEIさんは、息子さんがプラダーウィリー症候群なのではないかと思ったときに、情報を得ようとSNSでもたくさん調べました。そこで、情報はすごく少なかったものの、同じ病気のお子さんの投稿に出会い、元気に大きくなっている姿を見ることができました。
そうした投稿から「弱々しくカエル足でだらーんとしていた息子も、こうして大きくなれるんだとすごく希望をもてた」といいます。
MEIさん自身も初めて聞いたという、プラダーウィリー症候群。
「すごく珍しい病気だったので、たくさんの方に知っていただきたい。息子の生きやすい世界を作ってあげたい。堂々と生きられる世界というか…。障がいはありますが、私たち家族にとってはかわいい息子に変わりありません」
こうした思いから、SNSで発信していくことにしました。
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投稿に対して「皆さん『ほんとに可愛いね〜』『天使だね〜』と息子に優しい言葉をたくさんかけてくださいます。ありのままの息子を可愛がっていただけて嬉しいです」とMEIさん。
その中で、同じプラダーウィリー症候群のお子さんを育てているたくさんの方がフォローしてくださったと話します。
「DMでお話しさせていただくこともあるのですが、この哺乳瓶がいいよ、こういう治療があるよなどいろいろ教えてくださるので世界が広がりました」
息子さんのことをSNSで発信していく前から、ご家族や周りの方とは「大切に大切にみんなで守っていこうね」と話していたそうです。
「SNSを見てくださっている皆さんにも支えてもらいながら、ゆっくりゆっくり成長する息子を一緒に見守っていただいています」とMEIさん。そのため、周りの子と比べることなく穏やかな気持ちで過ごせていると話していました。
家族みんなで乗り越えていく
MEIさんは旦那さんと娘さん、息子さんの4人家族です。
娘さんには、息子さんが病気でなかなか大きくならないことなどを話したといいますが「ずっとずっと赤ちゃんでいいよ」と言ってくれて、大好きな弟のお世話を毎日してくれるといいます。
旦那さんは毎日仕事帰りに病院に面会に通っていたため、家で一緒に過ごせることがすごく嬉しいようで、経管栄養の準備なども率先してやるそうです。
息子さんには「もう本当に家族みんなで愛情をたくさんたくさんあげています」と。
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MEIさんは今後息子さんを育てていくにあたり、満腹中枢が弱いため、大きくなったときに満腹感が分からず過食が出てきてしまうこと、過食によって糖尿病などの病気が心配だといいます。
それらに対しては「ホルモン注射もしながらですが、食事についてはしっかり気にしていきたいなと思います」と話していました。
プラダーウィリー症候群と言われてまだ3ヶ月。MEIさん自身も勉強中で分からないことばかりだといいますが、専門医の先生からは「情報も少ないから不安にもなるだろうけど、ネットの情報を見て鵜呑みにしたり必要以上に心配しなくていい」と言われたとも。
MEIさんは「息子にとっていい環境を作っていきたいです。家族が協力して食事も気をつけて、健康に成長していけることを願っています。障がいはありますが、たくさんの景色を一緒に見て、いろいろな経験をさせてあげて。何より穏やかな環境で息子を育てていけることが一番だと思っています」と今後についても話してくれました。
また「発達の遅れや知的障害なども出てくると言われており、成長と共に不安もありますが家族で乗り越えていきます」とMEIさん。
投稿からも家族みんなで息子さんに愛情を注いでいる様子が伝わってきます。
プラダーウィリー症候群という難病を知らなかった方も多いと思います。今後、こうした病気について理解をし、生きやすい世の中にしていく必要性を感じました。