「人生が物足りない」からはじまった挑戦 「母・会社員・副業」を両立することで得られたものとは 

「人生が物足りない」からはじまった挑戦 「母・会社員・副業」を両立することで得られたものとは 
お子さんたちと自然(写真提供:あいさん)

今回お話を伺ったのは、2人のお子さんの母で会社員として働きながらも、副業でライター・広報をされているあいさんです。

子育てや本業で忙しい中、あいさん自身も最初は副業をすることに「とんでもない!」と思ったといいます。しかし、なぜ本業+副業の“複業”をする考えにいたり、挑戦することになったのでしょうか。

そして、日々の生活の中でどのように旦那さんと協力し合っているのか、リアルな生活の様子も伺いました。

きっかけは「なんか悔しい。自分で生きていけるスキルがほしい」

母として子育てに奮闘しながら、本業の仕事もこなしていた一方、あるとき「自分の力で仕事をしている」という感覚を得られないことに「これでは人生が物足りない」と感じはじめました。

きっかけは、勤めている会社の社長が、あいさんと同い年だったことです。
「同じように大学を卒業し同じ年月を過ごして、社長は自分の会社を起こすぐらいのキャリアがあるのに、自分にはなにもない」と悔しさを感じたのです。そこで、何かあったときに自分で生きていけるスキルを身につけたいと、副業への挑戦を考えはじめました。

しかし、子育て・会社員・副業という三足のわらじを履くことに、最初は大きな不安がありました。不安の一番の要因は時間を作れるのかどうか。

まずは忙しい中で、自分で仕事を積極的に取りにいけるかということ。また、あいさんの下のお子さんの体があまり強くないことから、子どもの体調で急な予定変更が必要になることも心配でした。それに加えて、あいさん自身がやりたいと思ったことに対し全力で取り組みたいと感じるタイプだったため、その調整がうまくできるかも気がかりでした。

そこで、自分で「メリハリをつけて取り組む。欲張らない。がんばりすぎないことをがんばる」というルールを設けることにしました。現在も基本的に自分から営業はせず、繋がりやタイミングでお仕事を受注しています。

複業に挑戦するにあたり旦那さんに相談したところ、反対はなく「いいじゃん」と背中を押してくれたそうです。それは、あいさんが以前からライター・広報業に興味があったことを知っていたこと、また旦那さんもフリーランスとして好きなことを仕事にして働いているからでした。

夫婦で「チーム」として、互いを理解し合いながら支えあう

複業中で、子育てをしているあいさんの一日のスケジュールをご紹介します。

【一日のタイムスケジュール】
4時:起床
4時から5時半~6時:副業
6時:ご飯の準備などの家事
8時過ぎ:子どもたちの送迎
8時半:本業(リモート)
16時:終業(時短勤務中のため、残業することもある)
16時~17時:自分時間(読書など)
17時:送迎、家事
21時:子どもたちとともに就寝

基本はこのスタイルですが、納期が迫っているときは、お子さんを寝かしたあと0時まで仕事をして朝は6時に起床するなどして、調整しています。この生活にあいさんは「常にうまくいくか、いかないかというギリギリを走っている感覚」だといいます。

旦那さんとの家事・育児のバランスについて、夫婦の間では「分担」という概念があまりないそうです。それは、あいさん一家だけで地方に移住したことが大きな理由でした。この「地方」とは旦那さんの祖父母の故郷で、結婚する前から地方移住が条件として伝えられていました。

自然豊かな土地へ移住しました(写真提供:あいさん)

まったく知らない土地に来て、2人とも頼れる人が誰もいない状態。そのため「それぞれが、できることはできるときに。やるしかない!」というチームの意識が夫婦間にできたといいます。

しかしながら、あいさんが複業体制になってから少しずつモヤモヤが溜まっていきました。

「私がリモートで働いているからだけど、私の方が子どもを見ている時間が長くない?」「仕事だから仕方ないけど、帰宅時間も遅いよな…」「子どもの朝の送迎はいつも私。子どもがぐずって行けないとき、会社の朝礼に出られないこともあった。あっちはフリーランスだから、時間に融通をきかしてくれないかな?」と思うようになります。

そこで、モヤモヤが溜まりはじめた段階で自分の気持ちを感情的にならないように意識し、冷静に打ち明けたそうです。

あいさんがお願いしたかったのは「たまにでもいいので朝の送迎をしてほしい」という内容で、旦那さんからの返事は「クライアントの関係で、それは厳しい」というものでした。しかし、そのあと「その代わり週1回は早く帰ってくるから、その日はどこかで仕事してきなよ」と、思っていた以上の代替案を提示してくれたのです。あいさんは驚きとともに勇気を出して話してよかったと感じました。

それからも、思ったことは小出しに伝えているといいます。
「夫は『また言っている』とか『姑みたいだ』と感じているかもしれない」と、あいさんは笑いながら話してくれました。

この話し合いから月日が経った現在、お子さんが小学生になったことをきっかけに、生活リズムが少し変わり、旦那さんは朝の送迎に加え、それまでの時間に晩ご飯の支度をしてくれているそうです。その分、あいさんも朝の時間に少し余裕を持てるようになり、ほかの家事をその時間にこなしています。

あいさんのお子さんたち(写真提供:あいさん)

家族の状況に合わせて、流動的にカバーをしあいながら生活できる理由。それは、お互いの仕事を理解しあえていることと夫婦間のチーム意識。それに加え、ほかにも理由があるとあいさんは感じています。

それは旦那さんが2ヶ月間の専業主夫の経験をしたことでした。お互いが家事・育児の大変さをわかっているからこそ、一緒に何事に対しても真摯に向き合えているようです。

ライター業が「自分の価値」を感じられるサードプレイスに

あいさんが副業を始めた理由。それは「自分の力で仕事をしている」という感覚を味わいたかったからでした。多忙な日々の中でも、ライター・広報業で個人として評価を受けることで自己肯定感が高まっていることを感じています。会社と家庭以外の「サードプレイス」を持つことが、自身にとって心地よい支えとなっています。

また、会社で採用の仕事をしていることから、ライター業ではインタビュー記事の声をかけてもらうことが増えました。副業と本業との間で相乗効果が生まれていることを感じています。

東京育ちの都会っ子だったあいさん。地方に移住し今年で6年目を迎えましたが、まだまだ慣れないことも多くあります。しかし、地方で働くことは、自身の可能性を広げるチャンスを得られるとも感じています。

移住先の風景(写真提供:あいさん)

人口減少による働き手不足に特に悩む地方では、採用や広報スキルが求められており、そうしたスキルを生かして地域に貢献できることが、さらなるやりがいにつながるのではないかと感じています。
現在は、移住先でできたコミュニティの方々とともに、フリーペーパーを作成する計画が始動。そこでは、さまざまなスキルを持つ人々とチームを組むことで、より大きな成果を生み出せる可能性を感じていると、あいさんは語ってくれました。

複業生活がハードであることは間違いありませんが、あいさんはその中で自分の価値を再認識し、生きる活力を作り出せています。毎日の忙しさに追われず、これからについても明るい可能性を見据えている姿はとてもすてきです。今後もあいさんの力強い挑戦に期待したいです。

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