Instagramで主に、双子の子育てについて発信しているかなさん。12歳、10歳、8歳のお子さんがおり、2023年10月には双子を出産しました。双子は、お兄ちゃんのそうちゃんと、妹のゆりちゃんです。しかし、お兄ちゃんは元気に生まれて順調でしたが、妹のゆりちゃんは、鎖肛がわかり大学病院へ救急搬送されます。さらに出生直後から尿膜管遺残症、てんかんなどの病気もあり、入院や手術を繰り返してきました。また、かなさんはゆりちゃんの目に、細い線が見られることにも違和感を抱きます。
今回は、ゆりちゃんの目や病気について、母親のかなさんに話を聞きました。
※鎖肛(さこう)…直腸および肛門の形成異常で、肛門が生まれつきうまく作られなかった病気
※尿膜管遺残症…胎児期に膀胱とおへそをつなぐ尿膜管が閉鎖せずに残っている状態の疾患
※てんかん…脳の神経細胞の異常な電気活動によって引き起こされる発作を繰り返し起こす慢性疾患
瞳孔の形が1本線に…
かなさんは、ゆりちゃんの生後間もないころから、夜間の授乳中「目に細い線が見えるな~何だろうな~?」と違和感を抱いていました。
ずっと気にはしていましたが、目がしっかり開かなかったため、確認することができずにいたのです。そして、よく目が開くようになった生後2ヶ月ごろ、はっきり瞳孔の形が1本線になっていることに気がつきました。
ゆりちゃんは出生直後から鎖肛、尿膜管遺残症、てんかん…今までに聞いたこともないような病気が続いており、産後間もないこともあり「うそ…まだあるの?もうやめてあげて。苦しめないであげて」と、ゆりちゃんを抱きながら大声をあげて泣いたと、今でもそのときのことをしっかりと覚えているといいます。
瞳孔が1本線だと気がついたその日は、一晩中「瞳孔 細い」などをとにかく検索したというかなさん。
「いくら検索してもどのような病気か、今後どうなっていくのか、わかるわけでもないのに…。しばらくずっと検索魔でした」と笑いも交えながら、当時の気持ちを話してくれました。
その後ゆりちゃんは、生後5ヶ月ごろからおもちゃなどを至近距離で見ることが多くなります。
娘の存在が誰かのために少しでも役立つなら嬉しい
ゆりちゃんの瞳孔が1本線だと気づいたとき、かなさんはとにかく検索を繰り返しました。
「どんな情報でも知りたい」という思いが強く、検索魔となっていた経験から「同じような症状で、答えが出ないまま検索魔になっている親子さんにヒットして、何か少しでも役に立つ情報を提供できたらいいな…」と、SNSでゆりちゃんの難病について発信を始めたといいます。
また発信することで「うちの子もそうですよ!こんな風ですよ!と新しい情報が入ってくるかもしれない」という思いもありました。
「娘の存在が誰かのために少しでも役立つなら母は嬉しい」とかなさんは投稿の中で話しています。こうしたゆりちゃんの発信に対して、多くのコメントが寄せられていました。
「たくさんの方からコメントをいただき、本当に嬉しくてとても感謝しています。『かわいい・かっこいい・素敵』などポジティブな言葉をたくさんいただいているので、ゆりちゃんが成長し言葉がわかるようになったら必ず皆さんのコメントに触れてほしいです。ゆりちゃんの目には人を惹きつける魅力があるんだよと、形にして証明してあげることができるので本当に発信してよかったなと思っています。また、発信をきっかけに、同じ病気の方とも繋がることもでき、SNSのすごさを身にしみて感じています」とかなさん。
かなさんの投稿は、とにかく前向きで、二度とない幼いころの細かい様子をしっかりと伝えているのが印象的です。そこには「とにもかくにも、愛おしい、かわいいだけだからです。そこに一点の曇りもありません」とお子さまたちを思う気持ちが溢れていました。
2024年の10月に1歳になるゆりちゃん。視力については「私が見ている限りでは、ぼんやりシルエットはわかっていると思います。光にはとてもよく反応していて、テレビの電源の小さな赤い光や、光るおもちゃ、スマホ…など光るものや、発色がいいもの、ボーダーなどの柄には至近距離でよく近づいていくので見やすいのだと…」と、現在も至近距離でものを確認することがあるようです。
また、ゆりちゃんの今後の視力に関しては「症例も少ないうえに個人差がかなりある病気なので、担当医に7歳頃までは何とも言えない」といわれているそう。
病名は、アクセンフェルト・リーガー症候群 (4番染色体一部欠損・PITX2遺伝子欠損)といい、同じアクセンフェルト・リーガー症候群でも、他番号の染色体異常、遺伝子異常の場合もあるといいます。
またゆりちゃんは現在、視覚障害以外に鎖肛、尿膜管遺残症、てんかん、膀胱破裂、口蓋裂、苺状血管腫が治療・経過観察中です。
「とくに困難なことなどはなく、投薬や浣腸くらいなので、特別なサポートもなく過ごせています」とかなさんは話してくれました。
※口蓋裂…口の中の天井(口蓋)と喉の奥(口蓋垂)の部分に裂け目がある先天異常
※苺状血管腫…皮膚の表面や内部にできる「赤あざ」の一種で、未熟な毛細血管が増殖してあらわれる良性の腫瘍
諦めたことや我慢したことを少しずつやっていきたい
ゆりちゃんの難病と向き合いながらの子育てで、意識したり気をつけていたりすることを聞いてみました。
「ゆりちゃんに、少しでも多くの選択肢を準備してあげたいなと思っているので、情報は幅広く得るように意識しています。この先、病状が悪くなることももちろんあるかと思います。ですが、まだ見ぬ未来を考えて行動することはいいけど、不安はあまり持たないようにしよう!何か起きたらそのときに一緒に考えよう!と夫婦で話しています」
また「ゆりちゃんは本当によく笑う子で、本人が笑顔なのに、私が勝手に未来を心配して下を向いていてはダメだなと思っています」と…。
「双子を妊娠してから、フットワークがかなり重たくなりました」と、笑うかなさん。
長男、次男、長女、双子のそうちゃん、ゆりちゃん。そしてパパとママの7人家族では、双子を理由に諦める、我慢することがみんなたくさんあった1年半だったといいます。
双子のそうちゃん、ゆりちゃんは10月で1歳。
そこで「諦めたことや我慢したことを少しずつやって行こうと思います。まずは近い目標、上の子たちがずっと行きたがっている遊園地から!光るものが好きなゆりちゃんに、パレードを見せてあげたいです」と話していました。
遠い目標については、大人になった子どもたちと、笑い話として大変だった日々を振り返ること。まさかの双子誕生、まさかの病気…で、かなり家族みんなメンタルも思いやりも強くなったというかなさんたち。
「家族が多い分悩むことも多いですが、楽しいことも多いので、辛いことは楽しいことで昇華しながら笑って過ごしていきたいです」と話します。
難病を患っているゆりちゃんには「ゆりちゃんのペースでそばにいてくれれば充分。後はパパとママに任せとけ!」と、頼もしく優しいパパとママです。
そうしたパパ、ママの様子をお子さまたちも見ているので、みなさん思いやりがあるのでしょう。そんなご家族の中で育っているゆりちゃんの笑顔はついこちらまで笑顔になります。
これからもご家族みんなで力を合わせて、笑顔で仲良く生活していくことを願っています。