骨形成不全症という病気を聞いたことがありますか?
骨形成不全症とは、骨がもろく弱いことから、些細なことで骨折をしてしまう生まれつきの病気です。また、障がいの度合いによって骨折の頻度も違いますが、骨折だけではなく歯がもろかったり、難聴だったりと骨折以外にもいろいろな症状が見られることもあります。
「人生で約80回以上骨折している」と骨形成不全症について語るさきさん。さきさんは、SNSでそうした様子を発信しており、ときには彼氏さんが投稿することも。
今回は、さきさんとその彼氏さんに話を聞きました。
ちょっとしたことで骨が折れてしまう骨形成不全症
骨がもろく、些細なことで骨折してしまう骨形成不全症。さきさんは4歳、5歳くらいに「ちょっとしたことで折れちゃうんだなー」と、この病気について感じていたといいます。
また、体が小さかったことから「すぐに抱っこしてもらえるので、幼いころは嬉しくて、あまり悲しい気持ちではなく、逆にみんなに抱っこしてもらえて嬉しい!」という気持ちが勝っていました。
ただ大人になるにつれ、自分のできることが少ないことにも気づき始めます。それに対して「悔しかったですし、これから先悔しい思いをしていくことが多いのかな?」と一時期は悲しい気持ちに…。しかし、なるべくマイナスなことを考えなかったというさきさんは「案外楽しんでいました」と当時のことを振り返ります。
さきさんは、徐々に自分で動けるようになった5歳くらいから骨折するようになり、小学校3年生までは大きな骨折が多く、高校の頃は小さな骨折が多かったといいます。
「小学校の3年生までは大腿骨に何も入れていなかったので、とくに大腿骨の骨折が多かったです。湯船でジャンプをしただけなど本当に些細なことで骨が折れました。少し力を入れて足を動かしたら折れた…など1年のうち2、3回は大腿骨骨折でした」
そこで小学校4年生のとき、大腿骨にロットを入れることになります。すると大腿骨の骨折がなくなり、そこからはかなり骨折の頻度が減少。 しかし高校生のころは「とくに肋骨は結構な頻度で折れていました」と、通学などの疲労から足以外での骨折が多かったといいます。
※ロット…金属のバー
些細なことでも骨折してしまうため「人生で約80回以上も骨折している」と語るさきさんですが、骨折したときの感覚について「個人差はかなりあると思いますが、私の場合骨折したときには『ポキっ』と音が鳴ります。それは私だけではなく、周りにいる人まで聞こえるくらいきれいな音です。そのため『あ、骨折したね』とすぐにわかります」と笑いも交えながら話してくれました。
たとえば、腕だったら骨折した腕側が重くなってまったく動かなくなり、その後すぐに痛みが出るといいます。
「本当に折れた瞬間、自分の腕ではないんじゃないかってくらい重くなっていくのです。骨折の仕方によっては骨が肉に刺さったりするので、チクチクとした違う痛みも伴ったりしています」
手を振って上腕骨を骨折、抱っこして肋骨骨折、シーソーに乗って大腿骨骨折、車いすから落ちて頭蓋骨骨折ということもありました。
現在も「どんなに気をつけていても骨折をしてしまうことはある…」といいます。肋骨はやはり弱いので、ときどきくしゃみをしただけで骨折をしてしまうことも。
大きな骨折は5年前に一度足首の骨折をしたのが最後で、大腿骨や腕の骨折などの大きな骨折は減りました。治すまでには個人差はあるものの、さきさんの場合、腕や足首の骨折をしてしまうと1ヶ月はほぼ使えません。2ヶ月目くらいから少しずつ使えるようになり、大体3ヶ月目には日常生活に戻れるといいます。
大腿骨骨折の場合は、1ヶ月は寝たきり、2ヶ月目から3ヶ月目には少しずつ生活ができるようになり、4ヶ月目には日常生活を送ることができている…と話していました。
生活をしていくうえで注意していること
さきさんは生活していくうえで気を遣っていることがあります。それは、急な動きはしないこと。
急な動きは骨が驚いてしまい、負荷がかかって折れることがあるのです。また、大きな振動は危ないため、外へのお出かけの際、段差などには気を遣わなくてはなりません。さらに無理をすると疲労骨折をすることもあるため、なるべく無理はしすぎないようにしていると…。
さきさんは、痛みに強くなってしまい「これくらいなら大丈夫!」と思って気にしないでいると、次病院に行ったときには「ちょっとよくないね…」と医師に言われたこともあるそう。また、変形があるためどうしても曲がっている部分が痛くなり、腕も変形しているので短くなってしまい、取りたいものに届かないという大変なこともあるのです。
さきさんには、お付き合いしている彼氏さんがいます。
「骨折や変形からくる痛みが出ても、それでもいつも楽しく明るいさきがかっこよくて素敵で、そんな彼女をただただ見せたくて…」という思いから、彼氏さんがSNSを更新することも。
さきさんに対して、どのようなサポートをしているのかを聞いてみると「サポートと思ったことはありません。側から見たらそれはサポートでしょ!っていうかもしれないけれども、僕が苦手なことを彼女はやってくれているし、彼女が苦手なことは僕がやっているって感じです」と話してくれました。
彼氏さんから見て、さきさんはコミュニケーションが本当に得意だといいます。そのため、お店で店員さんと話したり注文したりするのはさきさん。
「本当にコミュニケーション力がすごい」と、彼氏さんは絶賛します。
他にも「彼女の方がしっかりしている部分が多いので、迷ったときや困ったときには聞きます。逆に重いもの持ったり、高いところから取ったりなど彼女ができないことを僕がやるなどして、お互いに助け合っています」とお2人の関係性について話してくれました。
自分の発信が誰かの役に立つのでは…
さきさんがSNSを始めたのは、友人が「こんなの今流行っているみたいだからやってみなよ!」と声をかけてくれたことがきっかけでした。
「面白そう」と思ってSNSを始めたさきさんは、最初のころはただただダンスしているところを撮ったり、友人との写真をあげたりしていて楽しんでいたといいます。
そんなとき、彼氏さんと付き合うようになり、2人の動画をあげていく中で、最初のころよりも骨形成不全症について伝える機会が多くなっていったのです。そして「障がいのことを知りたい」とDMなどでいただくこともありました。
そこで、障がいを発信していくべきかと悩んでいたさきさんは、高校生のころを振り返ってみます。
「私自身、これからの人生や恋愛などに悩んでいましたが、まだSNSが普及していないときだったので心がモヤモヤしていました。誰かに相談することもできなかったし、それに私のような経験をしている人が少なかったです。本には医学的なことしか書いていないですし、すごく不安で周りを見て、羨ましいなーと思うことしかできませんでした。だから、SNSで発信することで『誰かの役に立つのでは?』と思いました」
そうした思いから、自身の障がいをしっかりと伝えるようになっていきました。
さきさんのSNSには「かわいい」「明るくて素敵」など、多くのコメントが寄せられています。また、 他にも「元気をもらった」「私も頑張ろうと思った」「勇気をもらった」というコメントもあり、それらを見たときに「すごく嬉しかったのと私も頑張ろうと思えました」とコメントに対する思いを話していました。
しかし、もちろんいいコメントだけではなく、ときには悲しいコメントも寄せられます。
「それはそうだよねって思っています。ちょっと悲しかったり悔しかったりもする…」とさきさん。
自分の障がいや自分のことを言われるのはあまり気にならないといいますが、さきさん以外の人のことを言われたときに「ムッ!」となったり、ケータイに向かって「ムスッ」としたりしますと笑いながら語ってくれました。
生まれつき骨形成不全症という障がいを患っていたさきさんは、現在病気について「これからも共にする相棒かな?」と思っているといいます。
「相棒ってお互い助け合いという意味もあると思うので、障がいが相棒?って思うかもしれませんが、私からすると障がいがあるから得た経験もあって、全部がマイナスってことではなくプラスだったこともあります。たとえば、周りの人たちがとっても優しく接してくれることが多くあって、たくさんの人たちからの優しさをいただいて今の私があります。きっと皆さんよりもそういう経験をたくさんしていて、その恩返しを何かしらでできたらいいなと思ったり、そう思ったときに人との接し方を考えるきっかけになったり…。それならいろいろ勉強しよう!と未来を考えるようになったり…。障がいは自分のことを考え、自分の将来を考えるきっかけを作ってくれました。そう思うとプラスな出来事かなと思っているので、私からすると相棒なのです」
今後、さきさんが挑戦していきたいことはスキューバーダイビング。
「いつか挑戦したいなと思っています」と語り、彼氏さんの願いは「これからもたくさんのことを全力で楽しんでほしい」ということ。
骨形成不全症を相棒と捉え、前向きで頑張り屋のさきさん。そしてそっと支える彼氏さんの存在。さきさんの挑戦、彼氏さんの願いはきっと叶うことでしょう。