子猫を守り『過呼吸状態』の野良猫…「心が震えました」その後の変化に反響 保護活動をする理由を聞いた

子猫を守り『過呼吸状態』の野良猫…「心が震えました」その後の変化に反響 保護活動をする理由を聞いた

飼い主が適切な飼育管理を放棄した結果、動物たちが悲惨な状況に置かれてしまう「多頭飼育崩壊」があります。
こうした問題は近年増加傾向にあり、動物にとっても、飼い主や周囲の人にとってもさまざまな問題を引き起こしています。

このような多頭飼育崩壊の状況にあった猫や野良猫を保護し、新たな飼い主さんへとつなぐ役割をボランティアで行っている@hogoneko_osakaさんに話を聞きました。

のらねこ母さん「和菓ちゃん」との出会い

ある日、野良猫にご飯をあげていた高齢女性が、お腹の大きくなっている猫に気がつき、家に入れて出産させました。その後、5匹の子猫が産まれましたが、高齢女性には世話が大変すぎたため保護猫団体に保護依頼をします。

そして保護猫団体からの依頼で、飼い主さんが見つかるまでの間、母猫であるのらねこ母さんとその子猫たち総勢6匹を@hogoneko_osakaさんのところで預かることになりました。のらねこ母さんは「和菓ちゃん」と名付けられます。

家に到着したとき(@hogoneko_osakaより提供)

和菓ちゃんと子猫たちが、家に到着したときのことについて@hogoneko_osakaさんは「忘れられない…」とその様子を話してくれました。
「無邪気な子猫たちと対照的に、和菓ちゃんは緊張とストレスのためなのか、盛大に下痢をしておりペットキャリーが便まみれ… もちろん和菓ちゃんのお尻も下痢便でベタベタです。送り届けてくださった保護猫団体のスタッフさんがいてくださったおかげで、何とかお風呂場でお尻を洗うことができましたが本当に大変でした」

過呼吸のようになっていた和菓ちゃん(@hogoneko_osakaさんより提供)

「シャーシャーと威嚇され、猫パンチを浴びせられながら格闘したのを強く覚えています。その後もしばらく体調不良が続き、あちこちに下痢や嘔吐をされて、お世話を続けていく自信を失いそうになることもありました…。そんな和菓ちゃんとは反対に、子猫たちはまだ小さすぎて人を怖がることがなかったです。そこで、お乳が足りない子のミルクをあげたり離乳食を食べさせたりして和菓ちゃんの子育てのお手伝いをしました」

その姿をじっと見つめていた和菓ちゃん。はじめは遠くから 「うちの子に何すんの!?シャー!」 という感じでした。
その様子について「子猫を守らなければ…という必死さと恐怖と緊張が伝わってきて心が震えました」と、猫に母性という本能を教えてもらった気持ちといいます。

子猫たちがいなくなり、甘えるようになった和菓ちゃん

保護当初の和菓ちゃんは、緊張と興奮で過呼吸のようになっていましたが「今は穏やかに過ごしているので、口呼吸をすることはありません」と、現在はリラックスしている様子。

和菓ちゃんは、人に慣れてきても、しばらくはおもちゃで遊ぶことや甘えることはなかったといいます。常に人とは一定の距離を取って過ごし、子猫たちが遊んだり人に抱かれたりするのをずっと見つめていました。
それは「母のまなざしだったんでしょうね」と@hogoneko_osakaさんは当時のことを振り返ります。

遠くから見ていた和菓ちゃんでしたが、次第に距離が近づいてきて「シャー!」と言わなくなります。そして、1ヶ月経つころには体をチョンと触らせてくれるように。

撫でさせてくれたり、抱っこさせてくれたのは@hogoneko_osakaさんの家に来て3〜4ヶ月が経ったころでした。
その時期は、子猫たちに次々と飼い主さんが決まり、貰われていったころだったため「子猫たちがいなくなって張りつめていた気持ちが途切れたのか、寂しさによって誰かに甘えたい気持ちが出てきたのかもしれません」といいます。

その後、子猫たちがいなくなって自分ひとりになったとたんにゴロゴロ、ベタベタの甘えっ子に変身。和菓ちゃんは当時、子猫を守ることで精一杯だったのかもしれません。

すっかり慣れた和菓ちゃん(@hogoneko_osakaさんより提供)

そんな和菓ちゃんに対して「お母さんの役割を終えた今は、思い切り甘えさせてあげたいです。こんなに慣れて、懐いてくれるとは思っていなかったのでうれしい限りです。警戒していたころは、ストレスからか吐いたり下痢をしたりすることもありましたが、それもなくなりお世話が本当に楽です。手がかからないし悪さもしないいい子です! 繊細な子ほど犬のような懐き方をすると教えてもらったのですが本当にそう思います。パートナーとしてぴったりの猫さんです」と話していました。

和菓ちゃんは現在、預かりボランティアの家で「仮暮らし」の状態。そのため、終生飼育をしてくれる「ずっとのお家」で暮らすことが和菓ちゃんにとっての幸せなります。

ボランティアさんの上に座る和菓ちゃん(@hogoneko_osakaさんより提供)

「とても甘えん坊な子なのでパートナーになれる先住猫さんがいるお家か、飼い主さんの在宅時間が長いお家だと理想的だな…と勝手に妄想しております(笑)」と和菓ちゃんの幸せを願っていました。

最後まで責任を持って ボランティアを始めたきっかけ

@hogoneko_osakaさんが、保護猫を預かるボランティアを始めたきっかけは、自身の子どもたちが「犬や猫のペットを飼いたい」と言い出したこと。しかし、ペットを飼うことに踏み切れませんでした。

「猫は昔自分が飼っていたこともあり、子どもにも一緒に暮らす喜びやかわいさを知ってほしいと思いましたが『最後まで責任を持って看取りまで』という自信がなかったのであきらめかけていました。犬や猫は20年程度生きますし、20年後に自分自身が今のように元気でいられるかはわかりません。また実家でも猫を飼っていたのですが、その猫の高齢化と両親の高齢化が重なって大変でした。猫にも認知症があるのかトイレの場所がわからなくなり、そこらじゅうに尿や便をしてしまうようになってオムツが必要に…。加えて、両親がそれぞれ病気と認知症になってしまい、トリプル介護に。それはもう大変でした」

こうした思いを自分の子どもにはさせたくないという気持ちが強かった@hogoneko_osakaさんは、保護猫を一時的に預かるボランティアがあるということを知ります。

そこで「これなら私たち家族でもできるんじゃないか?猫を助けることにも繋がるし、自分たちも猫と触れ合えるから双方にとっていいのではないか?」という考えからボランティアの応募に繋がりました。

保護猫を育てるうえで心がけていること

保護猫は野良猫や多頭飼育崩壊など、過酷な環境で生きてきています。そこで、まずは 「人は敵じゃないよ」 ということをわかってもらうようにしているといいます。

「猫さんにはそれぞれ個性があるので、あまり構われたくない子はそっとしておくし、甘えたい子は撫で回してやります」と、そんな普通の関わりにも思えますが、実は2つ決めていることがあります。

1つめは「首輪をつけないこと」です。
@hogoneko_osakaさんたちはあくまで預かりボランティアで、一時避難所のような存在。そのため、首輪をつけるのは「飼い主さんの猫への初めてのプレゼント」としておきたいと話します。

2つめは「預かっている猫ちゃんをインスタグラムに投稿すること」です。
お迎えした子がどのように暮らしていたかの様子がわかるとうれしいものなので、これは、未来の飼い主さんのためにやっているといいます。

また、インスタグラムで拡散されると多くの方の目に留まり、飼い主さんが現れてくれること繋がります。

和菓ちゃんは緊張が激しく、譲渡会に参加するとストレスで体調を崩してしまう恐れがあるため参加を見送っていました。そのため、インスタグラムでの発信が、和菓ちゃんを見つけてもらうチャンスにもなります。

くつろぐ和菓ちゃん(@hogoneko_osakaさんより提供)

@hogoneko_osakaさんは「和菓ちゃんの飼い主さんとして立候補してくださる方! DMお待ちしております!」と、熱く語ってくれました。

保護活動を始めて見えた世界

@hogoneko_osakaさんは「保護活動をはじめてから、これまで見えてなかった世界を知ることができました」といいます。

それは、多頭飼育崩壊からレスキューされるたくさんの猫。悪質ブリーダーの無理なお産でボロボロになった血統書付きの母猫。また、野良猫へ餌をやる人の中にはTNR活動をしている方など、さまざまな経験や出会いから知ることができました。

TNRを施された猫の耳は一部分をカットされて「さくら猫」と呼ばれています。それを知らなかった@hogoneko_osakaさんは、これまでもさくら猫を見かけても「けんかをして耳を怪我したのかな?」と思っていたといいます。そのように猫を取り巻くものへの見方が変わっていきました。

※TNR(ティー・エヌ・アール)活動…野良猫を捕獲して不妊手術や去勢手術を行い、元の場所に戻す活動です。TNRは「Trap(捕獲する)」「Neuter(不妊手術や去勢手術を行う)」「Return(元の場所に戻す)」の頭文字をとった言葉です。

「保護猫を助ける」ためにできること

@hogoneko_osakaさんが、保護猫活動に携わる人として感じていることは 「保護活動はお金がかかる、人手もかかる、場所も必要」ということ。

「目の前の猫を救いたいという気持ちがありながら叶わないことがあります。保護猫活動団体が多頭飼育崩壊してしまうと本末転倒ですから。 そして保護した猫が病気なら動物病院に連れて行かなくてはなりません。すべて『お金、人、場所』が必要なんです」

そこで、少しでも保護猫たちの力になりたいと思っている方にもできることがあるといいます。

直接の寄付や募金などもありますが「猫グッズを買う」ことでも支援ができることです。
「猫ちゃんのプリントされたTシャツやバッグなどの商品の中には『一部が保護猫団体に寄付される』というものがあります。ふるさと納税でもそのような返礼品があります。私も今年は猫のラベルのお酒がもらえる返礼品を選びました」

ふるさと納税返礼品(@hogoneko_osakaさんより提供)

「こういった形で保護猫を助けるという人が増えてくれたら本当にうれしいです」と思いも話してくれました。

インスタグラムには、和菓ちゃんを始めとしたたくさんの保護猫が紹介されており、最初は表情が硬かった猫ちゃんが、@hogoneko_osakaさんたちの愛情によって生き生きとした顔に変わってきているのがわかります。

こうした発信を通じて、猫ちゃんに新たな飼い主が見つかってくれることはもちろん、多頭飼育崩壊などが起こらない世の中になっていくことを願います。

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