徒歩で日本一周「やりたいことには100%」でも「人生は70点で満足」その言葉に秘められた意味とは?

徒歩で日本一周「やりたいことには100%」でも「人生は70点で満足」その言葉に秘められた意味とは?

やりたいことはたくさんある。けれども、自分の年齢や立場から「後悔しない選択」をすることが難しいのも本音です。

今回、インタビューをしたtomoyanさんは、あることがきっかけで「好きなことだけに全振りして生きてみよう」と思い、2023年の10月まで徒歩で日本一周旅に挑戦。現在は世界一周をされています。

自分のやりたいことに貪欲な一方で「死ぬときには自分の人生に70点くらいの点数をつけられたらいい」と語る一面も。自由でありながらも、tomoyanさんの中には一つ信念があるように感じられました。

そこで今回は、好きなことにとことん挑戦しようと考えた経緯や、さまざまな経験をされた中で感じたこと、そして大切にしている価値観を伺いました。

むしろ大学に受からなくてよかった

高校時代から、2~30代は世界を旅していろいろな人に出会って、さまざまな価値観に触れたいと考えていたtomoyanさんですが、お母様からの勧めもあって大学を受験しました。しかし、試験の数週間前まで部活動に励んでいたこともあり、すべてて不合格。その結果にホッとしたといいます。

「もし大学に進んで学問を究めて資格まで取得していたら、それを活かした生き方をしなけならないと、自分を縛りつけていたんじゃないかと。楽しいことに全振りする生き方ができていなかった思います」

高校卒業後はアルバイトを始め、受験費用をご両親に返しながら貯金をして、20歳でワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。

帰国後、愛犬の病気がわかり、介護のため日本で過ごすことに。約3年が経ったころ愛犬が亡くなり、そして当時付き合っていた彼女とも別れることになりました。このとき何かが吹っ切れて「いつか死ぬなら、好きなことだけに全振りして生きてみよう」と思い「死ぬまでにしたいことリスト」を作成します。

そして、ワーキングホリデービザを使いニュージーランドへ。しかし、コロナウイルスの影響で、途中で帰国を余儀なくされました。このままではいつ海外に行けるかわからないと思ったtomoyanさんは、少しコロナが収まった頃に「したいことリスト」にあった「日本中を徒歩で旅する」を実行することに。

そして、それを達成した今は、世界一周をスタートさせ東南アジアに滞在中。日々、インスタグラムで旅の様子を投稿しています。

台湾を自転車で一周したときの写真(tomoyanさん提供)

行動力と経験は、人生を豊かにしてくれる

これまでさまざまな経験をしてきて、タイミング・運・人とのつながりの大切さを感じたというtomoyanさん。そして「楽しむ」を目的にしていても、やりたいことを達成したあとには得られるものがあると感じています。

日本一周徒歩の旅では、数えきれないほど人の温かさに触れました。

ある日、野宿をしていたtomoyanさんは財布を盗まれます。自分の責任であるとも感じていましたが、それをSNSにアップしたところ、仙台のご家族に声をかけていただき、しばらく家でお世話になることに。

実は、そのご家族は東日本大震災で家が流され、仙台に引っ越されてきたそうで…。

意気消沈していたtomoyanさんに「命さえあれば、また笑えるときがくるから」と励ましてくれました。自分とは比べ物にならない過酷な経験をされた方に救われたことに感慨深い気持ちになり、またその方の語る言葉に重みを感じました。

日本一周をしたことで、このご家族を含めてまた会いたいと思える人が日本中にできたことは、お金には代えられない、心を豊かにしてくれる経験となっています。

日本一周中に出会った方との写真(tomoyanさんより提供)

また、ワーキングホリデーをしたことで、異国の地で生活をしていくことの大変さを感じ、そして、それができた自分に対して自信が持てるようになりました。

ニュージーランドでは、仕事探しに苦戦。しかし、たまたま開店準備をしていたレストランの従業員に声をかけたら、なんとその人が日本の学校でALT(外国語指導助手)として働いた経験のある方でした。それが縁となり、お皿洗いのポジションで雇ってもらえることに。

日本人は自分一人だけ。英語力も十分ではなかったため怒られることが多く、精神的にきついと感じることもあったそうですが、最終的にはシェフのサポート役を任されるまでに。そして就労ビザのサポートをしたいと言ってもらえるほどの信頼を得られました。

ニュージーランドのレストランで。同僚との写真(tomoyanさん提供)

やりたいことには100% でも人生は70点でいい

やりたいことには全力を尽くすtomoyanさんですが「人生は70点くらいの満足度でいい」といいます。これは、すべてを手に入れることはできないという現実を受け入れているから。

仕事をしてキャリアを築きたい、家族を持ちたい、お金も欲しい、そしてやりたいこともやりたい。しかし、それらすべてを叶えようとすると、どれも中途半端になってしまう可能性があります。tomoyanさんはその中途半端さを一番恐れました。だからこそ、今はやりたいことに全力を注ぎ、他のことはいったん脇に置く選択をしています。

これが、彼が言う「70点」の人生観。

またお金についても、経済的に豊かになることよりも、自分の経験ややりたいことに時間を費やすことに価値を見出しています。彼にとってお金は、経験を積むための手段。嗜好品を買うこともほとんどなく、日本で働いていたときに稼いだお金はほとんど貯金していたといいます。

このように、tomoyanさんは自分の価値観に基づき、何に優先順位を置くかが明確なのです。

楽しい選択の先にも得られるものはある

tomoyanさんは「どんな生き方であれ、自分が自分の生き方を肯定できたらいい。誰かを傷つけてなければ」と考えています。

世界一周を終えたあとのことは未定。ですが、その状況を「笑える何かがまっているかもしれないし、つらいことが起きてもネタになる」と楽観的に捉えています。
「不安がないというとうそになるかもしれません。しかし『楽しいと思える方向に進んでいく』という信念は変えないでいたいと思っています」

そう考えるようになったのは、愛犬の介護をしていたときに、自分に起きたある変化がきっかけでした。どんどん元気がなくなっていく愛犬の姿を見続けながら、自身もやりたいことができない毎日が続くなか、お金に関心がなかったはずが、お金を散在することでストレスを発散するように。自分が変わっていく感覚を味わい、我慢より楽しいを感じられる毎日を大切にするようになりました。

そんなtomoyanさんですが、今までやこれからの経験が、将来何かにつながるかもしれないとも考えています。

日本一周中には、さまざまな立場や年齢層の人と関わり、中には「もし帰国して無職だったら一緒に働きたい!」と声をかけてくださった人も。そして、自身のSNSの投稿が、ラオスに入ってから話題になりはじめ、現地の人のフォロワーが増えているといいます。

ラオス旅行中の投稿(tomoyanさんのInstagramより)

「どこでどんな出会いがあり、それがどんなことにつながるかわからない。そんな可能性に満ちた日々を楽しんでいます。それとともに、その何かをつかむために地道に語学の勉強にも励んでいます」

楽しむことは楽をすること、耐えることを良しと考えてしまいがち。しかし、自分が「楽しい」と思う方向に進んでいくうちに、自分が想像もしていなかった「楽しい」が引き寄せられるかもしれません。

「自分の生き方に自分が疑問を持つことはしたくない」と語るtomoyanさんのこれからを、こちらも楽しみに見守っていきたいです。

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