小学2年生の娘「自分の心と身体ってどうやって大事にしたらいいの?」いじめに悩む娘の言葉がきっかけで…”性教育”の重要性に気付く、その訳とは

小学2年生の娘「自分の心と身体ってどうやって大事にしたらいいの?」いじめに悩む娘の言葉がきっかけで…”性教育”の重要性に気付く、その訳とは

「ママ…死にたい。死んだら楽になれる?」ある日、娘さんからそんな言葉を投げかけられたことをきっかけに「自分のココロとからだを大事に」と性教育について学び始めたなお(@nao_hugmelab)さん。なおさんは日本の性教育への認識を疑問視し、性教育を通して「自分のココロとからだを大事に出来る人が1人でも多くなったらいいな」という思いから、一般社団法人Hugmeを立ち上げ、講義をしたり座談会を開いたりと精力的に活動しています。

双子のママであり元保育士のなおさんに、性教育との向き合い方と自身のお子さんへの性教育について、今後の日本のあり方について話を聞きました。

きっかけとなったのは娘の言葉

なおさんの娘さんが小学2年生のときのこと。毎日泣いて、玄関から動けないという状況が続きました。ある日、泣きながら「ママ…死にたい。死んだら楽になれる?」と小学校でいじめにあっているつらい気持ちを母親であるなおさんに訴えたといいます。

それを聞いて必死に「そんなこと言わないで。死んだらだめ。学校に行けないなら、行かなくていい!自分のココロとからだを大事にしてほしい」と伝えたなおさん。

すると、娘さんから「自分のココロと身体ってどうやって大事にしたらいいの?」と質問されたといいます。突然の質問に、なおさんはその場ではなにも答えることができませんでした。
当時37歳だったなおさんは「自分のココロとからだを大事にする」とは何か、自身でもわかっていないことに気づきます。

「そのときに初めて『私が私を大事にできていなかったのでは?』と実感しました」

それと同時期、性教育を発信している方との出会いがあり、性教育を通して「自分のココロとからだを大事にする」方法を知ることができたなおさんは、人生で初めて「自分を自分で大事にすること」ができました。

また、自分を大事にする方法を親子で考え実践すると、娘さんが自身と友達を大事にするようになり、その後、嘘のように学校でのトラブルが激減したといいます。

日本の性教育の現状

なおさんは、日本の性教育についてこのように話します。
「日本では、性教育は恥ずかしい・卑猥といったイメージがまだまだ強く、世界から『性教育後進国』とまで言われているのが現状です。性教育の遅れから、SNSを通した未成年の性被害の増加、いじめ・不登校の増加、子どもの自殺者増加、インターネットを通したトラブルの増加など、子どもを取り巻く環境は日々深刻化しています」

「また、ユニセフのレポートカードの報告で、子どもの身体的幸福度は世界でも上位に位置していますが、精神的幸福度ではワースト2位となっています」

これは「日本の未来を考えても早急になんとかしなければいけないことだ」と、なおさんは危惧しています。日本の「恥ずかしい」という性の認識を変えたいと思い、過去に学んでこなかった性教育を大人が学び、アップデートしていくことが重要だといいます。

SNS発信のきっかけと苦労

日本では、性に関する大事な教育が学校でも家庭でも行われていないという実情があるとなおさんはいいます。それが結果的に子どもたちが苦しい思いをすることに繋がってるのではと考え、性教育をもっと広めて「自分のココロとからだを大事に出来る人が1人でも多くなったらいいな」「子どもたちの笑顔が増えたらいいな」と考えるようになりました。

その考えがきかっけで、一般社団法人Hugmeを立ち上げ、SNSでも発信するようになります。

講演の様子(@nao_hugmelabさんより提供)

実際に発信を行うにあたり「日本の大人たちは『性=恥ずかしい・タブー』という認識が強いため『子どもにそんなこと教えるな』とか『非常識な母親だ』など否定的な意見がたくさんありました。また、身近な大人からも『なぜ性教育をわざわざあなたがやるの?』と理解を得られませんでした」という現実がありました。

ただ、その中にも積極的に性教育を家庭で行うことに肯定的な意見も多かったこと、中高生からの「知れてよかった」「教えてくれる大人がいない中で、貴重な話をきけてよかった」と子どもたちからの声もたくさん聞くことができ、一時は悩んだ発信も現在は続けられていると話します。

わが子との向き合い方

なおさんのSNS発信の中に「小学4年生の娘から『赤ちゃんできたかも』と泣きながら報告が!」という投稿があります。そのときのなおさんは「え?まさか!」と一瞬だけ時間が止まったように感じたといいますが、その後のやりとりに驚かされました。

娘さんに生理が来ていなかったことや、娘さん自身が赤ちゃんがどうやったら出来るかを知っていたこと、セックスをするということは責任が伴うことなど、日頃から話をしていたなおさんは、娘さんが「何か勘違いしたんだろうなと」すぐに見当がつくなおさん。

なおさんは、娘さんが小学3年生のときに家庭で生理や性交について教えていたといいます。
「学校で教えてもらえると思っていましたが『はどめ規定』があることや、学校教育だけでは不十分だということを知ってからは、積極的に家庭でも話をするようにしました」

なおさんと娘さんの会話

性教育は「わざわざやるぞ!」と意気込んでするものではなく、日常会話の中で普通に話しているというなおさん。

なおさん自身が生理のときに、あえて娘さんと一緒にお風呂に入ったときの会話では…。娘さんの生理への疑問に対し「赤ちゃんを産めるのは女の子だけだから、生理はとても大切なしくみなんだよ」と説明しました。

他にも、ドラマなどで少し乱暴なシーンがあったとき、娘さんへ「この男性は、この女性のこと大事にしてると思う?」と質問すると「全然思わない」と返ってきたため、もし暴力を振るわれたときは「誰かに相談することが大事」と伝えたといいます。

なおさん(@nao_hugmelabさんより提供)

また、ニュースを見て「性被害ってなに?」「不純異性交遊ってなに?」「痴漢ってなに?」など、娘さんが外から仕入れた情報から様々な質問をしてくるたびに、聞かれた質問に対し基本的にごまかすことなく伝えているといいます。

「大人が気まずいと思った表情や、言葉の詰まりを子どもは敏感に察知して、今後聞いてこなくなり、何かあったときに相談してもらえなくなるのが1番の問題になります」

性教育の基本は「自分自身を大事にすること」「自分自身を大切だと思えること」だと、なおさんは話します。

親として大切にしていること

なおさんが親として、娘さんへの接し方で意識していることを3つ話してくれました。

1つ目は1人の人間として接すること。
「どんなに小さくても自分の意見や感情を持っています。親の価値観で抑えつけ、命令し、従わせるのではなく、意見を言い合って折り合いをつけることと、尊重し合うということを意識しています」

2つ目は、なおさん自身が自分を大切にすること。
「お母さんがいつもイライラしていて、余裕がなかったり、目の下にクマをつくりながら『自分を大事にしてね』と言っても伝わりません。自分を大事にする子どもに育ってほしいと思うなおさんは、まず『自分自身を大事にすること』を意識し、その姿をお子さんに見せ、自分を大事にする方法を伝えています」

3つ目は「生まれてきてくれてありがとう」「大好きだよ」「今日も楽しかったありがとう」と、愛を伝えること。
「『◯◯がいてくれて幸せ』『◯◯のこういうところが愛おしいな』と子どもに対する愛の気持ちを、1日5回以上は必ず伝えています」

なおさんの研究授業や学校での講義

なおさんは一般社団法人Hugmeという会社を立ち上げ、全国の幼稚園・保育園、小中高校の生徒向けに、そして保護者や教員向けに性教育についての講義をしています。

「1000人いたら1000通りの考えや意見があり、その意見が良い悪い、合ってる合ってないにかかわらず、絶対に否定しません」そう話すなおさんは、子どもたちが話をしてくれたこと自体に「話をしてくれてありがとう」という気持ちでいっぱいだといい、どの考えや意見もその子の大切な個性や生き方だと受け止めてきました。

もし、意見を聞いた上で伝えなければいけないことがあった場合は、考えを受け止めた上でその後の話を展開していくようにしているといいます。

講演の様子(@nao_hugmelabさんより提供)

親世代に伝えたいこと

親世代の方を相手に講義することも多いなおさん。
「性教育と言うと『寝た子を起こすのでは』と懸念する方が多いのが現状ですが『子どもは寝ていない』『寝ている・寝ていてほしい』と思っているのは親だけです」と訴えます。

「『自分たちも性教育を学んでこなかったけど、大人になれたんだから大丈夫!』と思っている方が多いのですが、昔と今を比べると、スマホやネットの普及によって手に入る情報量が違います」

親が性をタブー視することで、子どもが親に相談しづらくなり、身近な大人(親)を頼らなくなっているのが現状。その結果、見たことも会ったこともないSNSで知り合った相手に相談してしまうことも懸念しています。

「両親共働きも増え、子どもと接する時間も減っている中でも『子どもに幸せになってほしい』『笑顔になってほしい』『子どもが自分を大事に出来る子になってほしい』と願っているのなら、まずは大人が性の知識をアップデートして、性についてオープンに話せる関係性を築いてほしいと思っています」

今後の活動について

なおさんは、自身の経験から「自分のココロとからだを大事にするためには何をしたらいいのか、気づきを与えられるような発信をこれからもしていきたいと思っています。性教育を通して子どもたちが『自分なら大丈夫』と自分を信頼して未来を創っていってほしいです。そのために私たちは大人も子どもも【自分のココロとからだを大切にできる人を増やす】というテーマのもとこれからも進んでいきます」と、力強く語ってくれました。

性教育と聞くとなんとなく肩に力が入ってしまいがちですが、なおさんのSNSの投稿はスッとココロに入ってきて「自分にもできるかも」とチャレンジしたくなるようなコンテンツになっています。
毎日忙しく過ごす中で「自分を大切にできてないな」と感じたとき、なおさんの投稿から自分自身を大切にするためのヒントをみつけられるかもしれません。

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