ペットに対し…店員「こらお前」罵倒や暴力を容認するトリミングサロンからも相談がきて…「労務関係を見直す足がかりとなれば」退職代行サービス代表が語る日本社会への思い

ペットに対し…店員「こらお前」罵倒や暴力を容認するトリミングサロンからも相談がきて…「労務関係を見直す足がかりとなれば」退職代行サービス代表が語る日本社会への思い
代表取締役の谷本さん(退職代行モームリさんより提供)

最近「退職代行サービス」という言葉を耳にすることが増えていませんか?退職代行サービスとは労働者本人に代わって、弁護士などの第三者が会社に対して退職の意思を伝えるサービスのことをいいます。

今回は「退職代行サービスモームリ」を設立した、代表者の谷本さんにその目的や思いを聞いてみました。

日本社会の特徴について

谷本さんは、日本社会の特徴や、課題と感じていることをこのように話しています。

「日本では、退職をすることが悪いと思われている傾向があります。
そして、仕事を辞めたくても辞められない方が多くいるのが現状です。それは『働き方改革』が必要だといわれているにもかかわらず、劣悪な労務環境であったり、違法な労働をさせたりする企業がまだ見られるということだと考えられます」

また、谷本さんによると日本では生涯転職回数が2〜3回と言われていますが、アメリカでは12〜14回が平均だと言われているそうです。

もっと日本の皆さんには、退職をすることが悪いのではなく、自身のさらなる成長や次のキャリアアップに繋がるという考え方が浸透してほしいと谷本さんは話します。

退職代行サービスを始めたきっかけ、思い

谷本さんが退職代行サービスを始めようとしたきっかけは、前職の接客サービス業での過酷な労働環境でした。

それは、1日20時間以上の強制労働であったり、月に一度も公休が取得できなかったり…。さらには店舗での泊まり込み、何十時間ものサービス残業などの過酷な環境だったと谷本さんは振り返ります。

このような環境だったため、谷本さんの同僚も次々と辞めていきました。この状況を目の当たりにして、世間には職場に関する悩みが蔓延しているのではないかと考えるようになり、接客サービス業を退職後、自らと同じように職場環境に悩みを持つ人をサポートしたいと思い退職代行サービスについて詳しく調べて起業することにしたのでした。

退職代行②
退職代行②

谷本さんが退職代行サービス事業を続けて行くなかで、社会に伝えたいことがあるといいます。

それは「退職代行サービスについては、賛否両論ある事業かもしれません。
しかし実際問題として、仕事を辞めたくても辞められない、言い出すことができないなどの現状に苦しんでいる方々から、もし退職代行を利用して自社へ連絡が来たとしたら『そのような環境を我が社が作り出してしまったのでは?』と一度考えてみてほしい」ということでした。

「すべてがその会社だけの責任だとはもちろん思ってはいませんが、少なからず会社側の労務関係を見直す足がかりとなれば…」と谷本さんは語ります。

退職代行サービスをおこなっていくうえでは、退職依頼の会社に電話連絡をした際、ガチャ切りをされたり罵詈雑言を浴びせられたりするときは大変だと感じることもあるそう。
しかし、依頼者から感謝の言葉をいただいたときが一番やりがいを感じると話していました。

感謝の手紙やプレゼントが事務所宛に届くこともあるそうです。

退職代行サービスの利用理由について

退職代行サービスを利用する理由には、人間関係、パワハラなどのハラスメント、労働環境や給料に不満があるということがほとんどだそう。

しかし、なかには驚愕の退職理由があり、谷本さんは衝撃を受けたといいます。

それはトリミングサロンに勤める依頼者からの話です。
お客様のワンちゃんに対して「こらお前」「いい加減にしろよ」などと暴言を吐き、ひどいときには暴力を振るっている社員がいました。
この社員を黙認し「それも技術のひとつだし、それで犬が大人しくなるんだったらいいんじゃない?」といった店長の発言…。その環境に耐えられなくなったと、依頼者は話したそうです。

大人しくなるためなら虐待してもいいという考え方、平気で虐待をしている現状や、容認している会社が実際に存在することに谷本さんはひどく衝撃を受けました。

依頼者の退職は無事確定しましたが、虐待されていたワンちゃんがいたことに痛ましく、かわいそうな気持ちになったと話します。

「退職代行モームリ」の依頼者が増えていることに関しては、ビジネスとしてはありがたいですが、あまり手放しで喜べることではないと感じていると話す谷本さん。
退職代行サービスを利用される方の特徴については、大きく分けると「自分から退職の申し出ができない方」「労務環境の過酷さにより退職ができない方」「ハラスメントなどにより、退職ができない方」になるといいます。
また、依頼者の共通点としては、精神的や肉体的に限界を迎えてしまっているような方々が多いそうです。

さらに社外の方からは、こんな反応があると話していました。
退職代行サービスについて話すと、8割程度の方が「ふーん」というようにあっさりとした様子。そしてもう1割は驚きはするものの「依頼者に寄り添った会社だね」という反応。さらに残りの1割では厳しい言葉を投げかけられ「その責任は依頼者や退職代行サービスにあるのでは?」と言われるそうです。

退職代行サービスモームリの今後

谷本さんが日本の社会人に向けて伝えたいことは、可能であれば長く働くに越したことはないということです。谷本さんは、新卒で入社した会社で10年間働きましたが、あのときの経験が、間違いなく今の自分を作っているといいます。
「当時は会社に対して不満も多かったですが、振り返ってみると本当に貴重な経験だと思っています」

退職代行③
退職代行③

一方で、日本にはたくさんのブラック企業が存在しているのも事実です。

そういった会社に入社してしまった際は「心身が壊れてしまう前に退職代行という最後の砦があるということを頭の片隅に入れておいていただければ…」と話していました。

また、今後のビジョンについては退職代行の認知を高め、あえて退職者を増やしていくそう。そして、そうすることにより企業に危機感を持ってもらう抑止力のような存在になりたいといいます。
その考え方には「一度日本の社会を壊して新たに作る」ことを目標としているそうです。

そしていつの日か退職代行がなくなったとしても、すでに始めている「セルフ退職ムリサポ!」といった、自身で退職をサポートするサービスに力を入れていきたいと話す谷本さん。

そういった先を見据えたサービスを展開し、ゆくゆくは仕事全般に関するサポートを行える会社になりたいと考えているそう。そう語る谷本さんからは、退職代行サービスを設立した思いや目的が充分に伝わってきました。

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