「腹部の痛みが治らない」その後、病が判明し…余命3ヶ月から自身の病と向き合い、闘い続ける原動力に迫る

「腹部の痛みが治らない」その後、病が判明し…余命3ヶ月から自身の病と向き合い、闘い続ける原動力に迫る
開腹手術後の傷跡(@takasushota)

ある日突然、自分の命に期限があると告げられたら…あなたは自分の未来に何を望みますか?

プロMMAファイター兼パーソナルスタジオA studio cliffの代表を務める高須将大(@takasushota)さん。MMAはMixed Martial Artsの省略で、打撃技だけでなく、投げ技、寝技、締め技、関節技などと技の幅が広い総合格闘技です。

高須さんは、相手から受けた攻撃ダメージの痛みが引かず病院を受診。

検査の結果ステージ4の肝臓がんだと医師から宣告されます。

これから活躍していくはずだった自分の未来に、命の期限を感じた高須さんは何を思い、病と戦ってきたのでしょうか。

ステージ4の肝臓がんを告げられたときから闘病中、現在までの思いを聞きました。

ステージ4の肝臓がんと宣告

高須さんは2013年20歳のときからMMA(総合格闘技)を始め、2017年3月にプロとして初勝利を納めます。

自身の身体に異変を感じたのは、それからわずか3ヶ月後のことでした。ファイターとして相手からの蹴りが腹部に入り、その痛みが引かず病院を受診。

そのころの高須さんは、溶接工として働きながら格闘技をしていたため、日頃の疲れは感じていても病気を疑うことはなかったといいます。

医師の触診で肋骨ではなく、腹部からの痛みであることがわかり、その日のうちに大学病院を紹介されます。詳しい検査の結果、肝臓に10センチの悪性腫瘍があることがわかりました。

ファイターとして、健康的な生活を心がけていたという高須さん。なぜ自分がこのような病に見舞われるのかと混乱し、とにかくショックだったといいます。

つい3ヶ月前にプロとしていい成績を納めたばかりだった高須さんは「もしかしたらすべてが終わるのかもしれない」という恐怖を感じました。

そして「死ぬまでにあと1試合は試合に出たい」「闘病しながらどのように練習時間を捻出するのか、試合を組んでもらうためにどうしたらいいか」と考えていたそうです。

開腹手術後…hota)
開腹手術後…hota)

抗がん剤の副作用との戦い

1度目の開腹手術を終えた2ヶ月後、残念ながら肝臓に再発がみつかり高須さんは抗がん剤治療を始めます。

主治医からも、セカンドオピニオンの医師からも厳しい見解を告げられて希望が持てない状況の中、抗がん剤治療の副作用が高須さんを襲います。

抗がん剤に対してのアレルギー反応で全身に赤い発疹が出たり、40度近い高熱が続いたりしました。手足症候群という症状により、足の裏の皮膚が硬くなり、歩くだけで痛みを伴ったといいます。

抗がん剤へ…hota)
抗がん剤へ…hota)

医師には強い副作用が出たら自分の意思で休薬してくださいと言われていましたが、それでも「治療をストップしたらがんが増悪してしまうのではないか」という不安から、高須さんは抗がん剤の服用を続けました。しかしその後、医師に副作用を見せるとすぐに休薬になったのでした。

高須さんを支えた家族の存在

高須さんは、主治医から「状況が厳しい」と伝えられ、治療の選択肢を増やすために複数の医師に診察してもらいました。

受診の度に高須さんに付き添った両親。どの医師の見解も明るくはない現実で、息子のことを思うとあふれる涙を母は隠していたようですが、息子の高須さんにはちゃんとわかっていました。

自分が原因で家族を悲しませていると感じ、申し訳ない気持ちに心を痛めていたと過去をふりかえります。

MMAファイターへの思い

ステージ4のがんであることを宣告され、自分の命に期限があると感じた高須さん。生涯の中で最後の一戦を戦うことで何かを残したいという思いから「もう一度だけリングに上がりたい」と強く望みます。

しかし治療を続ける中で、支えてくれる家族、応援してくれる友人、道場の仲間たちの存在を強く感じました。
「彼らのためにも、しっかり生きてリングに復帰しよう」と思いが変化したといいます。

支えてくれるすべての人に対する感謝の表れにより、死を意識した「最後の一戦」より「生きてリングに復帰する」ことを望むようになったのです。

抗がん剤治療を続ける中で、手足症候群による足の痛みとの闘いが一番大変だったといいます。

リハビリに…hota)
リハビリに…hota)

それでも足に何重にもテーピングを巻いてトレーニングを続けた高須さん。復帰戦では、みごと試合に勝利。その後も5連勝したのです。長い闘病生活を経てリングに戻ることができたこの瞬間は言葉に表せないほどの喜びを感じ、しっかりと高須さんの記憶に刻まれました。

試合を見ていた家族、友人、道場の仲間たちもみんな涙を流して喜んでいたといいます。
実は、闘病後に余命3ヶ月であったことを告げられた高須さん。そんな高須さんのつらい闘病生活やトレーニングの様子を知っているからこそ、支えた方たちにとっても、涙と思いが溢れた瞬間だったのでしょう。

トレーニン…より提供)
トレーニン…より提供)

SNSでの発信とこれから

自分の経験をSNSで発信し続ける高須さん。今は亡くなってしまわれた、あるがんサバイバーの方との出会いがきっかけとなりました。

その方が発信するSNSでの投稿や言葉に、表現できないほどの力をもらったと話す高須さん。
「自分も同じように他の人に希望を与える存在になりたい」その思いからSNSで自身の経験や、今を前向きに生きる姿を公開しています。

ブラジリア…より提供)
ブラジリア…より提供)

現在高須さんは、ファイターとしての活動はお休みし、ブラジリアン柔術という競技を中心に活動しています。先日行われたIBJJ主催のアジア大会では、みごと優勝を勝ち取りました。

休日は愛犬と一緒に遊んで過ごしているという高須さん。リラックスした様子で愛犬とたわむれる姿もSNSに投稿しています。

ステージ4の肝臓がんを宣告され、自分の命の限界を感じたとき、人は何を思うのでしょうか。自身の経験をリアルに語るとともに、今を強く生き挑戦し続ける高須さんの姿は、多くの人に勇気を与えてくれています。これからも高須さんの挑戦から、目が離せません。

愛犬との休…より提供)
愛犬との休…より提供)

出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「肝臓がん(肝細胞がん)について」
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/about.html

出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「皮膚と爪のトラブル」(2)手足症候群
https://ganjoho.jp/public/support/condition/skin_nail/ld01.html

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