障がいで身長139cm、”日本一小さい営業マン”のつらい過去 父の背中を追いかけ奮闘 #令和に働く

障がいで身長139cm、”日本一小さい営業マン”のつらい過去 父の背中を追いかけ奮闘 #令和に働く
日本一小さい営業マン(@businessman_kaitoさんより提供)

世の中にはさまざまな障がいによって困難と向き合いながらも、日々奮闘している人たちがいます。
先天性多発性関節拘縮症の営業マン、山﨑海斗さんは生まれつき障がいがあり、幼少期のいじめなどつらい経験を乗り越えてきました。いまは139cmという身長を活かし『日本一小さい営業マン』として、「より生きやすい世の中にしたい」との思いで発信を続けています。

生まれたときから向き合ってきた病気

先天性多発性関節拘縮症という障がいは、生まれつきあらゆる関節が固まっている病気です。山﨑さんの場合は肘や手首、膝や足首など多くの関節が曲がった状態で生まれてきました。
全身が丸まったような状態で生まれ、生まれてすぐは自発呼吸もできず、当時は命が危ないということですぐに大きな病院へ救急搬送されました。

また、この障がいは関節が固まるだけでなく、筋肉がつきにくい病気ともいわれているため、長距離の歩行は難しいといいます。
さらに、山﨑さんの場合は背骨が曲がる側弯症も併発しているため、腰など身体への負担が大きく、ケアをしっかりするようにしています。
重たい荷物を持つことが難しく、高いところに手が届かないこともあるため、買い物に行ったときに取りたい商品が取れない…ということもよくあります。

山﨑さんはこれまで、手術を12回、入院を20回以上経験しています。
一番つらかったのは、曲がった背骨をまっすぐに矯正するため背中に大きなボルトを2本入れる「側弯症」の手術で、入院期間は長く、金属のボルトによって毎日痛みを感じていました。

また、歩く練習や曲がった関節を伸ばすリハビリは大変で、痛くてよく泣いていたそうです。今も月1回リハビリをやっていますが、大人になっても声が出るほど痛いものだと言います。

いじめを受けたつらい過去

過去には、見た目が違うことでいじめもあったと告白しています。
中学1年生の頃から、障がいをもっていることで気持ち悪がられ、いじめを受けていました。いじめは次第にエスカレートしていき、あだ名を「カビ」とつけられて、何をするにも仲間外れにされたり給食のご飯をすべて混ぜられたりと…今でも思い出したくないほど、苦しい日々。

何もしていないのに、なぜ自分だけがいじめられなければいけないのか、それは障がいがあるからだと自分自身を責めてしまっていたといいます。
そして、学校に行くのが怖くてストレスになり、数ヶ月登校できない時期もあり「本当につらかった」と話してくれました。

父を追いかけ、自分の強みを見つける

営業④
営業④

そんな山﨑さんが営業の仕事を選んだのは、お父さんがきっかけでした。仕事から帰ってきたお父さんが楽しそうに「今月の営業成績が1位だった」「今日はこんなお客様に出会えた」などと話してくれていたことで興味が湧いたのです。
営業職は顧客先に訪問し、車の運転をしたり、納品時には重たい荷物を持つ機会があったりと肉体的にも精神的にも大変な仕事の一つ。そのため、両親からは反対されていました。
しかし、お父さんのように営業がしたいという夢を諦めきれませんでした。そこで、食品の電話営業を行う会社で働いて経験を積み、オフィス機器の訪問営業を行うお父さんの会社へ転職したのです。

入社したての頃は、ほかの先輩には簡単にできることが、自分の体ではこんなにもできないのかと痛感しました。
しかし、今では障がいの特性についてみんなが理解をしてくれていて、自分一人ではできない作業を先輩たちが手伝ってくれたり、訪問先に車で行くときは2人で行くようにしたりと、会社全体で工夫しフォローしてくれているといいます。
山﨑さんは「仲間たちには感謝の思いでいっぱい」と話しました。

営業⑤
営業⑤

障がいを「個性」と捉えたきっかけ

苦労も経験してきましたが、見た目を逆に強みと捉え、キャッチコピーにして活動するようになりました。きっかけは、高校時代にあります。

「中学時代はいじめで障がいをマイナスに考えていましたが、高校で友人から『海斗も変わっとるけど、俺も変わってるし別に気にしなくてよくない?みんな違ってみんないい』と言われ、障がいを個性と捉えられるようになりました」

そして、営業マンになりたいと思い始めたのも高校生からだといいます。
せっかくなら自分の個性である障がいを存分に活かし、たくさんの人に覚えられ愛される営業マンになりたいという思いから、キャッチコピーをつけました。

「日本一小さい営業マン」は山﨑さん自身がつけたキャッチコピー。
「愛着もありますし、名前だけでなくこの愛称で覚えていただけるお客様も多いので嬉しいです」と話す山﨑さん。
たまに「世界一小さい営業マン」と間違われることもあるそう。しかし「それはそれで嬉しいです(笑)」と話していました。

営業③
営業③

また「普通に名前だけでもいいのかもしれませんが、障がい者の営業マンが訪問すると、どうしても気を遣われると思うんです。なのでそんなときは自分から『僕は身長が139センチなので日本一小さい営業マンと覚えてください!』と伝えてアイスブレイクとして使ったりします」と話していました。

生きやすい世の中になるために…

山﨑さんは、講演やSNSでの発信も多く行っています。
活動を始めたきっかけについて「自分の障がいである『先天性多発性関節拘縮症』を含め、さまざまな障がいをもつ人がいるということを多くの方に知ってもらいたい」と教えてくれました。とくに小中学生、思春期を迎える子どもたちに向けて障がいや多様性について伝えていくことを大切にし、差別やいじめが少しでも解消されてほしいと願っているようです。

「障がいやコンプレックスをもつ方に、自分のようにつらい思いをしてほしくないですし、発信を続けていくことで自分自身が堂々と、生きやすい世の中にしていきたいという思いが強いです」

営業②
営業②

講演活動では、今後は活動の幅をもっと広げていきたいとのこと。
現在は福岡県内での活動がメインになっていますが、県外への講演も視野に入れて取り組んでいくことで、たくさんの方に「明るく・楽しく・ポジティブに」というモットーを伝えていきたいと語ってくれました。

さらに「いつかは自分の書籍を出版することを夢見て、日々全力で活動しています。営業マンとしては、営業の大先輩である父を越えることを目標としています。『日本一小さい営業マン』というキャッチコピーを武器にして一人前の営業マンとなり、一本立ちできるように頑張っていきたいと思います」と今後の目標について話していました。

今後も山﨑さんの思いが、多くの人たちに届くでしょう。

※この記事はほ・とせなNEWSとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

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