2023年に新型コロナウイルスによって倒産した”飲食店”の数は2022年と比べて1.7倍に上り、過去2番目に高い水準を記録している。飲食業界では顧客が集まらないと、給料を従業員に払えず、従業員のやりがいも奪われてしまう。
そんなコロナ禍でも、オンライン事業を通じて成長してきた会社がある。それは水戸亮太さんが代表を務める、株式会社INFLUだ。INFLUではLINEヤフー株式会社公認のLea(レア)というサービスを展開している。水戸さんは「倒産してしまう飲食店や小売業の危機を救いたい」という思いのもと、このサービスを展開し続けている。
Leaとはどのようなサービスなのか、事業展開における思いについて代表取締役である水戸さんに話を聞いた。
Lea事業ってなに…?
”Lea”はLINEヤフー株式会社が公認しており、LINEでネットショッピングができるサイトの構築をサポートする事業のことである。顧客はLINEアプリを通じて登録上の飲食店や小売業、サービス業などの事業者から気に入った商品を選択して決済することができる。
店舗を持っていない事業者の方もLeaを導入するなど、さまざまな形態で使われている。また、LINEと連動していることで、事業者側と顧客が1対1でやりとりを交わすこともでき、このコミュニケーションが顧客のニーズに応え、売上を伸ばすことに繋げられるのだ。
Leaのあり方について水戸さんは次のように話す。
「事業者の方が運用するだけではなく、利用者の希望があれば、弊社から積極的にLINEの使い方などもサポートしています。特に飲食店の経営を10年以上続けている方はパソコンに不慣れなところが前提となってしまっています。弊社が一緒に伴走し、最初のハードルを下げることで、注力したいところにサポートの手立てをより考えることができます。
また、事業者側から弊社に『このような機能が欲しい』『ここの部分を改善してほしい』という要望をいただくことで、Leaのよりよい利用にも繋がるため、そのような意味でもサポートは必要だと感じています」
実際に事業者側からは『アナログを使っていたときは漏れやミスなどが目立っていたが、Leaの導入によって業務の煩雑さを解消できた』や『お問合せ対応などの業務の効率化に繋がり、売上が伸びた』という嬉しい声が多く寄せられているのだとか。
水戸さんは、Leaがあることによって事業者による一方通行的な配信やセールスではなく、顧客とのコミュニケーションを活発にし、売上に繋がるような橋渡しをしていきたいと考えている。
水戸社長の考えの原点
そんな水戸さんもかつては飲食店経営者のうちの1人だった。大学在学中にアルバイト先の飲食店でバイトリーダーをしている中で、接客することや皆で売上を作っていくところに面白さを見出した。
「飲食店はサービス業のため、人と人のつながりやお客様に喜んでもらえることを大事にしなければならないということを学びました」と飲食業界を目指したきっかけについて話してくれた。
そして、水戸さんは親戚が25年も続けているお店で修業をすることになった。そこには20年もの間、通い続けている常連さんがいた。長い期間通ってくれる人がいるということは、ちゃんとお客様に喜んでもらえて、自分で提供したものを気に入ってもらえるからこその結果なのだと、衝撃を受けた。
自身が飲食店を経営するにあたって何をすべきかという学びを経て、10ヶ月の修業の末にお店を開くことに成功した。人を楽しませようという理念のもと、自分なりにメニューを試作したり、ビジネス立地であることを利用した企画を入れたりしてお店を盛り上げようとしていた。
しかし、わずか2年でお店を閉店することになってしまう。お店を立ち上げた当初からワンオペ営業であったことなど、さまざまな厳しさを痛感した。
廃業するときに悲しさはなかったと話す。
「お店をやめるってお客様にいつ伝えたらいいんだろう、とばかり考えていました。実際に閉店することは1ヶ月前に伝えたのですが、最後の1週間で常連さんが集まってくれたり、励ましてくれたりしました。お店はうまくいかなかったけれど、多くの人に支えてもらった実感をもつことができたと思います。また、この廃業したことが飲食店を経営する方に何か支援できることはないかと考えるきっかけになりました。それでたどり着いたのがLea事業でした」
再び挑戦…!
Lea事業を運営しているなか、再び水戸さんに飲食店を経営する機会が訪れる。それはコロナ禍によって、地元である大阪の心斎橋がゴーストタウン化してしまったことがきっかけだった。水戸さんがよく通っていたお店では、そこで働く従業員の方が「全然お客さんが来ないから給料も全然もらえないしどうしよう」と悩んでいたのだとか。
そこで水戸さんは自身が飲食店を経営するときに失業者の方を採用できないかと考えるようになった。この時点でWebを中心にLea事業を運営していた水戸さんは「働きたいのに働けない」という現場の声から、飲食店は大変な状況になっているのだと目の当たりにしたという。
そして、心斎橋で働きたいという思いをもつ方たちと盛り上げていきたいという考えから、水戸さんは自身のお店である焼肉「味来」に失業者の方を採用する方針を取り入れた。
実際に採用された方からは感謝の声が多く集まったという。
「飲食店に対しては労働時間が拘束されてしまうことや、休みを確保しづらいことからブラックなイメージがあると思います。しかし、うちでは労働時間を拘束せず、週2で休みを確保することで今も継続してやっていけているのかなと思います。また、前に働いてくれていた方がたまにお店に来てくれて、人と人のつながりができていることも焼肉屋を始めてよかったことです」と水戸さんは話す。
今後の思い
Leaにたどり着くまでに苦労したことについて水戸さんは
「一度飲食店を廃業したこともあり、特に経営を学んできたわけではなかったため、自分が失敗した身だからこそ次はないと思っていました。そのため、1人でスタートしようとしてそこから事業を伸ばすためにどのように新しくチャレンジしていくのか、安定するところまで過程を立てることに悩みました。会社を立ち上げた当時はSNSやインターネットに情報があるわけでもなかったため、あらゆる経営者さんの本を読み漁ることで経営者の大変さを知り、どう乗り越えていくのかについて考えていました」と話す。
そしてLeaに対する思いについて次のように語る。
「弊社と同じように経営者さんを支える会社はいくつもあります。しかし、1社ごとにフォローすることは手間やコストもかかるため、そこにチャレンジする会社はなかなかありません。また、フォローは必要ないと断られてしまうこともあり、そのような方への対応もしきれていない部分があります。僕たちもまだまだなところはありますが、過去に廃業したものの、現在も飲食店を経営していることはすごく強みだと考えています。
また、Leaのシステムを提供するだけではなく、実験店舗として自社経営している焼肉「味来」で成功した事例をLeaの利用者に提供できるようにしています。他の事業者さんの模範例になれるように経営全体をよくしていく実験体になれたらいいなと思います。
そして、自分自身は多くの人との出会いでLeaにたどり着くことができました。だからこそ、どんどん人を巻き込んで『Leaを使ったことで困ったことがなくなったよ』という声を増やすために、今やっていることをもっと広げていきたいです」
出典:帝国データバンク「『飲食店』倒産動向調査(2023年)」 https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240102.html