小さな子どもを連れての公共交通機関の利用は大変です。急に泣き出してしまったり騒いでしまったりと、親としては緊張するものでしょう。
今回は「子ども連れの飛行機で教えてもらったこと」についてのエピソードです。
イラスト:23ca
機内でぐずり出してしまった子ども
リョウコ(仮名)さんが、1歳半の息子さんを連れて飛行機で帰省したときのことです。旦那さんは仕事だったため、最寄りの空港まで送ってもらったリョウコさん。ベビーカーとスーツケースをカウンターで預かってもらい、息子さんを抱っこ紐に入れると、必要な物を詰め込んだマザーズバッグを持って機内に乗り込みました。
到着する空港では、実家の両親がチャイルドシートを準備して迎えに来てくれるというので、まったく不安のなかったリョウコさん。
しかし、それまでご機嫌で、CAさんにおもちゃをもらって楽しそうにしていた息子さんがぐずり始めてしまったのです。珍しい環境だったからうまく眠ることができず、どんどん不機嫌になっていてしまいました。
それほど混んでいる機内ではなかったものの、通路を挟んで反対側のビジネスマンはうるさくて眠れなかったのか舌打ち。リョウコさんは焦りながらも「すみません」と声をかけましたが、顔を背けられてしまいました。
どうしたらいいか悩みながらあやしていると、前の席に座っていた女性がシートの隙間からそっと覗き「お母さん、お子さんに飲ませる飲み物、何かお持ちかしら?」と声をかけてくれました。
リョウコさんは「すみません、うるさくして申し訳ないです」と言うと「全然うるさくないわよ。むしろ頑張ってておりこうさんじゃない?」と笑ってくれた女性。続けて「小さい子は、気圧が変化しても耳抜きがうまくできないじゃない?不快だったり耳の奥がムズムズしたり、痛いこともあるんですって。ときどき何か飲み物を飲ませると、そういう違和感が解消されるんですって」と教えてくれました。
リョウコさんは、教わったとおりに吸い口付きのマグでお茶を飲ませてみることに。すると、息子さんは少しずつ落ち着いて大人しく抱っこされるようになり、残りの2時間を穏やかに過ごせたのでした。
周りの人の知恵を参考に
このときの出来事について、リョウコさんに話を聞きました。
ー助けてもらったとき、相手に対してどう思いましたか?また、なんと伝えましたか?
狭いシートの隙間越しにそんなふうに声をかけていただいて、本当に有難かったです。さらに「もう少し大きくなったら、鼻をかむようにタオルを当ててちーんてしてあげると、もっと楽に気圧の調整ができるのよ」とも教えてくださって、その知恵はそれ以降の私と息子の空の旅にはなくてはならないものとなりました。そして何よりも「お母さん、大丈夫よ」と励ましていただいたことに、心から「ありがとうございました!」とお伝えしました。
ー相手の方とはその後何か会話をしましたか?その際、どのような会話をしたのか教えてください。
無事に着陸して降りたとき、そのおばさまは機内持ち込みのスーツケースをさっと取って立ち上がり、順番に通路に出てさらりと立ち去りました。そして、一瞬後ろを振り返って小さく手を振り「お気をつけていらしてね」と声をかけてくださいました。私は抱っこ紐を装着しているところで、慌てて「ありがとうございました!」と返すのが精一杯でしたが、颯爽と出口に向かうおばさまはかっこよかったです。
ー今回のような状況において、子育てならではの大変さを感じることを教えてください。
おもちゃや絵本など、子どものお気に入りの物や飲み物など、不測の事態に対する備えは十分にしているつもりでしたが、気圧の変化に敏感になって子どもがぐずる可能性があるとは予想を超えていました。調べてみたら、確かにいろいろとそういう情報がSNSなどにもありましたが、私は辿り着けていませんでした。実体験で我が子がそうなったこと、そしてお茶を飲んで改善したことはまるで魔法のようで、驚くとともにどこかに書き留めて誰かに知ってもらいたいと思いました。今回、途中でそういう知恵を授けてくださる方がいなかったら、周りにもっと迷惑をかけいていたと思いましたし、楽しい旅が辛いものだったろうな、と感じました。
ーこの体験を通して、何か意識していることや気持ちの変化などはありましたか?
公共交通機関を利用しての長距離移動には体調や持ち物に関して万全の体制を整えて臨むことがまず第一に大切ですが、こうした「不測の事態」もいろいろと起こります。そうした場合に柔軟に対応できるように、緊張しすぎずリラックスできる服装や靴で、搭乗前にかならずトイレに行き、慌てずにその時間を過ごせるように心がけています。
ーこの経験を誰かに話したことはありますか?
ママ友やSNSで繋がっているお友達に話しました。そこから飛行機に乗るときに「お茶を飲ませる」ことを実践してくれた人もいます。
ー子どもと一緒にいて困ったとき、周りにどういった対応をしてもらえると嬉しいと思いますか?
頑張って準備してその時間を乗り切れる努力をするので、どうか温かく見守り、そっと手を貸していただきたいと思います。ほとんどのお母さんたちは、何かあったら自分を責めてしまうけれど、どうしようもないときには誰かに助けてもらいたい、ときっと思っているはずですから。
ーこの経験を通して、同じような状況で悩む方にどのようなことを伝えたいですか?
さまざまな人が一定時間閉じ込められる飛行機や新幹線は緊張するでしょうが、そのときに自分ができる最善の準備をして、どうか楽しんでほしいと思います。事前に自分はトイレを済ませ、水分の摂取量を調整するなど、あれこれ大切なポイントはありますが、ネットにはたくさんの先輩ママたちが知恵を書き残してくれていますので、そういう部分も参考にすると、きっともっと楽しい旅になるでしょう。ママもお子さんも、どんどん経験を積んでいくことをお勧めします。
子どもとの旅行は、さまざまな準備をしていくものですが、それでも不測の事態は起こるものです。そんなときには、先輩ママたちの知恵を参考にしてみるとよさそうですね。
※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。