2023年4月に神奈川県にオープンした手話カフェ『Üd cafe -te to te-』。『Üd cafe -te to te-』は耳の聞こえない若者が働いています。
耳の聞こえない男子高校生の声がきっかけでオープンした手話カフェについて、今回店員の謳歌さん(@ud_cafe_te_to_te)、代表の北村仁さん、店長さんに話を聞きました。
「アルバイトができない」一人の高校生の声がきっかけだった
手話カフェの母体には、耳の聞こえない人でも参加できるダンススクール『UD DANCE SCHOOL』があり『Üd cafe -te to te-』ができたのは、耳の聞こえないダンススクールの生徒からの一言がきっかけでした。
当時そこに通っていた、高校生の男の子から「アルバイトに12回落ちている」と聞いた代表の北村さん。「ろう難聴の若者がアルバイトできる環境を作りたい」そう考えた北村さんは、人気YouTubeチャンネル『令和の虎』でプレゼンテーションを行いました。
プレゼンテーションの結果、200万の資金を獲得した北村さん。平塚の飲食店『二代目オニョン』さんの昼の時間を間借りし、手話カフェをオープンしました。現在は、耳の聞こえる方を含めた3名で営業中です。
カフェのオープンについて、当時のことを「間借り先を探すことが大変でした。従業員もアルバイト経験が少ない、もしくはしたことがない耳の聞こえない人が多い状態からのスタートでした。未経験から接客業を教えることは大変ですが、成長を見守れる楽しさもあります」と語ってくれた北村さん。
スタッフの謳歌さんは「人との接し方を学ぶことでコミュニケーション能力が伸びました。手話ができるスタッフがいることで困ったこと、分からないことがあったらすぐに話しかけられるし、居心地がいいです」と話します。働くことを通してたくさんのことを得たようですね。
また「手話ができる人がたくさんいると知ることができました。自分を必要としてくれる人がいることは嬉しいです。帰るときに『また来るね!』と手を振ってくれる心温かいお客さんがいてくれて、オープンしてから1年があっという間に感じました。今後もこの仕事を続けたいと思います」と仕事にやりがいも感じているようです。
店長さんは「このお店を通して色んな方々と出会い、素敵な縁ができました。お客様にとっても、同じ目的をもつ仲間を作る場になっていることがとても嬉しいです!」と人との縁について語ってくれました。
耳の聞こえない人以外にも来てほしい
現在カフェに来てくれているお客さんは耳の聞こえない方がほとんどなのだとか。
お客さんからは「すごく居心地がよく、温かい場所。耳の聞こえる方との交流もできるので、このような場所を増やしてほしい」「どのお客さんが来ても対応できるように(筆談ボードや指文字表を)準備しているのがとてもいい」「自分たちの居場所になった」「手話でみんなが1つになれている環境がとても嬉しい」などの声を寄せられることもあり、カフェは大事な場所になっているようです。
代表の北村さんはお店をアピールするうえで、透明化と親近感を大事にしているといいます。より多くの方に来店してもらえるようにInstagramやTiktokを通してお店やスタッフの雰囲気を発信。
また、親近感を持ってもらえるよう、スタッフにはお客さんに対して積極的に手話で話しかけるように伝えているのだとか。
「手話サークルや手話塾ではなく、もっとフランクに手話をしたい方、耳が聞こえない方と交流したい方や居場所を必要としている方がいます。そんな方々が来やすく、親しみやすいように告知や行動をしています」と語る北村さん。
働きやすい環境を作る
「障がいの有無を問わず合理的に働ける環境を整えることも大切です。しかし、今は令和の虎やクラウドファンディングなど、個人でも思いをカタチにできる方法があります。元からある環境に飛び込むのではなく、働きやすい環境を自分たちで作りに行く人が増えていくことが大切です。そのためのサポートもしたいと考えています」と北村さんは耳が聞こえない方の働き口を増やしたい思いについても話してくれました。
現在、北村さんは手話カフェを間借りから独立するためにクラウドファンディングを実施しました。(クラウドファンディングは2024年4月30日で終了しています)
「手話カフェを独立することで、より雇用を広げ、耳の聞こえる人、聞こえない人が自然に繋がるプラットフォームを作り、心も生活も豊かにできる場所を作ります。このプロジェクトを成功させて、ゆくゆくは全国にこのカフェを広げます。投資家、サポート企業、スポンサーを随時募集しています」と夢を語ってくれた北村さん。
手話カフェを全国に広げるため、日々活動している北村さんや謳歌さんたち。オープンまでの経緯は謳歌さんのInstagramでも確認できます。手話カフェの皆さんの取り組みについて、今後も期待ですね。