14歳で突然倒れ『脳幹部海綿状血管腫』と診断されたSHIBUKIさん。その後の後遺症として、顔面神経麻痺、右半身の運動障害・感覚障害、体幹障害、眼振、左耳の難聴、開口障害が残っている。
現在は結婚し2歳の双子の母であり、Instagram(@shibuki29)やYouTube、TikTok、講演などで自身の思いを発信しているSHIBUKIさん。
後遺症が現れてから間もない頃、自分らしくいることができず苦しんだという。多感な時期に後遺症が現れたことへの葛藤や当時の心境、また、それを乗り越え自分自身をSNSの場で発信するSHIBUKIさんについて話を聞いた。
ごく普通の女子中学生だったのに
突然学校で倒れ、その後、後遺症が残ってしまったSHIBUKIさん。14歳という多感な時期だからこそ多くの葛藤があった。
「前のようにみんなと遊べないことや、他人からの目が辛かったです。当たり前にできていた日常のことは介助があればできましたが、友達との時間がすべてなくなってしまいました。外に出れば色んな人からの視線を感じる。障がい者として見られることが当時は嫌で仕方なかったです。『病気になる前はごく普通の女子中学生だったのに…』と自分を受け入れられず、ずっと昔の自分と比べては泣いていました」
右側しか動かない顔を見られるのが嫌で、人前で話すことや何かを食べることも嫌だったSHIBUKIさん。
中学卒業後、1年間入院や通院をしたのちに高校へ入学。大学生になるまでは後遺症に対して前向きになることができず、高校生の頃も卒業までの間、何度も退学を考えたという。
そんなSHIBUKIさんが前向きになれたきっかけは、YouTubeなどで「幸せになる方法」「前向きになる方法」と検索しているときにたどり着いた鴨頭さんという方の動画だった。
「身体は生まれたときに借りたレンタル品なんだよ、いっぱい使ってあげないと可哀想じゃない。人生どう乗り越えるかじゃない、どう味わうかだ」など、動画で話していたことを聞き、前向きになることができたSHIBUKIさん。
「せっかく生きてるんだからもっといろんなことをして自分らしく生きよう」こんな風に考えられるようになった。
ありのままの自分を
SHIBUKIさんは現在、SNSや講演会などで自分の思いを伝える活動をしている。苦しい時期を乗り越えたからこそ、自分と同じようなことで悩んでいる人たちの力、光になりたいという思いがある。
講演などで思いを伝えるとき、SHIBUKIさんは自分が当時どう思ったか、考えたかというのを伝えることを意識しているという。
「自分のありのままを話して、ある人の1つの考え方と受け取ってもらえるようにしています。『こんな考え方もあるんだ!』とラフな感じで受け取って欲しいと思っています」
SHIBUKIさん自身のそのときの思いや考え方を共有することで、気づきを得る方もいるのではないだろうか。
さらに、SNSで発信するようになり顔面麻痺の人は意外と多くいると感じたのだとか。SHIBUKIさんの投稿が、同じような境遇の方の支えになっているのかもしれない。
自分の未来に「恋愛」は想像していなかった
2021年に結婚し、双子を出産したSHIBUKIさん。
旦那さんとの出会いは、後遺症が現れる前の中学生のとき。そのときは2、3回程度会ったことのある友人のような関係性だった。時が流れ、SHIBUKIさんが大学を卒業し、大学の友人と街に遊びに行ったときに現在の旦那さんと再会。一緒に遊んでいた友人と旦那さんがもともと友人だという共通点もあり、連絡先を交換して2人で会うように。そして交際に至った。
自分の未来に『恋愛』を想像していなかったSHIBUKIさん。男性からの視線が怖く、顔の左側を隠すために前髪を作っていたころもあった。高校生のころは、みんなと同じように恋愛をしたいと思っていても自信をなくし、SNSを見ては周りを羨ましく思っていた。
旦那さんと再会して、好きになってからの毎日が楽しく「恋愛って素敵だな」と思ったと話す。自分には経験できないと思っていたことを経験させてくれた旦那さんに感謝しているとのこと。
現在2歳の双子の子どもたちにとってのママは、生まれたときから同じ姿。
「『他のママと違う』など、今のところ何も言いません。目に貼っているラップを取ったら『私が貼るー!』と言ったり、スロープなどの坂道を歩くときは『ママ気をつけてねー』『ゆっくりねー!』などと言ったりしてくれます。2歳だけど何かわかってるのかなって、すごく感動しました」
SHIBUKIさんが活動を続けるにあたり、家を空けるときなどは、母親や旦那さんが双子を見ていてくれたり、旦那さんは家事を積極的に行ってくれたりと、みんなで協力しているようです。「とても助かってます!ありがたいです」とSHIBUKIさん。
子育てについては片方の身体が使えない状態だからこそ、子どもが新生児のときは抱っこをしたり、おむつを替えたり、お風呂に入れたりすることもできない状態だった。
「夜泣きが落ち着くまではお母さんに泊まり込みで来てもらっていました。旦那も仕事が終わって帰ってきて、毎日子どもをお風呂に入れてくれ、ほかにも子どものこと、家のことを一緒にしています。私は走り回る子どもを追いかけられないなど、基本1人だと子どものことは何もできません。旦那や周りの人に手伝ってもらいながら一緒にしています。私ができない分、旦那の負担も大きいですか協力しながら頑張っています!」と話してくれた。
光を届けたい
今後SHIBUKIさんは、もっと人前に出て、後遺症を気にせず自分が好きなことに挑戦する姿を見てもらいたいと話す。
先日は、ライブ配信をして上位のライバーが熊本で行われるTGCのランウェイを歩けるというイベントに参加した。昔からファッションが好きでモデルに憧れていたSHIBUKIさん。「歩きたい気持ちもあり、障がいを気にぜず、また、自分を恥じずに堂々とした姿を見てもらって勇気や光を届けたいと思いました!」とのこと。
これからも自分がやりたいことにどんどん挑戦していくと話すSHIBUKIさんの活躍に注目だ。
※この記事は、ほ・とせなNEWSとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。