障がいを抱える子どもを育てるのは簡単なことではありません。子ども一人ひとりによって抱える困難は異なるので、その子に合ったケアをしながら育てていく必要があります。
13歳のそう君は重症心身障がい児です。そう君のお母さん(@sou2010k)はInstagramで、そう君との日々の暮らしや役立つ情報などを発信しています。
今回投稿されたのは、リフトを導入した様子についてです。そう君の体重が38kgになり、日々介護するお母さんたちの身体への負担も増えたため1年前にリフト導入を決めたそうです。
リフトを導入したことにより、体の負担は軽減され、そう君もお気に入りになりました。今回は、そう君についてお母さんに話を聞きました。
そう君のもつ障がいについて
ーそう君は重症心身障がい児ということですが、どのような症状や障がいがあるのか教えてください。
そう君は、妊娠8ヶ月の時に「胎児期頭蓋内出血後水頭症」と診断されました。
その影響で、寝たきりで首も座っていません。そのほか、全盲(光も感じていない)、自閉症、知的障害、ウエスト症候群(てんかん)、側わんなどたくさんの障がいがあります。
移動はすべて子ども用車椅子(バギー)を使用し生活しています。
ー生まれる前から障がいがあるかもしれないとわかったときのお気持ちを教えてください。
障がいを持って生まれてくると分かったとき、受け止めきれず出産までの3ヶ月は同じ病気の人のブログを見たり、ネットで検索魔になったりと不安定な気持ちの中出産を迎えました。
そう君の顔を見るまで私に育てることなんてできないんじゃないかと思っていました。
ー障がいがあるということを乗り越えたきっかけがあれば教えてください。
帝王切開だったため会えたのは出産して3日目、NICUの保育器の中にいるそう君を一目見てなんて愛おしい存在なんだろうと思いました。
私は、障がいを受容できているかというと、はっきり受容しましたなんて言えるような強いお母さんではないのですが、辛いてんかん治療や全盲、自閉症、肢体不自由とたくさんの障がいを持ちながらも日々成長するこの子の姿を見て励まされ、前を向くことができました。
投稿のきっかけ
ーリフトの投稿など、バリアフリーのための情報やそう君との日常などを投稿をしようと思ったのはなぜでしょうか。
リフトを導入しようと思ったとき、いざ情報を集めようと思っても、福祉機器の情報がほとんどありませんでした。
そこで、ネットで情報発信されていた障がい児の住まいに詳しい工務店さんにお世話になることにしました。その際、実際に福祉機器などを使用されている写真が一番参考になりました。
私たちと同じように、導入したいけど情報がなく困ってる方のために情報発信を始めてみようと思ったのがきっかけです。
10年前に建てたバリアフリー住宅で生活している我が家で、福祉機器を使って生活するリアルな暮らしや障がい児との日常をたくさんの方に知っていただけたらと日々投稿をしています。
障がい児サークル「ケアマミ」について
ーお母さんは障がい児の家族のためのサークルの代表をされているそうですが、どのような活動をされているのでしょうか?
重症心身障がい児(者)障がい児(者)のママやご家族のためのサークル「ケアマミ」の代表をしています。活動内容は主にピアサポートを行っています。
毎月2回ケアマミcafe(茶話会)を開催していて、そのほか勉強会やイベントの企画開催を行っています。
ピアサポートとは、対等な関係同士の方と経験を伝えあったり気持ちを分かち合うことを言います。
ーサークルの代表を務めるまでの経緯を教えてください。
去年の3月から活動を始めたサークルですが、立ち上げたきっかけは現在3歳になる医療的ケア児を育てるママとの出会いでした。
現在副代表をしてくれているそのママとはSNSを通じて知り合いました。
そう君が通っていた療育施設に通っているとわかり連絡を取ったところ同じ町内に住んでいることが判明して、初めて会ったときに他のママと話す機会がないということを知りました。
私達が療育施設に通っていた時代は多い時は1日20人ほどのママたちが子どもと一緒に通園していましたが、現在は児童発達支援施設が増え、通園してもママ1人の日があるということを聞きました。他にも孤独な子育てをしてる方がいるかもしれないと、地域の中に障がいを持つ子どもを育てるご家族のための居場所作りをしようと立ち上げました。
まだ活動を始めて1年経っていないとのことですが、たくさんの方の協力もあり、ケアマミではフォト撮影会、福祉についての勉強会、就園就学についての講座、クリスマス会など多くの企画を開催しています。
そう君のサポートにあたって
ーそう君をサポートするうえで意識していることなどはありますか?
全盲で自閉症のそう君を子育てする中で意識していることは「情報を本人が理解できる方法で伝え、本人が考えながら暮らせる環境を作る」ことです。自閉症の方の支援の中で視覚支援が有効であることは一般的に知られていますが、そう君は全盲のため視覚支援ができません。
その代わりにやっているのが、実物を使った支援です。
小学2年生になる直前に自閉症と診断されましたが、そのときいろいろな参考書を取り寄せ、どの支援が合うか試行錯誤し辿り着いた支援方法を現在も行っています。
ー具体的にはどのような支援を行っているのでしょうか?
「見通しを持つと落ち着いて過ごせる」という特性がある自閉症の方は、写真や絵カードを使った支援をされている方多いのですが、それをそう君用にアレンジしました。触覚と聴覚を使った方法へ変更し支援しています。
「今日は学校で給食を食べた後にデイサービスへ行き帰宅するよ」と本人に実物を使ってお知らせしています。
初めはこの方法が有効なのかわからない状態でしたが、まずは1年間続けてみようと始めました。その後、年単位で落ち着いていき自傷やパニックがひどく家族みんなで疲弊していた頃と比べると現在は穏やかに笑顔で過ごせる時間が増えました。
ジェスチャー(手話などを参考にした独自のジェスチャー)を使い本人の意思を伝えてくれることも増え、本人が考えながら暮らしていることを実感しています。
今後チャレンジしたいこと
ー今後そう君との日常でチャレンジしてみたいことはありますか?
もっとコミュニケーションの幅を広げていけたらと考えています。ジェスチャーや発語でコミュニケーションをとっていますが、まだまだ私たちが思っている以上に本人の伝えたいことがあると感じています。VOCAなどを使用し、もっとコミュニケーションが取れるようになれば良いなと考えているところです
※VOCA(Voice Output Communication Aid:音声出力型コミュニケーションエイド)…言語に障がいがある方など、コミュニケーションが困難な方が使用する支援機器。
ーこれからの投稿ではどんなこと発信していきたいですか?
今までと変わらず我が家の日常をゆるーく投稿しつつ、障がい児との日々の暮らしの中で役立つ情報をお届けしたいと思っています。そして、あまり知られていない障がい児との暮らしをたくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。
情報があまりないという中、このように発信してもらうことで、多くの人が助かっていることでしょう。