新しい家族が生まれたとき、上のお子さんたちはわくわくした気持ちでいっぱいになることでしょう。
@lino.down_syndromeさんは、3人の男の子と1人の女の子、4人のお母さんです。Instagramでは、6人家族の日常やお子さんたちの様子を投稿しています。
現在2歳の梨乃ちゃんはダウン症です。今回投稿されたのは、梨乃ちゃんとお兄ちゃんたちが出会った日の様子でした。投稿には「笑顔が最高」「素敵な家族」などのコメントが寄せられていました。
4人のお子さんについて、@lino.down_syndromeさんに話を聞きました。
梨乃ちゃんの疾患について
ーお兄ちゃんたちに会う前に梨乃ちゃんは2ヶ月間入院されていたそうですが、どのようなことで入院していたのでしょうか?
ダウン症の子の多くには、先天性の疾患があります。臓器系で多いのは、心臓と消化器官です。
うちの子は『輪状膵による十二指腸狭窄』という膵臓の奇形によって十二指腸を挟み込んでしまう疾患でした。そのままにしておくと、栄養が摂取できずに亡くなってしまうものです。
出産する数日前に、お腹の中の子に、そういう疾患がある可能性はわかっていたのですが、すでにエコー検査などをするには大きすぎる週数だったため、生まれてすぐに検査をして、翌日には手術をしました。開腹手術だったこともあり、入院は2ヶ月になりました。
ーお兄ちゃんたちには梨乃ちゃんに会う前にダウン症だということを話していましたか?
話していました。隠すようなことではない、というのが夫婦の意見でした。
当時長男は年長、次男は年少、三男は1歳7ヶ月だったのですが、長男と次男の通う幼稚園にダウン症の子がいたので説明しやすかったです。その子がとてもムードメーカーで先生方にも大切にされていたことを子どもたちもよく覚えていて「へー。〇〇ちゃんと一緒なんだね!」「すっごく先生たちに可愛がられていたよ」と話していました。
子どもたちは「へー!そうなんだ!」という程度に受け止めてくれていました。三男は何もわかっていなかったと思いますが、物心ついた時には「梨乃はダウン症」だったので、長男次男同様、それについて特に何も思っていないと思います(笑)
梨乃ちゃんとお兄ちゃんたちの出会い
ー初めて会ったときのことを、上のお兄ちゃんなどは覚えているのでしょうか?このときのことを思い出として話し合ったりしていますか?
覚えてはいましたが、特に話したことはなかったです。今回リールをつくった時に「こんな感じだったんだよ〜」と見せると、みんなとても嬉しそうでした。長男はたまたま夏休みの作文にもその時のことを書いていたのですが、とても小さくて可愛いと思ったこと、会えるのが待ち遠しかったそうです。
ーこの投稿にはたくさんのコメントが寄せられていますが、どう思われましたか?
とてもあたたかく、嬉しい気持ちでいっぱいでした。会ったこともない方がほとんどですが、我が家の幸せを願ってくれている方がとても多く、本当に愛を感じました。
中にはお子さんを亡くされた経験のある方も数人いて、私にいただく温かいコメントの背景や奥行きに思いを馳せてしまって、こちらが涙してしまいました。
梨乃ちゃんとお兄ちゃんたちとの関係性
ーそれぞれのお兄ちゃんと梨乃ちゃんはどのような関係性でしょうか?
一言で言うと、梨乃はお兄ちゃんズに溺愛されています。それから治外法権も感じます(笑)お兄ちゃんズのルールは梨乃には適用されません。
ー2歳になった梨乃ちゃんは今どんなふうに成長していますか?
ダウンちゃんの中でも、特に成長がゆっくりでまだ体重は7kg台で歩きもハイハイもしません。しかし、真似っこが上手になったり「パパー」「(いないいない)ばぁ!」が言えるようになったりと、少しずつ成長しています。表情豊かで見ているだけで面白いです。
ありがたいことに、本当に周りの方々や、SNSを通してもあたたかい言葉をいただくことが多く、梨乃もそんな中で安心してゆっくり赤ちゃんをやっています。
現在の思い
ーダウン症であると発覚したときのことについても発信されていますが、そのときと比べて現在はどのような心境の変化がありますか?
生まれた時は時間を巻き戻せないか、受け入れたいのに受け入れられなくて苦しい…と絶望していましたが、おかげさまで『ダウン症で生まれてきてくれてありがとう』という気持ちになりました。
それは、我が子がダウン症でなければ一生気づくことのなかった自分の中の分離の意識に気づけたことや、障がい児の親になったことで見えてくることがいっぱいあったこと、世の中がこんなに優しく愛に溢れていることを心から実感できたこと、梨乃と一緒にいることで心から癒されること…たくさんの気付きがありました。
ダウン症のUPくんという子のパパさんが発信されていらっしゃるのを産後によく見ていたのですが、その時に「ダウン症児が生まれてきた時の自分に声をかけるなら、なんて声をかける?」という質問に対して、パパさんが「お前の人生は、ものすごく豊かになるぞ」と言っていたことがとても心に残っているのですが、本当にその通りだなと思います。
SNSを通して伝えたいこと
ーきょうだい児についてやダウン症について発信されていますが、どのようなことをSNSを通して伝えていきたいですか?
2つあります。
1つは、ダウン症児の子どもを生む(または生む予定)のお母さんたちの中には、すぐに受け入れられない方も私のようにたくさんいらっしゃるのですが、そういう人たちの『共感の場』になれたらと思います。
ダウン症の子を生んだ時に、どんな励ましの言葉よりも、どんな慰めの言葉よりも、同じように痛みを過去に感じたことがある友だちが寄り添ってくれたことが何よりも救いになりました。混乱の中にいて、受け入れたいのに拒絶してしまう。拒絶する自分に絶望する。だけど、どうしても受け入れ難い。そんなお母さんたちに「わかるよ、しんどいよね」という気持ちで発信しています。しんどい思いが、少しでも溶けたらな…と、烏滸がましくも思っています。
もう一つは『ダウンちゃんとの生活が面白い』ということを伝えられたらなと思います。
私も産後、楽しそうに過ごすダウンちゃん親子のInstagramに励まされたり、高嶋ちさ子さんとダウン症のお姉ちゃんとのやりとりを見て笑い、ラミレスさんちの温かい子育てにハートフルな気持ちになりました。私のアカウントも、そんなコンテンツの1つになれたらなと思います。
Instagramには、梨乃ちゃんとお兄ちゃんたちの幸せそうな暮らしが綴られています。梨乃ちゃんには頼もしいお兄ちゃんが3人。これからの4人の成長も楽しみですね。