「自閉スペクトラム症」は、対人関係が苦手・強いこだわりといった特徴をもつ発達障害の一つです。自閉症といっても人によってこだわりや苦手なことも異なります。
中村聖子(@dekoboko_mama)さんは、3人のお子さんを育てるシングルマザーです。末のお子さんは自閉症で重度知的障害をもっています。
中村さんはInstagram上で発達障害育児について投稿しています。
嬉しくなった言葉
今回投稿されたのは、息子さんが塩工房の塩釜の炎を見つめていたときの出来事です。
「何歳?」と聞かれても答えられない息子さんの代わりに中村さんが「7歳」と答えました。すると、それに対して初めて会った観光客の方は「この子は自然や感覚を味わうのが好きなのね」と声をかけました。
中村さんは、わかる人にはわかるんだなぁと嬉しくなったそうです。
発達障害育児のリアルについての発信
ー発達障害育児のリアルについて発信していこうと思ったきっかけはなんですか?
私自身がいちばん孤独で壮絶だと感じていた時期に、リアルな発信を求めていたからです。「私と同じような思いをしている人はいないのかな?」「いたとしたらどんな風に乗り越えているんだろう?」と、生の情報を知りたくてネットで検索しまくりました。今でこそリアルな情報発信は増えていますが、当時はあまり見つけられず、「私と同じように悩んでいる人がいるかもしれない」と思い、自分から発信してみようと思いました。
その他にも、「子どもの成長記録を残すため」と「子どもに関わってくださる方へ言葉だけで伝わらない様子をわかりやすく伝えるため」という理由から発信を続けているという中村さん。
子育てで困難なこと
ー中村さん自身HSS型HSPとありますが、子育てにおいてなにか困難に感じることなどはありましたか?
直感ですぐ行動に出るので積極的に見られがちなんですが、エネルギーの使い方が下手なので疲れすぎて動けなくなったりすることがよくありました。子どもたちにとって役に立ちそうな情報を集めて、片っ端から実践してくなど、自分よりも子ども優先になりすぎてしまい、身も心も疲弊していました。
ーどのように乗り越えたのでしょうか?
心の学びを通して自分を整えることの大切さを知り、まずは自分のコップを喜びや愛で満たすことを意識し始めたらずいぶん楽になってきました。乗り越えたというより、認めてうまく付き合えるようになってきた、という感じかもしれません。
息子さんの感じる力
ーこのときのように息子さんが座り込んでじっと見ているのにはなにか理由があるのでしょうか?
息子が見ているのは塩工房の塩釜の炎です。きっと炎の揺らぎや、木がパチパチと燃える音、温かさなど、いろんな感覚を全身で味わっているのだと思います。
ーこの観光客の方の言葉を聞いたとき、どう思われましたか?
純粋に嬉しかったです。「話ができない」と聞くと「かわいそう」と思われることが圧倒的に多かったのですが、あの観光客の方はとても温かいまなざしで、息子の感じる力を褒めてくださったように感じたので、心がほっこりしました。
前向きな発信
ー発達障害をもつお子さんを育てるうえで、今まで大きく悩んだことはどのようなことでしたか?
とにかく今まで「常識」だと思っていたことがまったく通用しないことです。世間一般的な考えに当てはめると、常識外れな言動が多いので、周りからの冷たい目線も言葉もたくさん浴びてきました。
ーどのようにして乗り越えられたのですか?
>「必要なことしか起こらない」「目の前に現れる人は自分の写し鏡」だということを知ってからは、何が起きても「このことから学べることは何?」と考えるようになり、自分を内観できるようになってきたので、周りのことが気にならなくなりました。そして、息子のことを枠にはめずに見られるようになりました。
ーほかにもいつも前向きな言葉で投稿をしていることが多いと感じました。発信していくうえで意識していることがあれば教えてください。
意識しているのはありのまま、リアルな日常をお伝えすることで、同じように悩んでいる方の口角が少しでも上がればいいなと思っています。また、専門家や国を動かすような大きな力を持った方にも見ていただき、発達障害の研究が進んだり、福祉サービスの充実につながってほしいという思いもあります。
ーSNSで発達障害育児のリアルを発信することで、育児や考え方、ユーザーとの交流などにおいて変化はありましたか?
はい。何事に対しても「いい、悪い」「正しい、正しくない」とジャッジする考え方を手放せつつあります。まだまだ未熟ではありますが、発信を始める前の私に比べると大きく変化してきています。
ー今後、息子さんやご家族で行ってみたい場所やチャレンジしたいことなどはありますか?
私は元々ひとり旅が大好きで、いろんなところを回ってきました。いつか、子どもたちと一緒に世界一周旅行をしながら、私の体験談を語って回る「旅するYouTuber」とか「旅する講演家」みたいなのが理想です。
中村さんの前向きな発信に助けられたという人は多いのではないでしょうか。子育てに悩みはつきもの。そんなときに同じような境遇の人の言葉が聞けるのは心強いですよね。