「コンディショニングをもっと広めたい」 大工の見習いから”アスレティックトレーナー”になった理由とは

「コンディショニングをもっと広めたい」 大工の見習いから”アスレティックトレーナー”になった理由とは

寒くなってくると体がこわばって、肩や腰に痛みを感じる人、多いんじゃないでしょうか。そんな方にぜひ知ってもらいたい「コンディショニング」について、アスレティックトレーナーの藤田敬さんにお話を聞きました。

ところで、みなさんは「コンディショニング」という言葉を知っていますか?
快適な日常生活を送るために行う「体の状態を整えるアクション」のことを言います。
マッサージで凝りをほぐしてもまた同じところが痛む。そんな方に必要なのはもしかしたらコンディショニングかもしれません。

コンディショニングは、まず体を知るところから

「コンディショニングではお客様が体をコントロールして動かせているか?をチェックします。きちんと体を動かすには“感覚の情報”が脳へインプットされていることが必須。感覚の情報とは体を触られている感覚、筋肉のストレッチされている感覚や、筋肉を使っている感覚、関節がどのようなポジションにあるかという感覚などで、これらの感覚情報をいろいろな姿勢で動かし、エクササイズしながらお客様の状態を診てアプローチ(脳へインプット)していきます。脳は適切に感覚情報がインプットされることで解析度高く自分の体を理解することができるんです。その結果、無意識でも体をうまくコントロールして動かせるようになるんですよ」と藤田さん。

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動きを見ながら呼吸が止まっていないか、肩が上がっていないか、背骨が反っていないか、無駄な力みが出ていないかなどをチェックするそう。もしそうなっていると体のコントロールができていないということなのだとか。

自宅でできるセルフコンディショニング

「例えば腰回りだったら、痛みが出ない範囲でしっかり動かす事が大切です。手指に比べて腰背部の感覚は鈍いため、しっかり動かさないと感覚情報のインプットが少なくなりやすいんです。さらに反り腰の人は仰向けで寝た時にも腰が床面と接触しないなど感覚が薄くなりやすいんですね。腰背部に感覚を入れるために次のやり方に挑戦してみてください。

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1) まずは太ももの前の筋肉や背中の筋肉をフォームローラーなどで緩めてストレッチをしましょう。
  →腰を丸めやすい状態を作ります。
2) 次に仰向けで膝を立て床に腰を押し付けるように丸めるエクササイズをします。
  →四つ這いや片膝立ち、立位など色々な姿勢で腰を丸めて動かしていきます。

この2ステップです!1日に数回、色々な姿勢、色々な場所で行うことで脳のネットワークに変化が出てきて腰痛の予防や改善に繋がりますよ」

意識して動かすことで脳にインプットができます。脳にインプットすることで、無意識のうちに快適に動けるようになります。ぜひトライしてみてくださいね。

アスレティックトレーナー藤田敬が生まれるまで

藤田さんは2013年に競泳日本代表チームにトレーナーとして帯同。その後、日本オリンピック委員会医科学強化スタッフとしてたくさんのスポーツ選手をサポートするなかで「コンディショニングはアスリートだけのものではない。もっとたくさんの人にコンディショニングの良さを伝えたい」と2017年、香川県丸亀市にコンディショニングスタジオNicoをオープン。2022年に2号店となる高松店を開業します。

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順風満帆にトレーナーの夢を叶えたのかと思いきや、決してそうではありませんでした。

「自分がやりたいことを掲げてここまできたのではなく、自分のなかの違和感に気づいたり、目の前の人をよくしたいという気持ちがここまで連れてきてくれた半生だったように思います」と。

その言葉どおり、藤田さんの経歴は異色。
代々大工の家系に生まれたこともあり、幼いころから漠然と大工になると思っていたといいます。
工業高校を出て大工の見習いを始めて3年経ったころ「自分のしたいことと何か違う」と違和感を持ちます。そして自分探しの旅に出るように、さまざまな場所で働く人に会いに行き、話を聞いたそう。

「たまたま不調改善のために訪れていた鍼灸で、鍼灸師の仕事に憧れを抱くようになりました。“自分が関わることで誰かが快適になっていくこと”に魅力を感じたんです。そして医療専門学校へと進学。社会人を経験してから学生になった私は周囲のみんなより出遅れているという焦りがあり、学生をしながらボランティアで経験を積ませてもらえる場所を探しました。それが母校の水泳部だったんです」

選手の筋肉疲労を取るマッサージを中心に経験を積んでいきます。そして専門学校を卒業後は鍼灸院に就職。就職してからも水泳選手へのサポートを続けていたところ、卒業生が大学生になると今度は大学側からも声がかかるようになりました。そしてこの頃、鍼灸院の患者さんと水泳選手に関わりながら、ターニングポイントに差し掛かります。

自分の技術には何かが足りない、根本的な改善のために必要なものとは

「患者さんにマッサージや鍼灸で痛みを取り除いてあげたはずが、また少ししたら痛みを訴えて来店される。何か足りないのではと思うようになりました。自分にとっての武器はマッサージと鍼灸。これでできるのは、からだを緩めること。ただ、それだけでは症状が戻ることが多いことを痛感し、もっと根本的な改善がしたいと思うようになったんです」

ちょうどその頃、あるアスレティックトレーナーと出会います。藤田さんは、これだ!と確信しました。
これまで行ってきた鍼灸とマッサージはコンディショニングの一部にすぎず、もう一歩踏み込んだ、動きのなかで体をコントロールしていくことが必要なのだと気づいたそう。
そこから必要な資格を取得した藤田さんは、その後東京オリンピックや世界選手権への帯同やスタジオ開業など、今の活躍につながっていきます。

固まったところを緩めて終わりではなく、動き続けられるように弱いところを強化し、体に効率的な動きを学習させていく。自分の体を自分でコントロールできるようになることがコンディショニング。

もっというと体の動きだけでなく、食事などもコンディショニングに欠かせない要素となるのだそう。ヨガやピラティスに続く新しいコンテンツとして、コンディショニングは今後注目されそうです。

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