もともと表舞台には興味がなかった
ミラノコレクションにも出演したみゅうさんだが、もともとは表舞台にまったく興味がなかったという。両足切断前、テレビの大道具さんや美術さんなど裏方の仕事に興味を持っていた。しかし、車いすの学生が入学した前例がないとのことで、行きたかった専門学校に行くことができなかった。
そんなある日、テレビの番組に呼ばれたときがあった。番組の裏方の仕事を見たいという思いで参加したみゅうさんであったが、自分が表舞台に立った時、どういう人が見ているんだろうと考えたという。
「内容としてはパラリンピック、パラスポーツを知ってもらうためのイベントを番組で開催していたのですが、見ている人に偏りがあると感じたんです。参加者は障がいを持っている方やそのご家族、福祉系の学生さんが多く、後日声かけてもらった方も同様で、見ている人のほとんどが当事者や障がい者を支援している方だったんです。
パラスポーツをもっと知ってもらうという趣旨だったのに、広まっていないのではと感じました。その時に、障がい者に接する機会がない方に向けて、作り手側ではなく、自分が発信していったほうが早いのではないかと思うようになりました」
車いすで生活することで、車いすユーザーとしての気づきや発見がある。そういった気づきを自身のSNSやアドバイザーとして活かすようになった。
誰かの背中を押すきっかけになれば
みゅうさんのSNSには、「勇気をもらっています」などのコメントが届くことが多い。両足を切断したことについて、一度もネガティブな感情を抱くことなく、前向きな発信をしているみゅうさんのマインドはどこからきているのだろうか。
「私はポジティブに生きようと考えて生きていないんです。自然とそう考えているだけ。知らないことを知るのは楽しいし、視野が広がることが嬉しいと思うタイプなんです。だから昔からやりたいことがいっぱいあって、考え込む時間がないんだと思います。ネガティブな気持ちになったり落ち込んでしまったりすることも少なからずありますが、そういうときこそやりたいこと楽しいことを考えるようにしています。落ち込んだ状態から普段の精神状態に戻したうえで、そのときのことを振り返るようにしています」
中には健常者から「逆に勇気をもらっています、すみません」とコメントをもらうこともあるという。しかし、みゅうさんはそういったコメントに対して「“すみません”はちょっと違うかなと思っていて…健常者と障がい者は関係なく、人それぞれ落ち込んでいるときとハッピーな時があると思います。そういうときはハッピーな人が落ち込んでいる人を助ければいいと思っているので、立場関係なく明日を生きる一押しができればと思っています」と話してくれた。
みゅうさんの発信を見たユーザーからは「卒業文集で書いていいですか?」や「福祉の勉強で作文に書いていいですか?」などのコメントが寄せられることもあり、自身の発信から生活に役立っていることに喜びを感じるという。
物事を前向きに捉えるみゅうさんだが、ネガティブな発信についても悪いことではないと話す。
「周りから見て私はポジティブに生きている印象があるんだと思います。けど私はポジティブ=えらいとは思っていなくて。ネガティブなことも悪いは思っていません。ネガティブな発信は、人に共感を与えたり、誰かの悩みに届くこともあると思います。だからどんな発信でも、誰かの背中を押すきっかけになるといいなと思っています」
両足を切断したことで考え方にも少し変化があったという。未来に対して「将来こうしたいな」と楽しみを抱いていたみゅうさん。そのときに苦痛なことがあっても、大人になったらできるようになればいいやと考えていた。
しかし、事故に遭ってからは、“今を充実させよう”と強く思ったという。
そんなみゅうさんに今後どんなことをしたいのか聞いた。
「海外で仕事をしてみたいです。今もミラノコレクションなどお仕事をする機会がありますが、行ったことがない海外に行って、知らない文化に触れてみたいです。あと、今年は本を出したけど、来年とかはドラマや映画とかに出てみたいです。今の仕事でいうと、もっと活動範囲を広げたいです。行っていない街や学校で講演会に出てみたいです。SNSで発信しているような動画だけでも、私の発信で後押しされている方がいるんですが、リアルだったらもっと多くのことを伝えられると思うんです」
やりたいことをたくさん話してくれたみゅうさん。今をとことん楽しむみゅうさんの挑戦は、今後も続いていく。