「母から認められたい」複雑な環境で育ち13歳で摂食障害に SNSでの発信を通しカウンセラーを目指す

「母から認められたい」複雑な環境で育ち13歳で摂食障害に SNSでの発信を通しカウンセラーを目指す
摂食障害を治すため、SNSで食べている様子を発信しているまなさん。(@kyoshokanoさんより提供)

「彼女はまなちゃん 157cm 34kg 心の病気で食べるのが苦手です」
ごはんを食べている様子をTik Tokに投稿しているまな(@kyoshokano)さん。まなさんは13歳の頃に摂食障害が発症し、現在も治療をしている。

まなさんのプロフィールには「目標40kg/現在31.5→34kg」と書かれており、同棲している彼氏と一緒に日々体重を増やすために食事トレーニングをしている。(2023年11月1日時点)

今回まなさんに、SNSで発信をはじめたきっかけや、今後の目標について聞いた。

摂食障害になったきっかけ

kyoshokano
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まなさんが摂食障害になったのは13歳の頃。幼い頃から家庭環境が複雑であり、父親が借金をし母親に暴力を振るうような家庭で育った。
両親が離婚し、父親が家を出ると母親と弟と3人で暮らすように。すると、今度は母親からまなさんへの暴力や暴言が始まった。
「なんで生まれてきたの?」と言われたこともあったという。

母親の機嫌を取るようにしていたまなさん。勉強ができたり、テストでいい点数を取ったりしたときに褒められることが多かったが、それ以上に褒められるのはまなさんの容姿についてだった。

「顔を褒められることが多くて、そういうときはお母さんがとても喜んでくれたんです。私にとっては褒めてもらえる、お母さんが誇りに思ってくれるこの顔が武器でした。」

周りからの勧めもあり、13歳の頃に芸能事務所へ。しかし、周りがオーディションで受かっていくなか、「早く認めてもらいたい!」という焦りからダイエットを始め、1ヶ月で10kg痩せてしまった。そこから十分な食事をとるのが難しくなってしまい、摂食障害になってしまった。

一人ではごはんを食べることができない

現在も治療を続けているまなさん。一人ではどうしてもごはんを食べることができないという。

「他人に頑張って食べているところを見てほしいんです。承認欲求が強いんだと思いますが、それが満たされないと自分が崩れてしまいそうになります。彼がどんなに疲れていても、喧嘩になっても見てほしいんです。彼は病気について理解をしてくれているので、毎回『えらい、えらい』と褒めてくれます。スルーしてしまうと私の体調やメンタルが崩れてしまうのを知っているので。」

kyoshokano
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まなさんが一人のときや仕事のときは、食べているところを動画で録ったり、食べたパンやおにぎりの包装袋を持って帰って帰宅後に彼に見せている。“ちゃんと食べたよ!”という証拠として見せているようだ。

彼に病気を告白したのは同棲を始めてから半年後だった

2023年6月から治療記録として投稿を始めたまなさん。始めたのは彼からの提案だった。

彼に摂食障害であると伝えたのは今年の春、同棲を始めて半年経った頃だった。彼が飲み会や遊びに行くたびに「何を食べたの?行かないで」と制限をかけていたまなさん。まなさんの言動を不審に思った彼と話し合いをし、まなさん自身嘘をつきたくないという思いで摂食障害について告白した。

摂食障害について告白すると、彼は安心した様子だったという。

「“(原因がわかって)よかった!不可解だと思った言動も病気だったら仕方ないね。それはまなちゃんじゃないもんね。病気なら治るもんね”と話してくれました。」

そこから病気について理解したいという彼からの提案でSNSでの投稿を始めることに。「これがいい思い出になったらいいね」という意味で、成長日記という感覚で始めた。まなさん自身SNSでの発信に抵抗はなかったという。

「病気のことを恥ずかしいと思うのはやめようと思っていたんです。病気でも堂々と生きているのは悪いことではないし、自分は絶対治ると思っていました。」

kyoshokano
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まなさん自身もまなさんの彼も前向きな様子が伝わってくる。動画の撮影、編集も病気に理解がある彼がしてくれている。

始めた当初は停滞期で1日1食ほどしか食べることができなかった。しかし、“変わりたい”という強い気持ちがあり、頑張れたという。さらに、自分が発信側になったことで、フォロワーとの繋がりが増え、「世界って広いな」と感じたという。「自分ばっかり苦しいんじゃなくて、他にも苦しい人はいるんだなと感じました。支えてくれる彼や、応援してくれる方もいて、自分は恵まれているなと思いました」とまなさんは話す。

まなさんの投稿には毎回たくさんのコメントが寄せられている。体重が増えたことについて一緒に喜ぶ声や、励みになっているなどの声が集まっている。

「どんなコメントも嬉しいですが、『この投稿を見たから頑張れました』や、『これを食べたよ』など、同じ境遇の方からコメントをもらうことが嬉しいです。フォロワーさんたちのポジティブな気持ちに貢献できたと実感できるので」と話してくれた。

将来は寄り添えるカウンセラーに

kyoshokano
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現在のSNSでの発信も将来の夢と結びついているという。まなさんは将来カウンセラーになりたいと話してくれた。

まなさん自身カウンセリングに通っていたことがあったがなかなか続かなかった。もともと勉強することが好きで、カウンセリングについて勉強をしているまなさんは、カウンセリングを受けても「そんなの教科書に書いてあるよ!それができないから困ってるんだよ!」と思うことがあったという。

当事者だからこそ、「まなちゃんの話を聞きたい」「見守ってほしい」と言われるような存在になりたいと話すまなさんは、ライブ配信がないときは、DMでお悩み相談の返信をしているという。カウンセラーに向けて現在も仕事前に毎朝勉強している。

最後に、同じように摂食障害に悩む方にどのような言葉をかけたいかを聞いた。

「摂食障害は頑張り屋さんだからこそなっちゃう病気。とにかくすごい辛いのはわかります。食べないという生きる本能に抗っていることをしているので。でも、“辛い”とわかっていることだけでもすごいと思います。辛いのに治そうと思っていることは一歩踏み出せていることだから素敵だと思う。きっとよくなるから、私ができることはなんでもしたいです。生きててくれてありがとう。私も治療途中だから一緒に頑張っていきたいです。」

病気を治すため、カウンセラーになるため、前向きに努力を重ねるまなさん。彼女の発信は、今もどこかで悩んでいる人の励みになっているだろう。

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