2023年8月12日~15日(15日は中止)に阿波踊りが開催された。JICA四国は、徳島県国際交流協会から招待枠を頂き、8月14日、研修員6名とJICA四国センター職員5名の計11名が阿波踊りに参加した。
(JICAの「研修員」とは、JICAの実施する技術協力の一環として、開発途上国政府からの要請に基づき、日本で専門的な技術を学ぶために来日し、将来国造りを担うリーダーになることが期待されている。研修内容は多岐にわたる。)
徳島県の伝統文化である阿波踊りは、一年の中で徳島県が一番賑わう行事である。阿波踊りを踊る団体のことを“連”と呼び、私たちが所属した連は“あらそわ連”という名前であった。
本番に向け、皆で汗を流しながら毎週練習に励んだ。JICA研修員以外にも、多国籍の方が多く所属する連ということもあり、英語や中国語、ポルトガル語などが飛び交う中、日本語を使いながらコミュニケーションをとっている外国人の姿もあった。
連名である“あらそわれん(連)”は、徳島の方言で“あらそわない“という意味で、”世界は1つだからあらそわない“という意味が連名に込められている。
今回参加した研修員6名のうち4名は、鳴門教育大学へ通い教育関係の勉強をし、2名は徳島大学にて歯科関係の勉強をしている研修員とバイオ複合材料の調査研究をしている研修員だ。
それぞれの出身国は、パプアニューギニア1名、ブラジル2名、エルサルバドル1名、ニカラグア1名、フィジー1名であった。
彼らは地域理解促進のために阿波踊りに初めて参加することになったのだが、 “阿波踊り”や“あらそわ連”についてどのように感じたのだろう。話を伺った。
左から、ヘラルさん(ニカラグア)、マラさん(パプアニューギニア)、エイジさん(ブラジル)、カミラさん(ブラジル)リナさん(フィジー)、ウェンディーさん(エルサルバドル)
“なぜ、あらそわ連に参加しようと思ったのか”
・去年踊りを見にいったときに私も踊ってみたいと感じた。阿波踊りに参加できる機会を待っていた。(ヘラルさん)
・毎日夜になると音が聞こえ、練習をする人の姿を沢山見ていた。この話があった時、是非参加してみたいと思った。(エイジさん)
・徳島県の伝統文化を体験し、言葉や出身国にかかわらず皆で一緒に踊ってみたかった。(リナさん)
“一番印象に残っていることは何か”
・練習初日初めて下駄をもらった時。とても感動した。今まで使用したことがなく、この下駄を履いてつま先立ちで踊るのかと不安もあったが、とても上手に踊ることができた。(ウェンディーさん)
・本番は大雨の中だったが全員がとても楽しそうに幸せそうに阿波踊りを踊っていた。人生においてとてもいい経験になった。(エイジさん)
・あらそわ連で多文化の人が集まり一緒に踊れたこと。阿波踊りは世界を超え人と人とをつなぐ踊りだと感じた。(ヘラルさん)
『世界は1つあらそわれん』という掛け声についてどう思うか
・とても好きだ。世界の人々にとってとても大切なメッセージだ。(ヘラルさん)
・世界の平和や団結のメッセージを広げる役割を全うでき、特別な時間であった。(マラさん)
・世界の人たちのことを分かろうとする気持ちは、自分を柔軟な人間にしてくれると思う。自分にとっても相手にとっても大切なこと。(ウェンディーさん)
・私たちには人生は一度しかない。喜びをもって生きることがとても大切。この掛け声は、完璧だ。(カミラさん)
・この掛け声から、一体感、安心感、平和、団結、思いやりを感じた。支え合いながら掛け声を出すこともできた。(リナさん)
・この掛け声の通りの世界になってほしい。(エイジさん)
“徳島の文化や阿波踊りについての感想”
・徳島県に住む外国人の思い出の一つ一つになっている。とても素晴らしい文化だ。(カミラさん)
・伝統文化に参加してとても幸せだったし、自分に自信が持てた。この経験を、母国の人にも伝えていきたい。(ヘラルさん)
・私は世界の一員、あらそわ連の一員。とてもとても楽しかった。(マラさん)
彼らは、このイベントで徳島に住む在住外国人と一緒に徳島の伝統文化に参加した。
徳島のことを知る機会になったのと同時に世界の人たちと交流する機会にもなった。
練習も本番もずっと一緒に行動し、同じ衣装に身を包み掛け声では一緒に大きい声を出した。どこで生まれたか、どこで育ったかなんて関係ない。世界をつなげる阿波踊りがまさにあらそわ連で実現していたのではないだろうか。これから、まだまだ長い人生。彼らは沢山の人と分け隔てなく関わり、人生を謳歌するであろう。これからもっと世界中で彼らのような人が増えていくことに期待だ。