「うんうん」がゴーサイン
開発チームの7人は早速、会議室に集まって試食した。同社では営業部門の発言力が大きいといい、営業メンバーが頷かない限り、商品化はされない。
何度もダメ出しを受けた二宮さんだったが、この日はメンバーが「うんうん」と頷きながら食べ進めた。特別なコメントはなかったが、表情が「オッケー」と伝えていた。記念商品として発売が決まった瞬間だった。
「ホッとしたというよりは、逆に気持ちが引き締まる思いでした」と二宮さん。パッケージは金ちゃんヌードルと同じレトロな雰囲気でまとめ、お湯切り用のフタは「お客さまに感謝を伝えるため」(二宮さん)、コストよりも使いやすさを重視して選んだという。
「一般的な焼そばは麺の歯切れが良いのですが、弾力のある食感に仕上げました。『普通の焼そばじゃないんだよ』ということが、食べた人に伝われば」と二宮さんは話した。
実際に食べたファンからは、「しっかりした味わいで、麺が太めで、気に入っています」「期待通りで大満足」などの声がSNSに届いた。50周年にあたる2023年の限定商品として展開する予定だ。
すだちの追加で爽やかに
焼そばのもとになった「金ちゃんヌードル」は、1973年6月に発売。カップヌードル(日清食品)が1971年9月に日本初のカップ麺として発売されており、カップ麺の歴史でも古参の部類に入る。
もともと製粉業を営んでいた徳島製粉が、小麦粉の消費拡大を狙って即席ラーメンを開発したのが始まりだ。当時は社員5人がリヤカーを引いて、近所の小学校に商品を配布して認知度アップに努めたという。
二宮さんは「私が子どもの頃から、金ちゃんヌードルは身近なところにありました」と振り返った。西日本エリアを中心に「金ちゃんヌードル」の人気は根強い。
二宮さんら開発チームに、「オススメの食べ方」を聞いた。まずオリジナルの味で食べ進め、途中で徳島名産のすだちを絞ってかけると、さっぱりした味わいが楽しめるという。
「徳島の人は何にでもすだちをかけると言われますが」と二宮さんは笑顔。社内では他に、マヨネーズ、キムチ、ネギを追加する食べ方も人気だと教えてくれた。
筆者も近所のスーパーで見つけた「金ちゃんヌードル味焼そば」を食べてみた。お湯を注いで3分。麺をすすると、ふわふわした食感で、色とりどりの5種類のトッピングのためか豪華な印象を受けた。「あっさり醤油味」のコピーどおりで濃すぎず、さっぱりと食べられた。
50歳の節目に、カップ麺から焼そばに姿を変えた「金ちゃんヌードル」。同社がヌードルと焼そばの食べ比べイベントを開いたところ、「焼そばが、やや優勢」だったという。皆さんは、どちらに軍配を上げますか。