200軒→25軒まで減少した練り物屋 「祖父の味を食べてほしい」吉祥寺の老舗店の挑戦

200軒→25軒まで減少した練り物屋 「祖父の味を食べてほしい」吉祥寺の老舗店の挑戦
塚田水産三代目 塚田亮社長(塚田水産より提供)

近年、練り物業界の衰退が著しい中、かつて東京に200軒近く存在した練り物屋の数はわずか25軒にまで減少しました。職人の寿命が店舗の存続に密接に関わるほどの厳しい状況に直面しています。しかし、そんな中でも創業から77年を迎える老舗練り物屋が吉祥寺に存在します。

JR吉祥寺駅から徒歩2分程度、商店街「ダイヤ街」の老舗が並ぶ一角にある「塚田水産」です。

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2004年に事業継承し、魚屋からさつま揚げ屋に転身した塚田水産の3代目塚田亮さん。塚田さん考案の「吉祥寺揚げ」がヒットし、累計100万個の販売を突破。吉祥寺揚げは、地域の名物として愛される存在となっています。

今回、練り物に対する思いや塚田水産について、3代目の塚田亮さんにお話をお伺いしました。

衰退する練り物業界

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近年、練り物業界は衰退しており、経済的な厳しさと後継者不足が課題となっています。塚田さんは、「職人が少なくなっているのというのが1つの要因」と考え、同じ業界として残念に感じたそうです。

大手も参入しているものの、設備投資としても難しく、引き継ぐ若者も少ないのが現状です。街の豆腐やさんなど、小さい店舗でやっているところが多いものの、子息たちに教えながら二人三脚でやっていく収益性が少ないのも要因とされています。

突然の事業継承に…

そんな中、2004年に突然2代目から事業継承を告げられます。引き継いだ時、店は赤字経営でした。その時の気持ちを「一緒に働きながらだったので聞かされたときは衝撃的だった。繁忙期は毎年のように変わらず売れていたので…」と話してくれました。

その後塚田さんは、練り物業界が衰退している実情を実感し、新たな挑戦の好機だと感じ、魚屋を閉めて未経験のさつま揚げ屋への転身を決断します。

その日を境に一から勉強の日々を過ごし、現在では事業規模を拡大されました。仕入れの見直し、人員整理を行い、その後お客様をどう増やすかを考えて、百貨店の催事を事業とし経営状態も安定してきたのです。

地域の名物・吉祥寺揚げ

そんな日々の中で、3代目の塚田さんが考案したものの一つが「吉祥寺揚げ」です。

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当時のお客様の層が年配の方が多かったため、若い人にも食べてもらい年を取ってからも戻ってきてほしい、という思いから誕生しました。 昨年はトータルで100万個の売り上げを達成。普段の土日は5~600個、平日は300個売れている人気商品です。しかし塚田さんは「佐藤さんのメンチカツ屋が3,000個ほど売れているのでまだまだです(笑)」と話してくれました。

また、最近では職人の技術を活かしたオーダーメイドさつま揚げの販売も開始しました。オーダーメイドさつま揚げとは、普段は決まった具材が入ってるさつま揚げを、好きな具材を入れて作ることができるものです。予約必須ですが、 贈答用として誕生日、母の日などで利用される方が多い商品です。

オーダーメイドさつま揚げの価格は、12個入り4,860円(税込)、ギフト包装ありでは10個入り4,860円(税込)。送料はどちらも1100円(離島+500円)で販売されています。

練り物の魅力を伝え続けたい

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最後に、お店や商品に対する想いを伺うと、塚田さんは「900年前から始まった練り物文化。他の店は少なくなってしまったが、みなさまの食卓に必要なものだと思っています。100年を目指して続けていきたい」と話してくれました。

今の時期、おすすめのさつま揚げは「武蔵野市の農家が作ったとうもろこし揚げ」とのことです。塚田さんが思いを込めたさつま揚げは、今日も地域の人たちの食卓に届けられています。

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