脳性まひで思うように体や手を動かすことができない女の子が、自分のそばに寄ってくる犬をなでている動画がInstagramに投稿され、40万回以上再生されるなど話題になっています。女の子の名前は弥琴(みこと)ちゃん。寄り添っているのは犬のノエちゃんです。この動画を投稿したchiiiro457さんに話を聞きました。chiiiro457さんの家には10歳と8歳の子どもと末っ子で5歳の弥琴ちゃんがいます。ノエちゃんは、家族ぐるみで付き合いのある友達が連れてくるワンちゃんです。
弥琴ちゃんは、生後2日目に血液が全身に回っていないことが判明し、その影響で脳性まひになり肢体不自由になりました。また何度も心臓の手術をすることで、呼吸が出来にくくなり、気管切開をして医療的ケアが必要な状態になったそうです。その後検査で染色体異常(22q11.2欠失症候群 )があり、心臓の病気はそのことが原因であることが分かりました。
今は、重度の知的障害と肢体不自由が重複している重症心身障害児で寝たきりの状態です。看護師でなければ医療的ケアが行えないため、普段は、重症心身障害児が通う児童発達支援施設に通っています。
弥琴ちゃんはもともと、音や声にすごく敏感で、犬の「ワン!」と吠える声や、息遣いが苦手だったそう。車いすですれ違う時にも怖がっていたと話します。そのため友達も、最初はノエちゃんを家に置いて遊びに来ていたそうですが、ある日、親同士が立ち合いながら弥琴ちゃんとノエちゃんを会わせてみることに。やはり弥琴ちゃんは泣いてしまいましたが、chiiiro457さんは、ノエちゃんがすごく優しい犬で、弥琴ちゃんに噛んだり吠えたりする事がないと分かっていました。そこで弥琴ちゃんとノエちゃんの距離を保ちながらどう関わるかを見守ってみることにしました。
「ノエちゃんは、すぐに近づくんじゃなくて、遠くの方に座ってジッと弥琴を見ていました。弥琴が泣かないのを分かって、ゆっくり近づいていきました。ノエちゃんの距離をとってゆっくり近づいてくる様子を見て、弥琴は『この子は大丈夫なんだ』と思ったのか、ノエちゃんが横にピトッとくっついてもニコ―っとしていました」
ノエちゃんは、始めは弥琴ちゃんのただ隣に居ただけだったそう。何度か会ううちに、弥琴ちゃんの手をペロペロしたり、足をツンツンしてみたり、弥琴ちゃんがどこまでなら大丈夫なのかを分かったように行動してくれたそうです。ノエちゃんと出会って、1年ちょっと、今ではすごく仲の良い関係になっています。
弥琴ちゃんは、布団の上にゴロンと寝かせてもらったら、自分では動けないという状態です。手は動かないということもないそうなのですが、掴もうとしたら掴めず、意志通りにはいかないそうです。
「おもちゃや音のなる物を出しても、こちらは見るけど触ろうとはしないんです。ノエちゃんはふわふわで温かくて柔らかくて、大好きだから触りたいと思うのか、一生懸命ヨシヨシしたいという意思をとても感じます。1回や2回じゃなくて、来てくれる度にそんな感じなので、きっと大好きなノエちゃんのことを自分なりに一生懸命動かして触りたいんだろうなと思っていつも微笑ましく見ています。ノエちゃんが来てくれるとリハビリもニコニコでしてくれます。ノエちゃんがいるといつもよりもうつぶせで長い時間ニコニコでいてくれる。そばにいてくれる力の大きさを感じます」
一方、ノエちゃんも弥琴ちゃんの家に遊びに行くと一目散に弥琴ちゃんの横に行きます。Instagramには弥琴ちゃんにちょっかいを出そうとする人から守ろうとするノエちゃんの様子が投稿されています。そんな2人を見て、ノエちゃんの飼い主さんは「ノエも幸せそうやわー」と言っているそう。ノエちゃんと仲良くなってから弥琴ちゃんは犬が怖くなくなったそうです。
「知らなかった世界をいっぱい教えてくれる存在なので娘からいっぱい幸せもらっています」
chiiiro457さんは、そう話してくれました。
「可愛くって心が洗われました」「ほんとうにステキすぎて、幸せが溢れていて、涙が出ました」「見ているとこちらも優しい気持ちになります」などと、この2人を見ると感動するとの声がたくさん集まっています。
“ノエちゃんをかわいがりたい”“弥琴ちゃんを守りたい”2人の思いが通じ合い、そこは居心地の良い空間になっています。そしてそれを見ている人も温かくなる…そんな2人の様子でした。