香川県は「うどん県」との通称を県が自ら名乗るほど、名物の“讃岐うどん”のイメージが定着。県外から訪れて何軒も店を巡る“うどん巡礼(うどん店巡り)”は、もはや観光の定番となっています。
令和2年に香川県が実施した調査によると、県への来訪客の半分近くが“讃岐うどんの食べ歩き目的”なのだとか。
しかし香川県内には500以上もうどん店があり、「どのお店に行けばいいの?」という悩みはつきもの。そんな時は、「うどんタクシー」を貸し切って、地元情報を知り尽くしたドライバーにお任せしてみてはいかがでしょうか。
今回は、ベテランドライバー・笠井康博さんの運転する「うどんタクシー」に乗り込みお勧めのうどん店を巡りながら、うどんタクシーの楽しみ方をはじめ、うどんタクシードライバーへの道についても取材しました。
ドライバーは「うどん食べ歩きのベテラン」
事前予約でドライバーごとに車両を貸し切る営業スタイルは、通常の観光タクシーと同様。しかし「うどんタクシー」は、運転手がその地域のうどん店情報・観光情報に驚くほど詳しく、客の好みに合わせながら店選び・観光案内などを行っています。
金運・縁結びなどのご利益で知られる「金刀比羅宮」に程近いJR琴平駅には、朝の8時から2台の「うどんタクシー」が並んでいます。笠井さんと同僚のベテランドライバー・瀬戸さんは既に「あそこのお店は朝4時から開いている」「○○うどんは最近美味しくなった」などと、情報の交換に余念がないようです。
さっそく笠井さんの運転するタクシーで、5kmほど先にあるお勧めのうどん店・宮川製麺所(香川県善通寺市)へ。この周辺は国道からそれると狭い道路も多く、自分の運転で店舗に向かうと「引き返せない細道に入り込んだ」「カーナビにクルマが通れない道を案内された」などということもあります。
しかし通常のタクシーでの乗務経験も豊富な笠井さんに任せれば、その道中は快適そのもの。また道すがらでも街の歴史、これから行く店の情報などを案内してくれるため、飽きることがありません。
クルマだとちょっと迷う?地元仕様の名店「宮川」へ
琴平駅から15分ほどで、お勧めの「宮川製麺所」に到着。業務用でうどん玉を卸している店にイートインを併設した「製麺所併設タイプ」の店で、地元の常連から、カーナビで何とかたどり着いた観光客まで、店内は朝から幅広い客層でいっぱいです。
その中でも、「うどん玉の取り方、温め方」「会計は前払いか、後払いか」などを、笠井さんがさりげなく案内。迷うことなく絶品のうどんを食べることができます。
地元の人に交じって小ぢんまりとした店で勢いよくうどんをすすり、少しだけ香川県民になった気分が味わえる。地元情報を知り尽くしたドライバーの案内で、ちょっとした異世界に行くような“うどん巡礼”体験を気軽に味わえるのが「うどんタクシー」の楽しみです。
「うどんタクシー」ドライバーへの道、結構な難関!
この「うどんタクシー」を利用される客は様々で、近年は海外からの利用がかなり多いそうです。また中には、車両1台を3日間貸し切ってうどん店を巡る家族や、1日で7軒のうどんを食べ歩く人もいるのだとか。
なお、この「うどんタクシー・ドライバー」への道は、容易ではありません。もちろん通常のタクシーと同じ普通二種免許は必須ですが、他にも香川県内の観光や歴史、うどんへの知識を問う筆記試験、さらにうどん生地を伸ばして切る「うどん打ち」試験などを経て、ようやく客を案内できるのです。
そして笠井さんは、粉と水を混ぜる段階からうどん作りができるという、タクシードライバーになる前からの“うどんマニア”。話していても「この人なら耳寄りな情報を提供してくれるだろう」という安心感がありました。
「うどんタクシー」だけじゃない!全国各地の「ご当地タクシー」
「うどんタクシー」を運営している琴平バスは、他にも四国88か所霊場を巡る「遍路傘タクシー」などのサービスを行っているそうです。
また全国には「アップルパイタクシー」(青森県・弘前市)「チキン南蛮タクシー」(宮崎市)など、さまざまな「ご当地タクシー」があり、琴平バスが各社に声をかけ、「日本ご当地タクシー協会」を結成。2022年には「うどんタクシー」が各地に出張し、全国各地を駆け抜ける「うどんタクシー」は注目の的だったそうです。
「うどんタクシー」を含めて、全国13か所で展開されている「ご当地タクシー巡り」はいかがでしょうか。