今、Instagramに投稿されたダンススタジオの動画が、60万回以上再生されるなど反響をよんでいます。子どもたちが身振り手振りでコミュニケーションをとっているこの動画を投稿したのは、東京都新宿区のダンススタジオ「舞はんど舞らいふ」。このスタジオでは、聴者・ろう者が一緒にレッスンを受けることができます。代表の榎本麻矢(えのもとあさや)さんに話を聞きました。
仲良くしたいんだけどどうしたらいい?
この動画の中で子ども達は何を話しているのでしょうか。奥の女の子は手前にいる女の子と仲良くなりたい…でもどうしたらいいか分からない。そんな時、手話ができる女の子が登場しお互いの懸け橋になってくれたという場面です。このダンススタジオでは、こういった光景は特別なものではなく、よくある日常の光景だそうです。
「実は、手話が出来なかったあの女の子が、今度手話のレッスンにお母さんと一緒に参加する事になっているんです。いよいよ挑戦するみたいですよ」と榎本さんは嬉しそうに話していました。
「子どもは(仲良くなるのに)何にも弊害なんてないですよ。会話がしたいと思う時は、文字に書いたり『先生これ伝えてほしい』と言ってきたりします。また、先生が何か言った時にきこえない子が気づいていなかったら肩をポンポンとして知らせています。思いやりが自然と行動に出ていると感じます」
きこえる子の驚き
ダンススタジオでは、先生が手話を交えながら説明することでレッスンがすすんでいきます。初めてスタジオでこの光景を見る子の中には驚きを隠せない子もいるそう。耳がきこえない子がいるということ、先生がダンスの振り以外にいっぱい指を動かしていること、初めて知ること、見る光景にびっくりするんだそうです。そしてこの驚きは、その後手話に触れるきっかけに変わっていくんだとか。手話について母親に聞いたり、自分でネットで調べたりする子もいるそうです。榎本さんが、聴者もろう者もみんなでダンスをすることをモットーとしたのは、ある経験がきっかけになっています。
「(私が)初めて出会ったきこえない子とダンスチームを組むことになり、その子が参加していた、ろうの方たちメインのダンスイベントに一緒に出演したんです。その時、とにかくカルチャーショックでした。普段ろうの方は、私たちが会話をしているときに、何を喋っているんだろうって思っていると思うんです。でもそのイベントではろうの方たちが手話でワァーっと喋って盛り上がっていて。私はみんなが何を喋っているのかさっぱり分からない。まさに逆の状況を初めて体験しました。そして、とにかくダンスが好きな人がいっぱいいたんです。あぁこれは聴者もろう者も一緒にダンスがしたい!一緒に盛り上がりたい!と思いました」
そこから榎本さんのチームは、聴者にも手話を広め楽しく覚えてもらいたいと考え、手話とダンスをコラボレーションした「手話ダンス」をつくり始めました。
聴覚に障がいがある子は、ダンスを習いたいと思ってスタジオに通っても、指導が伝わりづらいなどの理由でついていけない事も少なくないそうです。そのため榎本さんのダンススタジオには、遠方から電車に乗ってくる子もいるそうです。「手話ダンス」は、好評で教育委員会からの依頼を受け、各地の小学校でワークショップをしています。そして榎本さんの次の目標は2025年に東京で開催されるデフリンピックで手話ダンスを披露する事だそう。「みんなで一緒にダンスをする」ということを追求したダンスは見ている人も一緒になって楽しめそうです。