「自分の全てが嫌い」…診断された“醜形恐怖症” 大好きな音楽に没頭し自分を愛せるように

「自分の全てが嫌い」…診断された“醜形恐怖症” 大好きな音楽に没頭し自分を愛せるように
EDWARD(我)さん

「とにかく自分の全てが嫌いでした。輪郭も目も鼻も口も体型も、私にあるパーツは全て気に入りませんでした」。そう語るのは、2019年からラッパーとして活躍しているEDWARD(我)さん。現在、主に関西や東京でライブ活動や楽曲制作をし、モデル業も務めている。彼女は思春期に自身の美醜に極度にこだわり、不安に駆られる「醜形恐怖症」を発症。だが、昔から好きだった音楽と真剣に向き合い始めたことによって、自分の捉え方が変わっていった。

死にたいくらい嫌いだった

幼い頃からクラシックピアノとダンスを習っていたという、EDWARD(我)さん。自分の見た目が好きではないと思い始めたのは、小学校中学年ぐらいの頃だった。これといった大きなきっかけは特になかったが、母親が見た目に厳しい人であったこともあり、外見にコンプレックスを抱くようになっていったという。

見た目への嫌悪感は、年を重ねるごとに増していった。鏡を長時間見る、自分の見た目が嫌で外に出られないといった症状が現れ、綺麗な人の写真と自分の姿を比較しては落ち込むことも。何十枚も自撮りをして自分の顔をチェックし、他人にどう見えているのかが気になり、人の目を見て話すこともできなくなっていった。

「必要以上にメイクに時間をかけたり、家にいるのにメイクしたり……。自分のことが嫌で憂鬱で、授業はほとんど出ていませんでした。だから、高校1年生で単位が足りなくなりました」

002
002

自分が自分であることが苦しく、家族に「なんで、こんな顔に産んだんや!」と言い放ち、泣き喚いた日もあったそう。頭の中には常に「整形」の2文字があり、情報収集も行っていた。

心療内科へ行ったのは、16歳の頃。1週間ほど眠れず、憂鬱であったことや周囲から勧められたためだ。すると、告げられたのは醜形恐怖症という病名。症状が現れた時に、処方された頓服薬を飲むことになった。だが、醜形恐怖症を患う前から、オーバードーズが癖になっており、処方薬も過剰摂取。心身ともに、より辛い状態になってしまう。

003
003

自分の見た目に向いていた意識を音楽に向けるように

そんな苦しさから救ってくれたのが、音楽だった。3歳からピアノを弾いていたEDWARD(我)さんは音楽の授業で褒められることが多く、高校1~2年生の頃、音楽の先生と親しくなった。そして、その先生とのある日の会話がきっかけで音楽の道に進もうと決心し、醜形恐怖症への向き合い方が変わり始めた。

「その先生は、私に音大へ行くことを勧めてくれました。そうした言葉を受け、もっと本気で音楽しなきゃ! 病気を克服したいと思ったんです」

004
004

そこで、EDWARD(我)さんは、ありのままの自分を愛すため、唯一自信が持てていた音楽という武器を磨くため、音大へ行き、声楽やピアノなどを学んだ。

「空きコマはひとりで公園に行ってリリックを書き、自宅ではずっと曲を作り、SoundCloudという音楽サイトに載せたりしていました」

音楽の技術を磨くと共に、なるべく鏡を見ない、SNSをあまり見ない、整形の情報を調べないようにもした。

005
005

「SNSはキラキラしたところだけが目に入ってくるので、どうしても自分と他人を比べてしまいます。無駄なことを考えてしまいそうになる要素は、徹底的に見ないようにしました」

これまで自分の見た目に向いていた意識を音楽に向けるようになった、EDWARD(我)さん。それにより、少しずつ自分という人間を認められるようになっていったのだ。

正直、今も自分の姿を見ることはあまり好きではなく、自身の外見が特別好きなわけでもない。だが、かつてのように自分を忌み嫌うことはなくなり、「特に何も思わない」と言えるほど、生まれ持った顔や体を受け入れられるようになった。

006
006

「音楽ができる自分を愛していますし、誇りに思っています。努力が全て報われるというわけではありませんが、努力してきた時間や知識は誰にも奪われない。没頭して自分の何かを磨くことは、自分を愛すための第一歩になるはずです」

近年はSNSの普及により、自分の見た目にコンプレックスを抱く人が増えている。だからこそ、EDWARD(我)さんは過去の自分と同じく、外見の悩みに苦しめられている人に対し、SNSに取り憑かれず、有意義に時間を使ってほしいと語りかける。

007
007

「若い時間は、永遠には続かない。SNSの情報を見て一喜一憂するより、好きなことを見つけて、ひたすら努力すると、周りの環境や見える世界が変わるはずです」

音楽に救われたEDWARD(我)さんは自分であり続けることの苦しみを経験したからこそ、言葉にしづらい感情を音に乗せ、音楽という手段で誰かの心に寄り添い続ける。

この記事の写真一覧はこちら