ユニバーサルマナーとは、自分とは違う誰かの視点に立って考えたり行動したりすること。その実践のために必要なマインドとアクションを体系的に学び、身に着けるための検定(ユニバーサルマナー検定)を実施している団体がある。今回は、ユニバーサルマナー検定を実施している株式会社ミライロで、検定の運営や講師などを担当している近藤茜(こんどうあかね)さんに、検定の内容や今後の展望について話を聞いた。
「向き合い方」=多様な人とのコミュニケーションの基本を学ぶ
「障害者や高齢者などとのコミュニケーション方法やマナーなどの内容と伝えると皆さん、その検定に対してイメージがつくみたいです」
ユニバーサルマナーを学ぶには、まず“自分と(身体感覚など)異なる存在がいることを知る”ということからスタートするそうだ。検定には3級から1級まであり、学びや体験などのカリキュラムを受講することが出来る。
「入門となるユニバーサルマナー検定3級は必ず障害当事者の講師が内容を伝えています。難しそう…と思われる方もいますが、介護や介助といった専門知識というものではないので、実は、小学生でも受けられます。過去には、ジャニーズの櫻井翔さんも受講してくださいましたね」
「もっと早く知りたかった」という声
近藤さん自身も、ユニバーサルマナー検定を受けた1人だ。この検定の存在を知り試しに3級を受講した時、衝撃を受けた。検定の中で高齢者の話が出た時、亡くなった祖母のことを思い出したそうだ。
高齢者はさまざまな障害を併せ持っている状態、つまり、高齢になったら細かい動作が難しくなるということ。更に、感じ方(視覚・聴覚・触覚など)も変化し、“今までできていたことがだんだんできなくなる焦り”が出てくることを知り、祖母の当時の言動に対し、「もっと優しくすればよかった。声の掛け方も変えることもできたのに…」と、後悔したのだと言う。
近藤さんはこのことから「皆にユニバーサルマナー検定を知ってもらいたい!」思うように。その後、縁がつながりミライロへ入社する。
「知る」と、自然にアクションも起こせるように
検定の受講者の中には、街で障害者や高齢者を見かけた時、「声をかけられなかった」、そして「もっと早くこの検定を知っていたら行動に移せたのに」というような声が多いそう。
例えば、「街にいる車いすを使用している人、白杖を持つ人の存在を認識するようになった」「今までいなかったのではなく、その人たちの存在に気付いていなかっただけだった」「そして気付くことで、電車で高齢者に出会った時、席を譲る声掛けをする行動ができるようになった」という声が上がると言う。
受講後は、“断られてもいいからまず「何かお手伝いできることはありますか?」と声を掛ける”という第一歩を踏み出せるようになった人が増えたそうだ。
「私も含めて、“知らなかった”が“知る”になっただけで見えていた世界が広がって変わったという人は多いんじゃないですかね」
ユニバーサルマナー検定は、難しくも特別でもない
「ユニバーサルマナー検定で基本的に伝えていることは、4つ。(1)本人の意思を確認する、(2)決めつけや押しつけをしない、(3)選択肢を提供する、(4)完璧を目指さない。それは、障害者や高齢者だけじゃなくて、全ての人間関係に対しても大事なマナーだと思います」
この検定は、様々な立場の人が受講する。健常者だけでなく障害者も受講するそうだ。
「例えば、同じことを伝えても受け取り方は様々です。難しいと感じる人もいれば、新しい発見と感じる人もいたり、“面白い!もっと知りたい!”と思う人もいます。障害があってもなくても、違いはある。そのためにユニバーサルマナー検定は障害者のためだけのものじゃないなと感じています。そして、自分とは違う人がいることを知った時、“違いがある”ことをポジティブに捉えることで、視野も世界も広がると思います」
「誰もがあたり前」のマナーにしたい
現在、実地やオンラインの受講が難しい人に向けて、自分の好きなタイミングで学べるeラーニングも実施しているが、将来的には、検定のカリキュラムの種類を増やしたり、受講方法をさらに多様にしたいと近藤さんは考えている。
「忙しくても、学びたいという人もいます。受講する皆さん、何かしらアクションを起こしたいんです」
学びたいと考える人の“踏み出す勇気”を手伝いたいと話す近藤さん。そのために今後の選択肢を増やしていきたいそうだ。
「ユニバーサルマナー検定を通して、私が一番良かったと思うのは、色々な障害のある方とお友達になれたこと!例えば、その人たちとお話したり聞いたりした後に、街に出た時、その一人一人の顔が思い浮かぶんです。顔が思い浮かぶと、一気に、街の中にあるバリアなどが自分事になるんです。そのことを私だけではなく、他の皆さんも体験することは、次の行動にどんどん繋がっていくんじゃないかなと思います」