2週間前後で消えるタトゥーを手がけるメヘンディアーティストは、わずか10年ほどで、軒並み増えている。10年ほど前は、ネット検索をしてもさほどヒットしなかったが、今はスクールでの講習などで育ったアーティストたちが独自の世界観で活躍をしている。埼玉県在住の辻結(つじ ゆい)さんもその一人だ。
結さんについて記述する前に、メヘンディとはインド、ヒンディー語でヘナで肌をそめるアートそのものを指す言葉。ヘナはアラブからモロッコ辺りの地域で紀元前から生息していた植物であり、ヘナを使って白髪を染めたり、体にさまざまなデザインを描いて親しまれている。インドでは、花嫁の手や足など体にヘナタトゥーを入れたり、祭りや儀式など日常的にも入れて、生活の一部として浸透している。
ヘナタトゥーに類似するのが、ジャグアタトゥー。南米でとれるジャグアの実から抽出したエキスを煮詰めて、インクにして現地の部族たち、原住民たちに親しまれている。ヘナタトゥーとジャグアタトゥーでは、原料が異なり、さらにタトゥーを入れてから消えるまでの期間も異なる。一般的に、部位にもよるが平均してヘナタトゥーは10日前後、ジャグアタトゥーは、2週間前後となる。
結さんは、ヘナタトゥー歴10年、ジャグアタトゥーのアーティストとして活動して4年になる。
実際に、左腕に「曼荼羅のデザインと三日月を入れて欲しい」とリクエストをすると、デザインブックもないなかで、早速、小さな三角のコーンは、フィルムで手作り。そのなかに、ジャグアインクをいれ、フリーハンドで基本となる丸を描き始めた。丸のなかに三日月を描き、外枠に半円を続けて描いて、足していき、躊躇することなく、わずか20分ほどで描き終えた。
デザインは、結さんの頭のなかに、丸、三角、四角をベースに、さまざまなパターンの原型とも言えるデザインが引き出しとしてしまわれている。客からこういうデザインを描いてほしいとリクエストされると、頭のなかの引き出しからアウトプットされる。
結さんはもともと、モノを作ったり、何かを描いたりすることが好きだったアーティスト気質から、知人からメヘンディアートについて10年ほど前に知らされ、魅了された。
都内で1日だけのメヘンディアート教室に参加してマンツーマンで、基本の描きかた、インクの調合や薬事法、歴史背景などを学んだあと、独自の練習で自分の体のいたるところに描ききれないほど、デザインの練習をしてスキルアップを図っていったそう。
現在、予約が入ったら、アトリエで描いたり、出張して描いたりしている。
メヘンディアートの楽しさについてたずねると、
「唯一無二のデザインで、同じモノは描けません。お客様に喜んでもらえるのが嬉しいし、1回だけの勝負で描き始めから描き終わりまでのプロセスも楽しい。描き終えたら撮影して作品として記録として残せます」と話す。
これまで、人の体を中心に、手や足、背中、ときにスキンヘッドの頭全体に、また、妊婦の腹部にマタニティペインティングをしたり、ハードなものであれば、スマホやパソコン、レアなケースでは客のリクエストでバイクのパーツにヘナタトゥー柄を描いたこともあるそう。
今後の展開については「ハードなモノに描いた作品を販売できたらいいなって思います」と瞳をきらきら輝かせる。一発勝負の失敗できないメヘンディアートの世界で、さらに結さんのアーティストの幅は広がっていきそうだ。