岡山県北部にある温泉地、美作三湯(湯原、奥津、湯郷)の温泉宿で、県内外のアーティストの芸術作品が展示された「美作三湯芸術温度」が開催されています。県南部で「瀬戸内国際芸術祭」「岡山芸術交流」といったアートの祭典が同時期に開催される中、アートの力で美作地域の魅力発見につながればと、3年に1度の風物詩として地域に定着しつつあります。
「芸術温度」の意味
2016年に県内初の試みとして行われた温泉とアートのコラボレーションで、3年に一度開催され、今年で3回目の開催となる「美作三湯芸術温度」。
岡山県北部の湯原、奥津、湯郷の三温泉地の25の温泉宿を舞台とし、過去最多の26人の美術家、画家、彫刻家の芸術作品が展示されています。来訪者は、温泉宿に宿泊しなくても、温泉宿や周辺施設に展示されている作品を自由に見て回ることができます。
「美作三湯芸術温度」という名称には、温泉のお湯の温かさ、温泉宿で受ける温かいおもてなし、アートを鑑賞した時の満足感など、実際に体感することで得られるさまざまな感覚を「温度」という言葉に託し、訪れる人にこの「温度」を感じてもらいたい、アート作品から新しい感動や発見をしてもらいたいという思いが込められています。
「美術館」を地域に広げていく
今回のイベントの企画責任者であるキュレーターを務めた奈義町現代美術館の岸本和明さんは、同美術館の開館前から携わり、学芸員、副館長を経て、2014年から館長をつとめています。
岸本さんは、美術館以外の空間でアート作品を展示することで、地域の様々な場所に人が足を運び、多くの人にアートを身近に体感してもらおうと考えています。
「アートとは人と人とのつながりだと思っています。私自身、美術館での企画展示を通じて、様々なアーティストに出会ってきました。今回の芸術温度も、美術館がコアにあって、この美術館を地域に広げているイメージです」
また、アートに興味をもつ人を増やすことで、人に対する思いやりの気持ちも育てていきたいと、岸本さんは話します。
「アートは人の表現なので、その人の表現や作品を認めるということは、その人を認めることにつながると思っています。人間に対する賛美というか、人間のおもしろさを実感するきっかけになればと」
「観る」「触る」「体験する」アート
今回の「美作三湯芸術温度」の特徴は、ユニットまたは二人組で展示している宿が多くあること。また、彫刻も多いため、温泉宿内だけでなく、屋外にも設置することで、室内外どちらでも楽しめます。
「どの温泉宿に、どんな作品が合うか、温泉宿の雰囲気とアーティストの空気感や人柄を含めてマッチングしました。アートは温泉宿に寄り添う形で見せられたらと思っています。1か所だけでなく、三湯を巡ることで、『見る』『触る』『体験する』のすべてを楽しんでもらいたいです」
期間中は、温泉宿に限らず、今回の参加アーティストの企画展が、県北部の美術館や博物館などでも開催されています。各地域を舞台に開催される地域独自のアートイベントも開催されており、アートを軸に、新しい地域や人との出会い、交流が生まれています。
周遊スタンプラリーも実施されており、ハンドブックを携行することで岡山県北部をより一層楽しむことができます。
「アートをきっかけに、それぞれの地域の、雰囲気の異なる温泉宿に足を運ぶことができます。普段は宿泊以外に入ることがない温泉宿や地域へ気軽に足を運んでもらって、温泉宿のもっているポカポカ感、アート作品を観た時の満足感やワクワク感を、心と身体で体感してもらえたらと思います」
「美作三湯芸術温度」は、12月4日まで、美作三湯(湯原・奥津・湯郷)の温泉宿等で開かれています。