スポーツ選手のセカンドキャリアが、話題にのぼるようになって久しい。まったく関係のない業界へ進む人も増えてきた。今回紹介する田島翔さん(39)は、J2リーグのロアッソ熊本をはじめさまざまな国でプレーしてきたサッカー選手。そして今、江の島FC(神奈川県3部リーグ所属)でプレーヤーを続けながら、麻雀のプロになるという、唯一無二の道へと進もうとしている。
サッカー選手が麻雀のプロを志したきっかけ
日本、シンガポール、クロアチア、スペイン、ニュージーランド、アメリカ、韓国。多くの国でプレーしてきた田島さんは2020年12月、サンマリノ1部のSSペンナロッサへと入団。初めてこのリーグでプレーする日本人として、リーグ戦で優勝しUEFAチャンピオンズリーグの予選ラウンドに出場することを目指していた。
しかし、新型コロナウイルスが直撃。ロックダウンとなり、練習どころか外出さえできなくなってしまう。
それでも自ら所属クラブを探し各国を渡り歩いてきた田島さんは、転んでもただは起きなかった。
この期間にエネルギーを向けたのが、高校生の頃に覚え、その後も趣味としてインターネット上で対局を続けていた麻雀。Mリーグ(競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ)の中継や、多井隆晴さん(RMU及びMリーグ・渋谷ABEMAS所属のプロ麻雀士)のYouTubeチャンネルをよく見るようになり、守備の意識、読みのすごさを感じて麻雀の奥深さを知っていく。
「それに39歳となり、いつまでサッカー選手を続けられるかわからない。目標や、緊張感、充実感が欲しいなと思って、麻雀のプロになりたいと思ったんです」
そして多井さんが代表を務めるRMU(競技麻雀のプロ団体)に連絡を取り、審査の申し込みを行った。試験内容は筆記試験、面接、そして実技。合格のため3か月間に渡って点数計算、牌効率などを猛勉強し、今年7月に合格を果たした。
サッカーと麻雀の二刀流
現在はサッカーにおいては江の島FC、麻雀においてはRMUに所属する。2つはまったく異なる競技のように感じられるが、共通点もあるようだ。
「麻雀は1対3のため、守備も大切ですし、無理に勝負しないことも必要です。奥が深いなと思いますし、読みとか判断とか、サッカーに通じるものもありますね」
ただ、麻雀は20歳ぐらいからプロになる人も少なくない。田島さんが遅めのスタートであることは間違いない。麻雀のプロになると決めた頃は、サッカーとの二刀流ではなく麻雀一筋のほうがよいのでは、と思ったそうだ。だがそこにも、多井さんの影響があった。
「たまたま、多井さんの本を読んでいたんです。そのなかに『今までの麻雀プロは麻雀だけをやっていた。しかし元乃木坂の中田花奈さんとか浅香唯さんとか、芸能人の方が麻雀プロになり、話題性ではかなわない。そのためこれからの麻雀プロは、自分から麻雀以外も頑張っていかなきゃいけない』というようなことが書いてあったんですよね」
その部分を読んだときに、「サッカーをやっていていいんだ」と思えたことで、二刀流を続けることを決意。サッカー選手としてはベテラン、雀士としてはオールドルーキーとなる田島さんは、両方で目標を抱く。
「サッカー選手をあと何年できるかわからないんですけれど、江の島FCでは神奈川県2部に昇格すること。将来的にはいろんな国のチームを見てきた経験を生かすために、指導者ではなくGM(ゼネラルマネージャー)だとかのチーム作りに興味を持っています。麻雀では、やはり最高峰のMリーグで戦いたいし、何かタイトルを取りたい。そして、真剣な場で多井さんと対局したいですね」
麻雀ではまず、10月からの新人研修に挑む。本人次第で何歳になっても続けられるし始められるのだと、田島さんは教えてくれている。