「サードカルチャーキッズ」という言葉をご存じでしょうか? 親の生まれた国の文化と、生活している国の文化が異なる彼らは、どのような悩みを抱え、どのような強みを持っているのか、また親はどのようなサポートが必要なのか。
日本にルーツがありながら、日本に住んだことがない子どもたちと親たちの悩みを聞き、自身の経験をシェアしている、ドイツ在住のリヒターけいこさんに話を聞きました。
あなたは何人なの? 聞かれても答えられない
「サードカルチャーキッズ」とは、親の生まれた国の文化と、生活している国の文化、2つの異なる文化のはざまで、独自の生活文化を持つ、子どもたちのことです。3カ国以上の文化で成長した子どもたちを「クロスカルチャーキッズ」と言います。
例えば、両親は日本人ですが、海外で生まれ、海外での環境や文化に触れ、海外でしか生活したことないまま日本へ帰国する子どもの場合、日本の文化は知っていても触れたことがない子もいます。顔が日本人であっても、日本語が流暢に話せない子もいます。
外国人の価値観を持っている「サードカルチャーキッズ」の子どもたちは「あなたは何人なの?」と聞かれても答えられないと言います。本来の自分が出せずに戸惑ってしまう子もいます。
強みはどんな文化にも馴染む適応力
リヒターさん家族は、夫の仕事の都合で、これまで10カ国で生活してきました。
インターナショナルスクールには同じような環境で育った子どもたちがいたり、家庭の中では両親の文化や言葉に触れる機会があったりと安心して過ごせる環境があります。
しかし、住んでる国に慣れた頃には、引っ越しをしなければならない生活。成長期の子どもたちは、友人との別れを繰り返し、孤独感や深い悲しみ、葛藤もあるけれど、自分の意思ではどうすることもできません。
そのため、住んでいる国の文化、言葉、習慣に触れる機会も多い「サードカルチャーキッズ」たちは、独特の価値観を持つのだそうです。
「生まれた時から色々な国で育ってきた子どもたちは適応力があり、どんな環境でも生活に馴染むのも早い。寂しい思いをした時もあったけど、今となっては”いい経験ができた”」と、親子で昔話をすることも増えたとリヒターさんは言います。
親がホームになる
生まれた時から定住をしたことがない環境で育った子どもたちには「帰省」の概念がなく、両親や親戚がいるから帰るという感覚。
リヒターさん夫婦は「自分たちが家族の精神的に安心できるホームになる」と決め、夫の定年を機に、夫の故郷であるドイツに定住を決めました。子どもたちは成長して今は別々に生活していますが、「帰ってくる場所」を作ることができたと話します。
「子どもは年齢が上がると共に成長して行きますが、親が子どもから教わることが多く、親はいつも一年生です。そのため親子で成長していくことが大事です。人はそれぞれ見る視点が異なり、例え親子であっても違う価値観があるのは当たり前のこと。みんなが理解するのは難しくても、『違う意見を認める』ことが『多様性』に繋がると思います」