「ちょっと変わったかき氷があるんですけど」と聞き、向かった先は徳島県吉野川市美郷の山中。セイナムの社長、鈴木英司さんと取締役の流章予(ながれあきよ)さんが迎えてくれた。
「ドリンクかき氷」と聞いて、最初に思い浮かんだのはメロンソーダ。炭酸ドリンクの上にアイスクリームがのったアレ。でもかき氷? 液体に浮くのだろうか? いや、すぐ溶けるのでは? 一体どうなっているのかナゾのまま、実際の商品を見せてもらって納得。なるほど、確かにありそうでなかったかき氷だ。
「最初はシロップたっぷりのかき氷。やがてドリンクとかき氷が溶け合ったシャーベットに。最後は冷たいドリンクの三段階で味わえるのがポイントなんです」と話す鈴木社長に商品の開発について話を聞いた。
意匠登録に商標登録。唯一無二のかき氷
ドリンクかき氷は、ドリンク、つまり液体とかき氷を接触させないことでかき氷が溶けて落ち込まないように作るのがポイントだ。この技法、業界では珍しく意匠登録済み。炭酸ドリンクを使用する際には「しゅわっと炭酸かき氷」という名称で、こちらは商標登録もしている。
イベント出店など多くの出店者が一堂に会する場では、同業者は皆どんなものを出しているのかお互い気になり、売れている商品はすぐに模倣される世界だという。
「そこをなんとかしたかった。せっかく新商品を考えても真似されないように。長続きできる商品にさせたいと思ったんです」(鈴木社長)。
なんと! ユニークな「ぽたっと保険」付き
一般的なかき氷に比べると、空洞の上にのせたかき氷はどうしても落ちやすいのが悩みだという。そこを逆手にとり、なんともユニークな「ぽたっと保険」を付けてしまうところがおもしろい。かき氷を落としてしまったら、保険でもうひとつのせてもらえるのだ。もちろん、保険は商品代金内。
「こんな保険は日本で初めてだと思いますよ(笑)。これを見たお客様は驚きの笑顔で楽しんでくれています」
あの「かっしゃ焼」の店からデビュー
このドリンクかき氷を手がけるセイナムは、香川で16年前に誕生した「元祖かっしゃ焼」の会社。「かっしゃ焼」とは、一見たこ焼きのように見えるが、中の具は香川で「かしわ」と呼ばれる鶏肉の親鳥を入れた、つまり「かしわ焼」だ。かしわがなまって「かっしゃ」となり、「かっしゃ焼」に。フランチャイズ経営で香川、愛媛では知る人も多い、香川発祥のB級グルメだ。全国のB級グルメのコンテストなどで数々の賞も獲得している。
店頭ではこのかっしゃ焼とともに、ドリンクと夏はかき氷の提供をしていた。鈴木社長はあるときふと、子どものころにどこかのお婆さんがジュースの上にかき氷をのせてくれたことを思い出す。子ども心にとても印象的で嬉しかった思い出だ。それをヒントにドリンクかき氷の商品化を考えたという。
「日本初のドリンクかき氷商品です。夏は炭酸でスカッとしたものがおいしいので『しゅわっと炭酸かき氷』をおすすめしています」
漫画のキャラクターで売り出し中
しゅわっと炭酸かき氷は、バリエーション豊富に11種のフレーバーを用意。一番人気はなんといっても真っ赤なイチゴ。レモンやメロン、ブルーハワイなどのカラフルな一般シロップのほか、本部がある徳島の特産品を使った、梅やすだち、そして藍染に使う藍など、オリジナルシロップもおもしろい。
現在、シロップごとに漫画のキャラクターを作成中で、キャラクターは流取締役の娘が手がけている。近い将来「漫画かき氷」としても注目されそうだ。
移動販売で出会えたらラッキー
「しゅわっと炭酸かき氷」は、徳島県吉野川市美郷にある本部兼店舗のほか、各種イベント会場に出向いて販売している。