ポール・ポッツやスーザン・ボイルなどを輩出したイギリスの人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント(BGT)」。この番組で、予選から準々決勝(生放送)への一発通過を決める「ゴールデンブザー」を日本人で初めて獲得したのが、大道芸人の岩崎圭一さん。人力での世界一周を目指し、路上で大道芸を披露しながら旅を続けているという、その素顔に迫ります。
日本人初の栄光
「BGTでは、色んな人からメッセージをもらって、『良かったね』って言って頂きました。本当にありがとうございます」
オンラインで取材をする2日前に連絡した時は「イギリスにいる」と言っていた岩崎さんでしたが、取材時はイタリアにいました。聞くと、イタリアのテレビ局に出演するために移動してきたそう。「朝の3時に到着しました」と話します。
「(ゴールデンブザーをとって紙吹雪が)降ってきた瞬間、ステージ上での記憶がないんですよね。その時、何を言ったか覚えていないんです。ステージの脇に入ってからちょっと覚えてると言うような感じでした。本当に夢じゃないかなっていう感じだったんですけど、1か月経って、(BGTの)動画の影響が出始めているなと思います」
大道芸をしながら旅を
岩崎さんは、約20年前、ポケットに160円だけを入れて旅に出ました。最初はヒッチハイクをしながらすすんでいましたが、途中の中国で自転車を買い、そこからは”人力”で世界一周を目指しています。普段はどんなふうに1日を過ごしているのかというと……
「8時から9時に起きて準備をして大道芸に行きます。特に夏は毎日していますね。7月から9月は子どもが夏休みなので立ち止まってくれやすいです。4月から5月は、土日だけですね。他の日は、ブログを書くなどをしています。最近は、ちょっと忙しくなることが多くなってきました」
岩崎さんが他の国で大道芸を披露している番組をみると、その国の言語を話していることが分かります。言語はどのように学んでいるのでしょうか。
「語学は文法的なところは、分からないんですね。耳から聞いてそれを何回も繰り返してという感じですね。英語圏じゃない所は、僕が英語で言っても子どもが分からないんです。そうすると、お父さんかお母さんが現地の言葉で子どもに指示をするんです。例えば、イタリアで『ギブミーハンド(手を出して)』と言うと、大人が『ダメラマーノ』と現地の言葉で子どもに指示するんですよね。僕はその時『ダメラマーノ』というのは、『手を出して』っていうことなんだなと思い、何回も声に出していると話せるようになりますね」
岩崎さんは、好きな国には何度も行くそうです。イギリスは滞在可能日数180日と長く滞在出来ますが、物価が高いので芸が上手くいかないと滞在出来ません。
コロナ禍では、大道芸自体が出来なかったので大変だったと話します。そういう時は、トルコやブルガリアなど物価の安いところに移動して暮らしていたそうです。
人力での世界一周に向け
今後の目標を尋ねると、大西洋を手漕ぎボートで渡ることだと教えてくれました。
「人力で世界一周を目標にしています。なので、今は自転車でユーラシア大陸を渡っています。現在は、ポルトガルのロカ岬というユーラシア大陸の一番端っこといわれているところまで到達しました。そこからは大西洋なので、手漕ぎボートで渡りたいなと思っています。海流を調べると中米に到達するんです。中米に到達して、アメリカ大陸に行って横断し、最終的には、太平洋を横断できたらと思っています」
旅をする中で、チベットの田舎で野良犬にかまれたり、エベレストから下山する時に迷ったりなど、命の危険を感じたことは何度かあると話す岩崎さん。
それでも、旅を続ける理由を聞くと、「悪いことよりも断然いいことの方が多いです。変化に富んだ世界を見ているのはすごく楽しいですね」と話します。
どこかに永住することは今のところ考えてはいないそうです。もし、日本に戻っても2周目の世界を回りたいとのことでした。
「本当に色んな人にお世話になってきて、そのお世話になった人に直接は、返せないですが、世界の人に返していきたいなという気持ちでいます」
今の予定では、12月末に大西洋を渡る用の手漕ぎボートが手に入るそうです。岩崎さんの新たな挑戦が楽しみです。