「年齢を理由にやりたいことを諦めるのは、すごくもったいないことだと思うんです」
そう語るのは、東京都練馬区を拠点にアラフォーアイドルとして活動する「ねり★マドンナ」の白井蘭さんだ。白井さんは40代で人生初のアイドル活動を始め、2021年10月には全国各地17組のアラフォーアイドルとともに、「モーニング娘。」など数々のアーティストの楽曲・プロデュースを手掛けるつんく♂さんの楽曲でメジャーデビューを果たした。
今回、そんな白井さんに、活動を始めたきっかけや年齢に対する考え、メジャーデビューに至った経緯などについて話を聞いた。
偶然出会った「アラフォーアイドル」のメンバー募集
41歳のときにアイドル活動を始めたという白井さん。きっかけは、子育てがひと段落したことだった。
「この活動に出会ったのは本当に偶然なんです。子育てが落ち着き、空いた時間にできる習い事を探していたら、全国各地で活動するアラフォーアイドルのメンバー募集を発見して。募集内容を見ているうちに、なんだか楽しそうだと思い、選考に応募することにしました」
応募はダメ元だったという白井さんだが、結果は見事合格。当時住んでいた埼玉県を拠点に、アラフォーアイドルとしての活動を開始した。
「実際の活動は、思っていた以上にハードで厳しいものでした。それでも続けたのは、活動を通して新しい友だちをつくれることが楽しかったからです。40歳を過ぎると、人との出会いは減ってしまいます。私にとってアラフォーアイドルは、いろいろな方との出会いを広げる場にもなっていたんです」
最初のグループに所属してから1年後、練馬区内で活動するアラフォーアイドルに移籍。しかしこのグループも1年後には事務所の方針で解散が決定してしまう。
アイドル活動を続けたかった白井さんは、同じグループに所属していた黒井黒百合さんと「ねり★マドンナ」を結成した。多くの人に「練馬ってどんな街?」と興味を持ってもらい、練馬区を元気にしていけるよう、思いを込めてグループ名をつけたという。練馬区内のライブハウスを活動拠点としながら、数々のライブや祭りに出演。アニメや漫画とゆかりの深い街・練馬ならではのアニメソングのカバーや、オリジナル曲を披露してまわった。
何歳になっても、「好きなこと」を大切に生きる
40代でアイドルになることに対して、周囲からの反対はなかったのだろうか。
「家族からの反対はなかったですね。私の場合は、どちらかというと友人から『白井、どうしちゃったの?』と、好奇のまなざしで見られることが多かったように思います」
しかし白井さんは、自分の信念に従って活動をつづけた。
「年齢を重ねても、自分のやりたいことを大切に行動したらいいと思うんです。若いころはファッションも行動も、自分の好きなことをしていたはずなのに、30代後半に差し掛かったころから、年齢を理由にいろいろなことを諦める人が周囲に増えていきました。でも、私はそれが嫌だった。『子どもがいるから』『おばさんだから』という理由で何かを諦めるのは、すごくもったいないことだと思うんです」
アラフォーアイドルの活動で出会う人たちは、白井さんと同意見の人も多かった。自分と同じ価値観の人に囲まれて活動することが、何よりも楽しかったのだという。
つんく♂楽曲で、2021年秋にメジャーデビュー
2021年に入り、白井さんに大きな転機が訪れる。ハロー!プロジェクトのアイドル等、数々のアーティストの楽曲制作を行ってきたつんく♂さんが作詞・作曲を手がけた曲を引っ提げ、全国でCDデビューすることになったのだ。
きっかけは、親交のあった広島県のアラフォーアイドル「悪女時代」だった。つんく♂さんが代表を務めるTNXとクラウドファンディングサイトを運営するCAMPFIREによる共同プロジェクト「Dooon!」に、悪女時代が「つんく♂さんに楽曲をつくってほしい!」と企画を応募。その企画が採用され、楽曲制作費用をクラウドファンディングで募ったところ、無事に資金も集めることができた。全国のアラフォーアイドルを集め、楽曲を制作することが決まった。
「もともとは、楽曲提供だけで終わるプロジェクトだったんです。でも、私たちの活動をつんく♂さんがとても応援してくださって。気がついたらメジャーデビューが決まっていました。つんく♂さんに曲を書いていただけるだけでもすごいことなのに、まさか全国でCDデビューもすることになるなんて。大手CDショップに自分たちのCDが並んでいるのを見るまで、実感が湧きませんでしたね……」
こうして2021年10月6日、全国のアラフォーアイドル17組が集結した「Ar40(アラフォー)アイドル輝けプロジェクト」が「All Together ~限界超えよ!~」でデビューした。信念を貫いて行動し続けた先に見えたのは、奇跡のような思いがけない景色だった。
時代の変化を捉え、新しいことへの挑戦を
現在はSNSでの活動を中心に、少しずつライブも行っているという白井さん。アイドルは「多くの人の夢であり、エネルギー」だと語る。
「アイドルは、やっぱり多くの人の『夢』だと思います。だからこそ、この活動を通じて、お客様が楽しんで、元気になってくださることが一番嬉しい。同年代のファンから『勇気をもらった』と言っていただくことも多いのですが、私たちも応援してくださる方の姿を見て、元気をもらっているんですよ。ファンの皆さんとのエネルギーの好循環を、今後もつくっていけたらいいなと思います」
「Ar40(アラフォー)アイドル輝けプロジェクト」は、7月に最大700名を収容できる神田明神ホールで、祭りをテーマにしたライブを控える。メンバー全員で大きな目標を掲げながら、今後も活動を続けていくという。
「私たちは、日本全国を元気にできる存在になりたいと思っています。今後の目標は、第二の奇跡を巻き起こし、NHKの紅白歌合戦に出演すること。この活動を通して、『やりたいこと』の前で足がすくんでいる人など、たくさんの方の背中を押すことができたら嬉しいです」