かわいいと思って飼い始めたペット。いつかは命の終わりを迎えます。そんな時、どのようにペットと過ごしますか。「家族みんなで看取るということ。徘徊する愛犬を抱いて寝かしながら弟と遊んでくれるお姉ちゃん。ありがとう。」という言葉とともに徘徊によるけが防止のために用意されたビニールプールの中で女の子が片手で犬を抱き、もう片方の手で男の子とテーブルゲームをしています。このツイートに1.9万のいいねがつき、話題となりました。
このツイートをした、らぴさん(@vt_zero)に話を聞くことが出来ました。らぴさんは現在、フリーランスの動物看護師(※)として活動し、ペットの訪問介護や動物看護師の専門学校で先生として働いています。らぴさんには8歳の娘さん、6歳の息子さんがいます。
(※)2019年6月に制定された愛玩動物看護師法により、新たな国家資格「愛玩動物看護師」が 誕生。愛玩動物看護師法によって愛玩動物看護師の業務独占とされた診療の補助以外の業務は、引き続き行うことは可能だが、2022年11月以降、動物看護師という名称は使用不可となる。2023年に最初の愛玩動物看護師の国家試験が実施される予定で、現在らぴさんは資格取得の準備中。
写真で娘さんに抱かれている犬の名前は天(てん)くん、13歳です。帝王切開で生まれた天くんですが、生まれつき口蓋裂(こうがいれつ)(※)という障害があり、生まれて1時間くらいで飼い主さんから「いらないので殺してください」と言われました。このことから当時、動物病院で看護師として働いていたらぴさんの家に来ることになり、一緒に暮らすことになりました。
(※)口と鼻との間をさえぎっている口の中の天井部分が生まれつき開いている状態
ー天くんは、口蓋裂という障害を持っているのですね。育てるのは大変でしたか。
小さい頃はチューブを使って哺乳しないとミルクを飲めない状態でした。今も、給水ボトル(給水器、ノズル型)といって上を向いてペロペロ舐めるようなものを使わないと飲めないです。
ー天くんは、いつから体調が悪くなったのでしょう。
痩せ始めたのは、1年前ぐらいからですね。 別の病気も患っていて、ずっと闘病はしていたんですが今年の1月に体調崩してしまったのですが、そこから持ち直しました。認知が始まったのはここ1か月ぐらいで、2週間くらい前から徘徊がはじまりました。
ー認知が始まったらどんな症状になるんですか。
昼夜逆転してしまったり、ずっと徘徊してしまったりなどその子によって症状は違うんです。中には餌を食べたばっかりなのに食べてないって主張する子もいます。
ー天くんは、子ども達とは仲良しなのでしょうか。
仲良くなり始めたのはここ最近ですね。子どもは苦手で子ども達を避けることが多かったんですけど、娘が物心ついて接し方が変わってからは、一緒に寝たり抱っこされたりというのが増えてきましたね。娘は、動物が大好きなんですよ。寄りたいんだけど、天くんが嫌がるから離れていました。
ー娘さんも天くんが好きなんですね。
天くんも誰かと一緒にいた方が落ち着くみたいで、私が家事や他の事をしていると一緒に居れない時もあるので、娘に「ちょっとごめん抱っこしてあげてて」と言うと「分かった」と言って、そこから抱っこしたり、自分から「私、ご飯早く食べたし抱っこしとくね」と言ったりしてくれます。朝起きると「天ちゃんどこ。天ちゃんは。」と聞いてくれます。
ー天くんが寝られないというツイートもありましたが、今はどうでしょうか。
抱っこしていると長く寝てくれます。ただ、下に置くとすぐ起きてバタバタします。誰かにくっついておきたいというのはあるみたいですね。やっぱり不安があるんだと思います。わけ分からなくなっているところもあると思うので。
実は、夜もプールの中で一緒に寝てるんですよ。夜中に起きて徘徊すると目が離せないのでその中に布団を敷いて一緒に寝てます。昨日から朝から立つことが出来なくなってもう完全に寝たきりという状態です。完全に寝たきりでも、姿が見えなくなったら呼ぶんですよ、あんまり見えてもないんですけど、「ここにいるよ」って言ってそばに行くと抱っこしなくても大丈夫です。
ー娘さんの中では天くんは、もう少しで亡くなってしまうというのは分かっているんですか。
生前から「もうそんなに長くないよ」ということは常々、もう大げさなぐらい言っています。学校へ行く前は、「もういないかもしれないよ。もう十分頑張っているからママはこれ以上頑張ってとは言えないんだよ…」と伝え、「ありがとう」と言ってから、行かせています。
娘は、「そんなことないよ。まだ頑張れるよ。あと1年大丈夫だよね」と言うんです。
娘さんは、らぴさんの姿を見て「動物看護師になりたい」と話しているそうです。
(この取材は、7月5日に行われました)
その後、天くんは、7月7日に息を引き取りました。
「殺してくださいと言われた命だったのに 家族以外の心も助けてくれたよね たくさんの笑顔をありがとう 大好きだよ」(らぴさんのツイートより抜粋)
らぴさん家族は、天くんを看取りました。らぴさん家族が、天くんを愛し最期に向き合ってきたように、天くんも、家族を愛し幸せな気持ちで、虹の橋を渡っていることでしょう。