2012年2月、宮手恵さんが設立したカンボジア支援団体「はちどりプロジェクト」(2013年にNPO法人化)が、カンボジアのプレイキション村に学校を建ててから今年で10年が経つ。
「ひとりの力ではなく、多くの方々に支えられて今があります」
宮手さんは学校建設だけでなく、プレイキション村の就労支援にも取り組んでいる。なぜカンボジアに学校建設をし、就労支援に取り組んでいるのか、話を聞いた。
学校を建て、目の当たりにした現実
「世界がもし100人の村だったら」の本に影響を受け、「学校を建てたい」という思いが募った。経験者に話を聞き、2010年11月には「カンボジアに学校を建てる」と決めていた。
学校建設をする前に実際にカンボジアへ視察に行き「本当にこの国には学校が必要だ」ということを確認したのち「はちどりプロジェクト」を立ち上げた。その後、内戦で学校が燃やされた「プレイキション村」をカンボジアの教育省に紹介してもらい、学校建設に至った。
2012年2月、プレイキション村に学校が完成し、学校をカンボジアに譲渡した。カンボジアの公立学校として、教科書が支給された。しかし宮手さんは、学校が完成しても、子どもたちが学校に通えないという現実を知ることになる。村の大半の人は生活費を稼ぐため、タイやカンボジアの違う地域に、子どもたちを一緒に出稼ぎに連れていくからだ。
カンボジアは、1970年代の内戦で知識人が大量虐殺された過去がある。現在父親や母親として生き残っている人たちの中には、読み書きができない人もいて、子どもを学校に通わせることへの意識が低い人や、知識の大切さを理解していない人もいる。
「村で働くことができたら、出稼ぎにいくこともなくなる。そうすると子どもも学校に通えるかもしれない」ということで、長期的に就労支援事業に取り組むことを決めた。
自分が今できることを
現在、はちどりプロジェクトは村の人たちと一緒に、現地の綿と井戸水で紙を作っている。その紙を日本でカレンダーとして販売し、売れた分が給料となる。
それに加え、これからは石けんを作って販売する予定だ。井戸水が生活用水として使われているプレイキション村では、合成洗剤が使われている。このまま合成洗剤を使い続けると、下水処理がうまくできない村では、環境にも影響がでる。そこで、植物由来の廃油を使い、環境も守り、地球にも優しい、微生物が処理できる「はちどりの石けん」作りを開始したというわけだ。
カンボジアの観光地で石けんの販売を考えていた矢先、コロナの影響で観光客が激減し、販売が厳しくなった。そこで、日本で石けんを販売するためショップを作ることにしたが、課題もあり、道半ばだ。しかし、宮手さんは諦めていない。
「使う側の責任、作る責任として届ける最後に誰が使っても大丈夫な商品を届けること。突き詰めると生きていけないし、完璧にすることはできない。自分が今できること、できる範囲で変えていくと世界は変わると思います」
「微力だけど、無力じゃない」