「生まれたときからビッグベビーで、ずっと太っている人生でした」
そう語る安藤里枝さんは、体調を崩したことをきっかけにダイエットに挑戦。1年で30キロ痩せた経験を生かし、健康アドバイザーとして自分と同じように悩みを抱えた人のサポートをしている。
いじめられた経験や原因不明の体調不良から、痩せて人生がどのように変わったのか、安藤さんの人生を取材した。
太りすぎてスーツが着られない
3,800gで生まれ、幼い頃は小児肥満外来に通っていた安藤さん。体が大きすぎて小学校に入った時は、黄色い帽子がかぶれないほどだった。太っていることを理由に学校でいじめを受け、暴力をふるわれたこともある。
「けがをして家に帰っても、親に『あんたが太っているから悪いんだ。こんなに太って恥ずかしい』と言われていました。だから、自分でも『太っている私が悪いんだ』と思っていましたね」
服は7Lサイズにまでなっていた。太っていることがコンプレックスだった安藤さんは「太りすぎてリクルートスーツが着られない」という理由で、就職活動をどうしようか悩んでいた。履歴書に貼る自分の写真も見たくないほどだったという。
そんな時、一人旅で行ったインドでたまたま知り合った現地の人から「旅行会社を立ち上げるから手伝ってほしい」と声をかけられた。
「スーツも着られないし、私は他の子と同じように就活できないと思っていたので、この話に乗ったんです。インドに住むことは親に反対されたため旅行会社の仕事は日本から遠隔で行い、フリーの通訳・添乗員と掛け持ちで働きました」
激務と乱れた食生活で体に異変が
添乗員の仕事は、バス移動ばかりで体を動かさない。一人で3台のバスを面倒見なければいけない時もあり、神経を使った。安藤さんは、ストレスで食べてさらに太るという悪循環に陥っていた。
それから子どもが生まれたことをきっかけに、添乗業務につくことは難しくなり、インドの旅行会社の仕事を日本で行うことに専念した。しかし、インドの旅行はトラブルが多く、安藤さんはクレーム対応に追われた。
「いつも夜中の2〜3時まで仕事をしていました。ひどいときは朝まで。子どもを送り出した帰りにハンバーガーを食べて、一旦仮眠してまた仕事をして、合間にカップラーメンを食べて……。そんな生活をしていましたね」
不規則な生活がたたったのか、安藤さんは次々と体調不良に見舞われるようになっていった。
「蕁麻疹が出て、メガネが当たるところすらかゆくて。その後に帯状疱疹にもなり、頭に殴られたような激痛が走りました」
他にも体のあちこちが痛んだり、不調が出たりしたが、結局原因はよくわからなかった。さすがにこのままではまずいと感じ、健康診断へ。そこで「糖尿病になっていないのが不思議なくらい。5年後に今の生活ができているか、わかりませんよ」と言われた。
「先生には『痩せなさい』と言われました。私は痩せたら健康になるってことが信じられなくて『30キロ痩せたら変われますか』と聞いたら、鼻で笑われたんです。怒りと悔しさで、その日にダイエットサロンに電話しました」
安藤さんは地域のフリーペーパーに載っていたのを、切り取って財布に入れていた。それまでは連絡する勇気が出なかったが、医師の言葉でやっと行動できたのだ。
30キロの減量に成功し、健康アドバイザーに
その時39歳、体重は90キロ以上。安藤さんに適した食事を指導してもらい、1年で30キロ痩せることに成功した。再度行った健康診断ではオールA。「痩せなさい」と言った医師すら、最初は安藤さんと気付かないほどだった。
「運動はしていません。というか太りすぎてできなかったんです。落ちたペンすら拾えないほどだったので。そんな私が食事を変えるだけで痩せられて、どんどん健康になっていったんです」
旅行業界で働き、ちょうど20年が経った頃だった。働き方にも限界を感じ、自身が痩せた経験を生かし、健康アドバイザーに転身した。
「痩せて健康になり、新しい人生をもらったような気分です。さらに、学んだ知識で自分が痩せられただけではなく、家族も健康になりました。細すぎた旦那は増量して、低体温だった娘は体温が上がりました。うつだった私の母親まで元気になって、これはすごいなと」
自分だけではなく、周りの人も健康になって幸せになれる。安藤さんは今の仕事を「天職」だと語る。
「人を幸せにして喜ばれる。目の前の人の人生が変わっていくところを見られるのが、本当に幸せです」