きっかけは「職場体験」 江戸時代創業の和菓子店を21歳で継いだ職人の挑戦

きっかけは「職場体験」 江戸時代創業の和菓子店を21歳で継いだ職人の挑戦
俵屋6代目の友田瑞穂さん(右)とパティシエの川島智紗さん(左)

東京都武蔵野市の吉祥寺駅から井の頭公園へ向かう井の頭通り沿いに、1855年創業の和菓子の老舗 御菓子処俵屋(以下、俵屋)がある。ショーケースには和菓子職人によるおはぎや俵屋最中などが並び、季節限定の苺大福や練りきりも人気だ。代々受け継がれてきた甘納豆は10日以上かけて丁寧に作られる。この老舗を21歳の若さで受け継いだのが、6代目を担う友田瑞穂さん(28)だ。

「吉祥寺周辺では、和菓子屋さんが少なくなってきています。俵屋で和菓子の魅力を伝えながら地域活性ができたらと思っています」

そう話す友田さん。18歳で俵屋に入り21歳で6代目の経営者となって、伝統の味を守り続けて10年の月日が経った。この節目の年に新たな挑戦としてパティシエを迎え、クッキー缶プロジェクトを2人でスタートした。目まぐるしく世間が変化する中で、伝統を守りながら新しい物を取り入れたいと話す2人に話を聞いた。

職場体験先の後継ぎに

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友田さんは中学卒業後、立川市にある国際製菓専門学校の高等課程で3年間製菓について学んだ。当時はパティシエになりたいと思っていたというが、17歳の時に訪れた京都で大きな変化があった。

「京都に行って和の文化ってとても魅力的だなと感じました。その時、漠然としていた自分のやりたかったことのイメージに和菓子というものがカチッとはまった気がしたんです」

翌年、学校の紹介で職場体験として俵屋を訪れる。

「職場体験で俵屋で働かせてもらっていた時に、先代から後継ぎがいないからもうすぐ店を閉じてしまうという話を聞きました」

伝統ある和菓子屋が無くなってしまうのはもったいないーそう思っている時、先代から「うちで修行を積んで俵屋を継いでもらえないか」と打診されたという。3年間の修行を積み、友田さんは21歳で和菓子職人と経営者になった。

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「家業として営んでいた伝統ある和菓子屋を自分が継ぐというプレッシャーはありました。何十年も通われているお客さまは私より俵屋の味を知っているので、変わらない味を守り続けようとここまでやってきました」

パティシエと作るクッキー缶プロジェクト

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「吉祥寺は幅広い世代から愛されている土地柄、新しい物を柔軟に受け入れてくれるという確信がありました。その中で、和菓子の要素を取り入れた洋菓子を作れたら地域の人に喜んでいただけるのではないかと数年前から考えていました」

その時に声をかけたのが、同じ専門学校に通い、その後パティシエとして働いていた川島智紗さんだ。都内のパティスリーで10年間の修行を積み、2021年9月に俵屋へやってきた。

「去年から、2人で手土産として喜んでいただけるクッキー缶を作ろうと話していました。ただ、オーブンなどの調理器具やクッキー缶で使う缶の印刷費など初期費用が必要でした。そこで、資金調達のためにクラウドファンディングに挑戦したんです」

手探りのなか始めたクラウドファンディングは大きな反響があり、目標金額を大きく超える結果になった。

クッキー缶に描かれた絵本の表紙のようなデザインは、友田さんが手がけたという。近くにある井の頭公園内の動物園にいるリスをモチーフに、和菓子店ならではのテイストも盛り込んだ。

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「クッキーの製造に関しては、川島が全面的に行っています。ベースは洋菓子ですが、和菓子で使用している和三盆や抹茶を使っています。また、クッキー缶の中に入っている米粉クッキーはお餅に使用している上新粉を使用しているので、口の中に入れた時にホロっと口の中でほどける食感を楽しんでいただけると思います」

伝統は守りながら、柔軟に変化していきたい

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店頭販売で地域の人からも好評を得ているクッキー缶は、全国にむけ5月6日からインターネット販売もスタート。クラウドファンディングの支援で導入したオーブンを使い、俵屋の甘納豆と一緒に焼き上げたパウンドケーキも発売されるほか、今後は井の頭動物園にいたゾウのはな子をモチーフにしたクッキーなども作る予定だ。

「地域の人に喜んでいただける和菓子屋を今後も営んでいくのはもちろんですが、ネットを通じて吉祥寺・井の頭という地域の魅力も伝えていきたいなと思っています。伝統ある和菓子の魅力は残しつつ、洋菓子の要素を取り入れた新しい形を模索していきたいです」

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