2022年3月に6周年を迎えた「みらい塾エイトステップス」。塾を率いるのは、やんちゃ盛りの3兄弟を育てている中村希さんだ。「2031年までに日本から勉強嫌いな子をなくす」という熱い思いとミッションを胸に、日々生徒たちと全力で向き合っている。
現在は20人の講師を抱えるエイトステップス。小学生や中学生を中心とした70人超の生徒に対して、個々の能力に合わせた指導をしている。子どもたちの無限の可能性を信じる中村さんに、塾で実践している“志教育”について話を聞いた。
現状を変えたときに明確になったミッション
もともと、「頑張る人を応援したい」という気持ちが強かった中村さん。自分が得意とすることを活かしながら、子育てと両立できることは何かと考え、自宅で個別指導の塾を始めた。生徒たちの成長に対する喜びと教える楽しさを覚えつつも、現状の自分が誇れず、もやもやする日々を送っていたという。
現状を変えるため、2021年に密かに目標としていた本の出版を実現させ、さらに外部の研修を受けながら心理学を学んだ。研修を通して自己概念が高まった彼女に降ってきたのが、「10年後までに日本から勉強嫌いな子をなくす」というミッション。そのためにまずは自分の塾でそのミッションを達成させ、それを日本中に広めていきたいと語る。
“理想の世界”を自ら実現するための志教育
中村さんが塾を運営するうえで特に大切にしているのが「志教育」。高い志を持って、努力を重ねれば「どんなこともできる」「何だってなれる」。そんなメッセージを伝えながら、生徒たちの頑張りをサポートしている。
年3回実施する個別面談は、生徒たち自身の“理想の世界”を明らかにするところから始める。将来何をしたいのか、どうなりたいのか、どんなことが好きか。そのうえで勉強の目標と現状についてヒアリングし、今やるべきことをクリアにしていく。
「『やらなきゃいけない』という強制の中で勉強をさせるのではなくて、『こんな人になりたい』という像を描き、『なりたい自分になるために勉強をがんばろう!』と生徒たち自身が気づいて行動に移していくのが理想であり、もっとも効果的なんです。そして、彼ら自身が決めた目標や計画に対して、『絶対に実現できるよ』 と常にサポートするスタンスでいることを一番大切にしています」
「テストの点数を上げることや受験に合格することも、もちろん大切」と前置きをしつつ、中村さんが語ったのは目標設定と成功体験の積み重ねの大切さ。
「目標達成とは何たるかということを学びながら、テストの点数アップや合格をゲットしていってほしいなと。その成功体験の積み重ねがその後の人生に活きてくると思うんです」
中村さんによると、勉強に対して苦手意識がある子も、達成感や成功体験の積み重ねによって自己肯定感が上がり、徐々に勉強への意識が変わってくるという。
「当然、目標達成のためには相応の時間と努力(勉強量)は必要です。でも、絶対できます。これは大人も子どもも同じ。どんな人生にしたいのか常に考えて、それに向かって挑戦し続ければ、理想は実現できるんです」
志を明確にしたうえで、あらゆる能力を伸ばしていく
中村さんが教えるのは、思考力・判断力・表現力を伸ばしながら知識や技能を習得する勉強法。例えば数学では、ただ問題を解くのではなく、その問題のポイントは何だったのかを自分でまとめる。それをやるだけで“具体と抽象の行き来”ができるようになり、思考力が深まるという。
塾では思考力を伸ばすのに有効な“パズル算数”という外部教材のほか、中村さんが講師とともに開発した読解力や表現力を伸ばす“ロジカル国語”というオリジナル教材を使用。さまざまな能力を伸ばしながら勉強ができるプログラムを充実させている。
「知識や技能の習得だけでなく、これらの能力や人間性を伸ばせるノウハウをこの1年で確立し、公教育にも普及させたいですね」
公教育にも志教育を
「本来、勉強は楽しいものであり、自分の可能性を広げるもの。しかし実際には、勉強は苦行、我慢してやるものと捉えている人があまりにも多い」と中村さん。子どもたちだけではない、大人たちにもその考えが見え隠れしているという。
「今後は子どもの意識改革だけでなく、彼らを取り巻く大人の意識改革もしていきたいですね」そのために、塾へ通う生徒の保護者やその知り合いを対象としたセミナーを実施しているほか、自らの発信力の向上にも努めている。
現在は、超党派の国会議員と民間の有識者でつくる「教育立国推進協議会」のメンバーとして、国に対する働きかけや提言も行っている中村さん。塾経営を通して見えてきた今の日本の教育における課題と、それを解決するための施策として志教育の重要性を訴えながら、公教育の改革にも意欲的に取り組んでいる。