国民的人気キャラクターのドラえもんを、さまざまなアーティストが表現した展覧会が、岡山市で開かれています。地元・岡山県出身の書家、中塚翠涛(すいとう)さんも参加しています。
あなたのドラえもんをつくってください。
4月2日から、岡山県立美術館で開催されている「THE ドラえもん展 OKAYAMA 2022」。国内外で活躍する28組のアーティストが、「あなたのドラえもんを作ってください。」という要望をもとに、さまざまな発想や技法で、それぞれのドラえもんを表現しています。
このうち、岡山県出身の書家、中塚翠涛(すいとう)さんは、六曲屏風を使った「光と影」という作品を出品しています。中塚さんが最初に映画館で見たドラえもんシリーズだという、映画「ドラえもん のび太の日本誕生」を基に、ドラえもんとのび太が7万年前の過去にタイムスリップしたシーンをイメージして制作されました。
「名だたる著名なアーティストの皆様の中で、お声がけ頂けたことをとても光栄に思います」
幼少期から大好きだったアニメからインスピレーションを受けて、作品を制作できることに大きな喜びを感じたと言います。
中塚さんオリジナルのドラえもんも
中塚さんの作品の細部をよく見てみると、儒教の中で大切とされている五徳(仁・義・礼・智・信)の文字が隠されています。およそ2500年前に日本に伝わってきた儒教の精神が、実は7万年前にドラえもんやのび太たちが示した行動によって生まれているのではないかと想像し、それが作中に表現されているのです。
「ドラえもんやのび太が映画の中で起こしていた行動、仲間への思いやりだったり、信頼だったりが、儒教の精神の種を植え付けてきたのではないかなと」
また、この作品が描かれているのは、右から左に物語が流れるのが一般的な六曲屏風です。その特徴を生かし、向かって右手前から作品を見ると、「光」と描かれた明るい未来が見え、向かって左手前から過去を見ると、「影」が見える作りになっています。正面からだけではなく、斜めから作品が楽しめるのもこの作品の特徴です。
「光もあれば影もあって。影が決して暗いわけではないんですけど、明るい未来に向けて日々努力を続けることで、楽しい日々を過ごせると思うので、背景は、“楽”という文字をモチーフに表現しています」
「楽」という字とドラえもんを組み合わせて作られた、中塚さん考案の新キャラクター「楽えもん」をはじめ、随所にキャラクターが散りばめられており、それを探すのも楽しみ方の1つです。
自分なりのストーリーをイメージして
2017年の東京を皮切りに、大阪や札幌、京都などで出展し、迎えた岡山での展覧会。
「幼少期を過ごした岡山の地で、皆さんに(作品を)ご覧いただける機会ができたということは、とても嬉しいなと思っています」
訪れる人には、想像力を膨らませ、独自のアニメーションを頭の中で作って楽しんでほしいと、中塚さんは話します。それは中塚さんが、映画を見て、独自の解釈で作品を表現したように、この作品を見た人にも自由に作品を感じ取ってもらいたいという思いからです。
「ストーリーを押し付けるのではなく、皆さんそれぞれの楽しみ方をしていただきたいなと思っています」
他のアーティストも、新たに生み出したドラえもんのストーリーを反映していたり、写真や映像、プロジェクションマッピングなどを駆使してドラえもんを表現していたりと、展覧会で出会えるのは、まさに一人一人の心の中にあるドラえもん。その作品を見て、訪れた人たちが自分にとってのドラえもんを考えることができるのも、楽しみの1つかもしれません。
「THE ドラえもん展 OKAYAMA 2022」は5月22日まで、岡山県立美術館で開かれています。