なぜ出演者が何でも喋る? 「街録ch」ディレクターに聞く制作ポリシー

なぜ出演者が何でも喋る? 「街録ch」ディレクターに聞く制作ポリシー
YouTubeチャンネル「街録ch」のディレクター・三谷三四郎さん

「へぇ」「なるほどね」
少し口をすぼませて脱力した相槌が特徴的な、人気YouTubeチャンネル『街録ch~あなたの人生、教えてください〜』(以下、街録ch)のディレクター・三谷三四郎さん。
インタビュアー兼カメラマンの三谷さんと出演者のやりとりは、近くもない、遠くもない。その絶妙な距離感で街頭録画される動画が今、話題を集めています。

「楽しく喋ってもらうと、どんどん面白い話をしてくれる。それが、観ている人にも面白いんじゃないですかね」
ついつい喋り過ぎちゃう人が続出中の、“根掘り葉掘り”の語らせ屋・三谷さんに話を聞きました。

出演者ありきの姿勢を貫く

人気テレビ番組『笑っていいとも!』のADなどを経て、フリーランスのディレクターになった三谷さん。フリーになってからも、テレビ局でさまざまな番組づくりに携わってきました。

2020年3月にスタートした街録chは、2022年3月末時点で登録者数64.6万人。年内に100万人を目指しているといいます。

街録chの動画の主人公たちは、自身の生い立ちや経歴の仄暗さについて、ためらいもなく話をしています。インタビュアーの三谷さんに向かって、そしてカメラの向こうの視聴者に向かって。

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赤裸々に語られる人生のエピソード や、「わざと薄暗くしている」という不穏な雰囲気の動画サムネイルと、(不倫、覚醒剤、逮捕、刑務所、ホームレスなどの)三谷さんいわく「強いテロップ」が、ときに物議を醸している街録chですが、意外にもチャンネルの色を押し通すということはしません。

「動画公開後、『やっぱり動画の一部を消して欲しい』とか、『動画を非公開にして欲しい』ということは、よくあります。そういうのは全部、対応します。本人が嫌なのに、そんなの公開してもいいことないじゃないですか。本人があの部分がイヤだ、消してと言ったら消しますよ」

「(街録chは)報道とかニュースとかじゃないんで」ということをポリシーにしており、出演者ありきの姿勢を貫いているのだそう。

「(喋った本人が)動画を消して欲しいっていうのは、インタビュー中に、語弊を招く言い方をしたことにあとになって気づいたか、自分の語った内容がまわりの人を傷つけちゃうからか、そのどっちかじゃないですか。それをそのままにすることに意味はないと思うんですよね」

三谷さんは聞き出し上手。だから、つい喋り過ぎてしまうこともある。とっさに適切な言葉を選べないこともあるのが”当たり前”。

「本人がイヤだという部分を消しても(番組にとって)悪にならない」という三谷さんの言葉が印象的でした。

火種になりそうなものはすぐに消す

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過去、母親との確執について語った出演者がいたそうです。動画の公開後、出演者の母親が「動画を消して欲しい」と三谷さんに連絡をしてきたことがあったとか。

出演者以外の人から抗議・削除要請があった場合は、まず本人確認を取り、その上で判断するとのこと。誰かが不幸になることを望まない三谷さんは、迅速に対応します。

「(出演者の母親から連絡が来たのが)朝4時でしたけど、朝10時にはほんとうにその人の母親だって確認が取れたので、すぐに対応しました」とのこと。

「後回しにしちゃって、たとえば動画で傷ついた人が自殺しちゃったりしたらおしまいじゃないですか。何事も大火事になる前に、火種は消しておきます」

出演者ともめないこと、出演者とその周辺に悲劇が起こらないことを大切にしています。

人には大なり小なり悩みがある

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今まで述べ300人以上の話を聞いてきて、今も週に2回、街角で取材&撮影を続けている三谷さんに、リアルタイムな悩みの傾向について尋ねると……

「悩みに傾向なんかないですね。それぞれ違います。テレビとかではよく、『生きづらい女性が増えています』とかいうじゃないですか。どこのなんのデータと比べてるんだよ、と思います。ちゃんと調べたらきっと、昔も今も変わらないんですよ。(生きづらい人、悩める人は昔から)一定数いる。昔は発信する場所がなかっただけで」

今の時代は、自分の人生、生き様について発信できるSNSや街録chのような媒体があるというだけで、生きづらい人は昔からいた、という三谷さん。ひとりのインタビューに使う時間は、一時間程度だといいます。

「その人だけに特化した時間なんですから、一時間も喋れば充分ですよ。なかなかな量ですよ」

大人になると機会が得られない「自分に特化した時間」。自分を広めたい、知って欲しい、有名になりたいという出演者もいるなか、「ただ話を聞いてもらいたい、目的はないけど出てみたいという方」の参加も多いといいます。

「不思議ですよね」と言う三谷さんに、そしてその向こうの視聴者に”自分の話を聞いて欲しい”という立候補は尽きません。

人助けのエンタメ化へ

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三谷さんは、自身が獲得した知名度と人気を視聴者やファン、出演者たちに還元していく活動を始めています。それは三谷さんいわく、「人助けのエンタメ化」がテーマのオンラインサロンです。

出演者が望むクラウドファンディングの協力、三谷さんと一緒にダイエット、地方遠征中の飲み会、YouTubeの運営の仕方の共有など、その内容は”肩の力を抜いた楽しい人助け”といえそうです。

『僕は現実的な人間なので自分の健康を害してまで人助けができるほど、できた人間ではないです。けど、自分にも得になってかつ人の役に立って感謝されることなら無理なくできますし、何より楽しいです!』

この世に話をしたい人がいる限り、「今、6~7時間は眠れている」という艶肌の三谷さんの街頭録音『街録ch』は続きます。

「あなたの人生、教えてください」

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