人生100年時代と言われている。
千葉県在住の内田安弘さんは現在80歳。2012〜2019年までの間に、100kmトレイルを計4回、ハーフマラソン7回、フルマラソン5回、富士山登頂2回と、70歳で仕事を終えたあとも、挑戦を続けている。
「人生を最後まで楽しく生きる!」ことを目標にしているという内田さんに、挑戦する意欲は何なのかを聞いてみた。
70歳までサラリーマン人生
大学を卒業して40年間勤めた会社を60歳で引退。サラリーマン時代は、自分を見つめる余裕がなく、「自分は、何がやりたいか? 何ができるのか?」明確に決まっていなかった。一度会社をやめたとき、初めて自分と向き合ったという。
守られていた会社員時代とは違い、全く新しい世界に飛び込むことは不安だった。しかし、過去の経歴、役職にこだわっていてもなんの役にも立たないと、過去の自分と決別した。
新たな人との出会い、新しい経験をするためのステップアップ期間として、自立し挑戦することを決意。
「まったく新しい世界に飛び込みチャレンジして、自分を変えたい」
全く新しい業種の仕事を70歳まで続けた。
人生の転機となった息子の言葉
65歳を過ぎたある日のこと。息子と仲は良かったものの、深い話をしたことがなかったという内田さん。息子に言われた言葉に返事ができなかったという。
「親父、今まで聞いてこなかったけど、会社はどうだった? 親父は会社に何を残してきたの?」
この言葉にショックを受けた。なぜなら、家族のために、会社のために働いてきたけれど、自分の過去をふり返った時に、息子に誇れるようなことがなかったからだ。
「何も残せないまま人生を終わらせたくない」そんな思いがよぎった。息子からの言葉が転機となり、定年間近の68歳で、友人の誘いで会社以外の交流会に参加。ここでの新たな出会いが、さらに内田さんの挑戦を加速させた。
新しい出会い そして挑戦
70歳で会社を引退した内田さん。会社以外で交流し始めたことで、充実した生活を送っていたある日のこと、初めて皇居ランニングに誘われた。
それまでやってきた運動と言えば、ゴルフとスキーをやるくらい。初めての皇居ランニングは「友人たちに励まされながらなんとか1周したが、バテバテだった」という。
走ることに慣れたときのこと、仲間のひとりに「48時間100kmトレイルに参加しませんか?」と声をかけられた。負けん気の性格だった内田さん、軽い気持ちで「参加する」と言ったのだ。
「今までまともに運動してこなかった自分の挑戦でもある」と、まずは基礎体力作りから始め、1年かけてトレーニングに励んだ。
そして1年後、72歳で100kmトレイルに挑戦。24時間雨の中を歩き続け「まだ歩きたい」と思ったが、低体温のリスクを考え、80km地点でリタイアした。
翌年、昨年の悔しい思いを胸にリベンジ。このトレイルは、4人1組のチーム戦のため、一人でも完歩しないと失格になってしまう。
「仲間に迷惑かけたくない。完歩したい。自分との約束を果たしたい」
気持ちに焦りもあったが、アドレナリンが出ていた。つらさよりゴールしたい気持ちで100kmトレイルを完歩したのだ。「限界を越えた挑戦は、言葉にならない感激と、高揚感でいっぱいだった」と嬉しそうに語ってくれた。
2012〜2019年までの間に、100kmトレイルを計4回、ハーフマラソン7回、フルマラソン5回、富士山登頂2回と毎年のようにチャレンジしてきた内田さん。「80歳になった今でも挑戦しているよ」と嬉しそうに答えてくれた。
心を裸にして、自分らしく楽しく生きる
体験を通して仲間ができた内田さんは、次のように話す。
「環境の変化は仲間の存在で違ってくる」
「会社以外で知り合った仲間は、キャリアも、経験も、どこに勤めているもわからなく、名前しか知らない」
「夢の中にいるんじゃないかと錯覚することがある。それでも今が幸せで、仲間と挑戦することを楽しんでいるよ」
「世代や環境ではなく、本当の友人は根底で繋がっていると感じる」
内田さんは、【人生最後に何をするか?】【最後にどんな人と一緒にいたいか?】を忘れず、楽しんで挑戦し続けている。