「アルテミス北海道でVリーグに参戦したいです」
そう語るのは、女子バレーボールチーム「アルテミス北海道」の奥山優奈(ゆうな)選手です。
道内女子バレーの名門である「旭川実業」から、Vリーグ屈指の強豪チーム「NECレッドロケッツ」で活躍し、2度の優勝を経験した選手で、試合中でも常に笑顔を絶やさない姿で人気を集めています。
そんな、笑顔の女神が描く未来について話を聞きました。
セッターに転向、そしてプロの世界へ
奥山選手とバレーの出会いは小学校1年生でした。長年バレーをしていた母のママさんバレーについていったのをきっかけに、小中高とバレーボールの楽しさにのめり込んでいきます。
旭川実業高校では、170cmという身長を活かしてアタッカーとして活躍してきた奥山選手。ですが、最後の大会が迫っている中、監督に「セッターをやってみないか」と言われて急遽セッターへポジションを変更されました。
監督は選手に本来とは違うポジションを体験させ、適性を見て元のポジションに戻すかどうかを判断することを積極的に行っていました。「どうせ1週間で戻されるよ」と周囲からは言われたものの「楽しみ!」と奥山さんはワクワクの方が勝ったそう。
そしてポジションを変更してから、そのままアタッカーへ最後まで戻されることなく、セッターとして活躍しました。
「アタッカーで170cmは学生なら通用する高さなんですけど、プロのアタッカーとしては低いんです。これからのキャリアを考えた時にアタッカー以外の道もあるんじゃないかなと考えてくれたんだと思います」と、当時を振り返ります。
それが功を奏したのか、アタッカーとしてではなく、数か月しか経験がないセッターとして名門、NECレッドロケッツからスカウトを受け、プロの世界へ足を踏み入れました。
ケガを乗り越え、強豪チームで活躍
名門校から強豪プロチームへ。バレーボール選手として順調にキャリアを積み上げていくかと思われましたが、1年目からケガに見舞われてしまいます。ですが、そのときも1つの経験として前向きに捉えることができたと言います。
「学生時代は多少ケガをしていても無理をして試合に出ていましたが(良いことではありませんが(笑))、NECに入団してからは、無理をせず自分の体と向き合うのもプロの仕事だと感じましたし、意識の持ち方はすごく勉強になりました。ケガは辛かったですけど、得られた経験は大きかったです」と笑顔で語りました。
その後、2015年10月にVリーグデビューを果たし、常に笑顔を絶やさないチームのムードメーカーとしてNECレッドロケッツを支え、セッターとして出場試合数を増やした2016年に、チーム優勝の原動力として活躍しました。
NECレッドロケッツから、アルテミス北海道へ
その後、合計6年間チームのムードメーカーとして活躍しましたが、24歳という若さで現役を引退。サブマネージャーへ転身し、そちらでもチームにとって欠かせない存在となっていきました。
その働きぶりに高い評価を受けていましたが、アルテミス北海道が発足したのをきっかけに現役選手へ復帰。バレーボール選手として、新たなスタートを切りました。
「NECさんには本当に感謝しています。キャリアを考えればそのまま在籍した方が良いとも考えました。ですが現役選手として、そして、生まれ育った北海道でバレーボールができると考えるとワクワクしたし、チャレンジしたい!と思ったんです!」
Vリーグ参戦&北海道のレベルを底上げしたい
現役復帰後は選手活動と並行して、各自治体を訪問し、スポーツの力で北海道を盛り上げる活動を行ったり、チームの広報としてアルテミス北海道の知名度向上に貢献したりしています。
アルテミス北海道は、大学生などを含む若手選手が中心のチームですが、Vリーグに参戦しているチームと対戦した時にはチームの武器である守備力と粘り強さを発揮するなど、着実に力をつけ、手ごたえを感じられるようになってきました。
そんな奥山選手の次なる目標は、大会で成績を残して2023年度のVリーグ参戦。そして、バレーボール教室などの地域復興に貢献できるイベントを通じて、生まれ育った北海道のバレーをレベルアップすることです。
コロナ禍により練習会場の確保、大会の減少など課題は山積みですが、「これからどうなるんだろうという不安よりも、これからどうすれば目標を達成できるだろうかと考えています。チームの未来を考えると、楽しみだなという思いの方が強いですね」と奥山選手は目を輝かせます。
北海道バレー界の未来を賭けた戦いは、まだ始まったばかりです。