変化するランドセル事情 老舗鞄メーカーデザイナーが語るこだわりの「色」

変化するランドセル事情 老舗鞄メーカーデザイナーが語るこだわりの「色」
土屋鞄製造所でランドセルデザイナーとして働く東千鶴さん。

新学期が始まり、6年間を共に過ごすランドセルを背負い子どもたちが登校する風景が見られる。近年、子どもたちのランドセル事情は年々変化している。ランドセルを選び、購入する「ラン活」は入学する1年以上前から始まることから、すでに次年度の販売が開始されているというから驚きだ。
1965年にランドセル作りから始まった老舗鞄メーカーの土屋鞄製造所(以下、土屋鞄)も、2023年入学用ランドセルの販売をスタートしている。革製品ブランドの土屋鞄でしか作れない、日常に溶け込むような落ち着いた色味のランドセルにはファンも多い。

2023
2023

今回は、土屋鞄のランドセルデザイナーとして働く東千鶴さんに、子どもたちに寄り添うランドセルの色開発やデザインについて聞いた。

土屋鞄こだわりの色

東さんは、多摩美術大学の美術学部を卒業後、“人の手に渡るものに携わる仕事がしたい”と、2021年4月に土屋鞄に入社した。
東さんが関わるランドセルの色開発は、膨大なサンプルを一つ一つ見ながら行うという。

RECO
RECO

「自由な色選びの一歩として子どもが選びやすい色味はもちろん、6年間持っていても飽きないか心配する親御さんもいるのでその点も踏まえ、色にはこだわっています。革チップをランドセルに当て想像しながら、愛着をもってもらえる色作りに試行錯誤する日々です。何度も色出しを重ね、1年生の時も6年生の時も似合う色味を決めているので自分の“好き”にぴったりな色が見つかると思います」

最近では、今までのランドセルカラーの固定概念にとらわれない自由な色選びに理解を示す親が増えている。

「将来的には、もっと鮮やかな色のランドセルも作ってみたいですね。例えばピンクであれば、可愛らしい華やかな色味が多いですが、戦隊モノで使われるようなかっこいいピンクを使ったランドセルがあっても素敵だと思います」

親子で持てるアイテムで日々の思い出に彩りを 

“子どもの感性を育みたい”という思いから生まれた「アトリエ」シリーズ。毎年違うアーティストとコラボレーションしているランドセルだ。今回は、自然をモチーフにしたテキスタイルを展開する人気ブランド、「ミナ ペルホネン」のデザインを取り入れたランドセルを発売し、東さんもそのデザインに携わった。

アトリエシリーズ
アトリエシリーズ

「初めてミナ ペルホネンから特別に書き下ろされたデザインが上がってきたときは、鮮やかな色と柄に目を奪われました。ランドセルのなかに組み込むと、鮮やかながら落ち着いた上品な印象になり、ここまで計算されたデザインにびっくりしましたね。アトリエシリーズは販売のギリギリまで制作していたのですが、とても良いものができたと思います」

また、ランドセルと併せて大人向けアイテムも販売。毎年5万人以上が訪れるという出張店舗での展示を行う。心も体も大きく成長する小学生の6年間の思い出をお揃いアイテムで彩れたらと東さんは話す。

親子向けアイテム
親子向けアイテム

「ミナ ペルホネンは大人にも人気があるので、柄を用いた土屋鞄オリジナルの親子で持てるアイテムを今回初めて制作しました。革で出す色味を布製品に落とし込む作業が大変でしたが、色味にはこだわりを持っているので、修正を重ね納得のいくものを作り上げました。親子で一緒に持てるので、日々の生活に寄り添えるアイテムになったら良いなと思っています」

6年間好きでいてくれるランドセルを

ほかにも、性別の枠にとらわれない自由な色選びを後押しするシリーズ「RECO」が2022年から発売され、人気を集めている。今までランドセルを男女分けることなく販売してきた土屋鞄だからこそできる色展開だ。

ランドセル
ランドセル

土屋鞄にしかない色のランドセルを求め、連日店舗には入学を控えた親子がやってくる。

「一生のうち一度しか買わないランドセルは土屋鞄にとって大事な製品です。子どもにとっても親にとっても思い入れのある物なので、6年分の思いを込めて色開発を行っています。色に関してもですが、デザインについては将来的に今の形にとらわれすぎなくても良いのかなと思っています。その時のニーズに合ったランドセルの形を開発していけたら良いですね。職人やスタッフが子どもたちの毎日に思いをはせて作ったランドセルをぜひ手にとってほしいと思います」

この記事の写真一覧はこちら