「若者が飲食店に希望を持てるようにしたいです」と穏やかな口調でありながら、情熱を感じさせる言葉を紡ぐのは「しゃば蔵」店主、河合裕人さん。人気だった飲食店から、未経験のスープカレー屋に転身。オープンして2年半ほどで北海道でも屈指の人気店になりました。そんな河合さんの半生に迫ります。
大学卒業後、父の跡継ぎとして飲食業界へ
大学を卒業後は一般企業に就職した河合さん。ですが、ほどなくして飲食店を経営していた父の体調が悪化。26歳で飲食店を継ぎ、2店舗の経営に携わることに。そこで飲食店でのノウハウや、面白さ、楽しさを学んでいき、20年という長い年月を飲食店と共にします。
経営を引き継いでから、その手腕で「3年以内に7割が閉店する」と言われる飲食業界の中でも順調に経営。昼夜問わず客でにぎわいを見せていましたが、当時47歳だった河合さんの頭に「これから10年、20年を考えた時、このままでいいのだろうか」という思いがよぎります。
これから生き残るために、「なんでも食べられるお店よりも、1つに特化した専門店がいいのでは」と考えた河合さん。
そのとき、家族にふるまって好評だったスープカレーと、札幌の名物「ジンギスカン」から着想を得て、羊の骨を使ったスープカレーを考案しました。他店を食べ歩き、研究を重ねて2019年9月に「スープカレー しゃば蔵」をオープンしました。
より良い味とお客様のファーストを考え、試行錯誤の日々
満を持してオープンしましたが、当初は客もまばらで、なかなか軌道には乗らなかったといいます。
それでも「スープカレーは毎日食べる身近なものというより、ちょっと特別な日に食べる物だと思います。だからこそ、お客様により良いものを提供できるようにと試行錯誤しました」と、味を数日に1回のペースで改良。今までの改良の回数は200回を超えたそうです。
羊ならではの濃厚な味を表現したり、独特の臭みを無くしたりするなどの改良の他にも、土鍋で提供して温度を保ちつつ、冷めたら温め直せるようにするなど、客の目線に立ったサービスを展開。徐々に人気を集めて、人気店の仲間入りを果たしました。
「生き残っていくためにも、これからアップデートは妥協せずに続けていきます」と語気を強めます。
飲食業界に夢や希望を持てるようにしたい
河合さんへ今後の夢や展望を聞くと、2つの思いを話してくれました。
1つはしゃば蔵で展開している「スープカレー」「カレーラーメン」「スパイスカレー」のそれぞれを、独立した店として構えること。そして、もう1つは飲食業界に夢と希望を感じられるようにすることです。
「私は飲食業界で夢を持たせてもらったし、本来は夢がある世界だと思います。ですが最近は勤務体系や、待遇、大手飲食チェーンの問題で悪い印象が強いですし、コロナ禍もあって元気がありません。若者が夢と希望を持って飲食の世界に入ってこれるようにして行きたいです」
河合さんの挑戦は、まだまだ続きます。