岡山県内の中学校に勤務しながら、特定非営利活動法人 国際協力研究所・岡山(NPO ICOI)で活動する4人の先生に話を聞いた。ICOIは環境保全、国際協力、子どもの健全育成等に取り組む団体だ。
学校の先生は、日々の授業だけではなく、部活に、事務作業に、授業準備にと、とても忙しいというイメージを持つ人が多いのではないだろうか。今回取材した4人の先生は、ICOIの活動だけではなく、全員がJICA中国が主催する教師向け研修などにも、休日を費やして積極的に参加しているメンバーである。多忙に多忙を重ねる先生が、休日にNPOの中で、外で、活動を重ねるのは一体なぜだろうか。
世界の課題や自分たちの足元の暮らしの結びつきを知る
『主体的に考え、行動する人づくりがしたい』
そう語ってくれたのは竹島潤先生。英語と総合学習を専門とし、学生時代の留学先のアメリカでは、多文化共生社会を目の当たりにした。留学先に選んだのは先進国だったものの、研究していたアメリカ文学の中にマイノリティーの描写などがたくさん出てきて、途上国の人や文化にも興味を持ち、もう少し途上国を含め、いろいろな国のことを知りたいと強く思ったそうだ。
2011年にはJICA中国主催の教師海外研修に参加し、ネパールを訪問。JICA現地オフィスの職員やネパールの自治体の長から実情を学んだという。
「生徒たちだけではなく、まずは先生も世界の課題や自分たちの足元の暮らしの結びつきをきちんと知って、アクションをしないといけない! たえず一緒に学び続けて生徒たちに伴走したい」と熱い気持ちを語ってくれた。
また、同研修中にできた仲間とはその後もやりとりが続いているとのこと。事実、仲間の一人がその後、JICA 海外協力隊として、モザンビークに現職参加制度を利用して派遣されたことを知ると、他の研修仲間と一緒にモザンビークを訪問した。訪問中には研修仲間の隊員が原爆展を開催。原爆展に合わせておこなった日本祭りの手伝いをし、会場では得意の空手も披露した。まさに有言実行である。
自分にはない視点を発見できる
『生徒に還元したい』
「忙しい中、JICAの研修やICOIでの活動に参加するモチベーションや理由は何ですか?」と疑問をぶつけると、中川尚子先生は笑顔でこう語ってくれた。
中川先生は、竹島先生と同じ中学校勤務となったことがきっかけで知り合った。竹島先生の教科横断型の授業を一緒にして、概念が変わったそうだ。このことをきっかけに、JICA教師海外研修に応募し、ラオスを訪問した。
「ICOIでの活動もJICAの研修も中学校に限らず様々な校種の先生が集まる。自分にはない視点を発見でき、職場の外で相談できる機会になる。生徒に還元できるのが一番のモチベーションだ」という。
ほかのメンバーも大きくうなずく。ICOIは教員以外にもさまざまな職種のメンバーが所属している。学校の外の常識を知る場所でもあり、セカンドプレイスのような居心地の良さがあり、教員にない発想も時に得られるのだとか。
本物の言葉として、説得力をもって伝えたい
中川先生の話に最も大きく首をふったメンバーの江國友哉先生。なんと、学生時代、教育実習の時に竹島先生のクラスでお世話になったのだそう。その際に竹島先生の熱い思いにふれ、教師自身が学び続ける姿勢や社会を見るチカラの大切さを感じた。
教師となり、数年後の2017年、スリランカでのJICA教師海外研修に参加。初めての海外。いろいろな教科の先生や校種の先生と語らいながらの旅をふりかえる。そこで得た視点や考え方がその後の教師生活やICOIでの活動にも生きているという。
「いろいろな人、モノ、社会課題があることを知り、本物の言葉として、説得力をもって伝えたい。まずは自分から動く!」そう言って、目を輝かせた。
授業・教材のブラッシュアップに
学校では社会科を担当する阿部友彦先生。コロナ禍で教師海外研修に代わって実施された2021年度のJICA教師国内研修に参加し、中国地方の多文化共生に関わる施設や団体でさまざまな事例や取り組み、実情をインプットした。
特に、日本語交流クラブGOTO☆ワンハートの行っている「相互理解・交流をする場」づくりについて、感銘を受けたとのこと。
世界に確実な正解はない。生徒たちには、世界をみて、ちゃんと考えるくせをつけてほしいと語る。国内研修で得たことを、授業として組み立て、教材のブラッシュアップにとりくんでいる。その際もICOIや研修参加者とのつながりや高めあいが生きてくる。
1月29日に行われたJICA中国主催の国際教育研修会では、自身の考案した教材を発表する阿部先生の姿が。研修会の参加者の中にはICOIのメンバーもおり、積極的に情報収集や質問をする姿があった。
自分だけが経験するのではなく、その経験をお互いに共有し、次の経験に繋げていく。そんなふうにお互いに切磋琢磨し、生徒と向き合い続けるNPO ICOIの先生たちの挑戦はこれからも続く。